はてな・大西とSEO専門家・辻正浩が語る、企業ブログによる情報発信のこれから

はてなブログBusinessプロモーション記事第2弾記事のメインカット

個人ユーザーだけでなく、「はてなブログMedia」などを通して多くの法人の「言葉」も伝えてきたはてなブログ。このたび、新たな法人向けブログ利用プラン「はてなブログBusiness」をリリースしました(背景について詳しくはこちら)。

新プランのオプションには、ブログをサブディレクトリに設置できる機能も用意。長年、SEO専門家として活躍している辻正浩さんも設計に加わり実現したこの機能は、昨今のSEOの潮流を踏まえて非常に有効です。

『週刊はてなブログ』では本プランのリリースを記念し、「連続企画:コンテンツと企業 2020」を実施。今回から全5回に渡り、Webマーケティングのプロに企業ブログの現在について伺っていきます。

初回となる今回は、はてなブログの開発・運営を取り仕切る、はてな大西康裕(id:onishi)と、SEO専門家・辻正浩(id:t-w-o)さんの対談を敢行。昨今のコンテンツマーケティングの潮流から、企業が情報発信する上で必要なSEO、これからの企業の情報発信などについて聞きました。

企業ブログはサブディレクトリに配置することがSEOの鍵

── 昨今、企業がコンテンツマーケティングを行う上で、積極的な情報発信は無視できない状況にあるように思います。はてなでは「はてなブログMedia」などの法人向けブログ利用プランをいち早く提供してきました。

大西 もともとはてなブログは個人ユーザー向けにリリースしたサービスですが、コンテンツマーケティングが盛り上がりを見せたことを背景に、オウンドメディアの利用に特化した「はてなブログMedia」を開発し、2014年から提供を開始しました。プロダクトの購買促進であったり、採用目的であったり、現在も幅広くご利用いただいております。

株式会社はてな大西康裕の写真
大西康裕(おおにし・やすひろ):株式会社はてな 執行役員 サービス・システム開発本部長。2001年に創業メンバーの1人として有限会社はてな(当時)に入社。その後「はてなブログ」の立ち上げや事業化を指揮し、2014年8月より執行役員 サービス開発本部長を経て、2016年8月より現職。

 2014年当時は今ほどオウンドメディアなんて言葉も聞かれなかったように記憶していますが、ここ数年の広がりはすさまじいものがありますね。最近では大企業だけでなく、あらゆる企業がごく自然にコンテンツマーケティングに取り組んでいます。

── 辻さんはSEO専門家として日々メディアにおける集客のお手伝いをされているかと思います。昨今のオウンドメディアを巡る状況について、どのようにご覧になっていますか。

 今、企業がトラフィックを得るためには大きく4つの方法があります。「検索」、「広告」、「ソーシャル」、そして最近出てきたGoogle Discoverに代表される「レコメンド」ですね。

かつてオウンドメディアの主な目的は、ブランディングや顧客との関係づくりにあったと思います。しかし、最近はブランディングに加えて、「成果」も求められるようになっている。成果とはつまり多くの訪問者を獲得して、そこから顧客を増やすことです。そのため、まずは上記の方法を通じて、オウンドメディアに多くのトラフィックを集めることが重要になってきていると感じます。

株式会社JADE辻正浩の写真
辻正浩(つじ・まさひろ):株式会社JADE取締役。営業や広告制作を経験後、2007年より株式会社アイレップにてSEO専門家としての活動を開始。その後独立し、2013年より株式会社so.laでの活動を経て、2019年5月より現職。

大西 そうですね。そうした背景もあり、今回辻さんからお話をいただき、「はてなブログBusiness」ではオプションとして、ブログを企業サイトのサブディレクトリに設置できるようにしました。これはSEO的に高い効果が期待できると思うのですが、改めて辻さんから教えていただけますか。

 これには非常に大きなメリットがあります。まず昨今のSEO事情の変化を説明させてください。近年、インターネット上にフェイクニュースなどの誤った情報が流布されるようになり、Googleがその対策に乗り出していたことはご存じの方もいるかもしれません。

そのなかで、2016年ごろから検索順位を決める上で重視されるようになったのが「サイトの信頼性」。当初は医療や金融などセンシティブな情報を扱う分野中心でしたが、現在は非常に幅広い分野で、そのサイトは信頼できるかどうか、ということが厳しく問われています。

もちろん、このような変化は必ずしも良いことばかりではありません。ただ、悪質な情報発信を行う人が増え、実際に騙されてしまう人も増えていることを考えると仕方ないと思いますし、しばらく「信頼されるサイトが検索では有利」という流れは変わらないだろうとも思います。

── なるほど。では、「サイトの信頼性」を高めるために意識すべきことは何でしょうか?

 さまざまな要因がありますし、判定基準も進化を続けていますが、変わらないこととして「インターネット上で多く求められる存在かどうか」ということがあります。より多くの機会で、より多くの人に求められるサイトは、より検索結果でも露出しやすくなります。ここで気をつけたいのは、信頼性は人や企業ではなくサイトに紐づく、ということ。仮に同じサイトオーナーが複数のサイトを運営していても、それらは個別に評価されるということですね。

そこで重要になってくるのが、企業ブログをサブディレクトリに置くことです。そうすれば、企業サイトと企業ブログを別の場所で運営していた場合に分散していた評価が一つのサイトに集中することになるので、結果的に効率的に信頼性を高めることができるというわけです。

これまで企業サイトのサブディレクトリにブログを設置しようと思うと、自社での対応が必要なものが多く、なかなか採用が難しいケースもありました。今回、運用が簡単な外部サービスでサブディレクトリに置けるというのは非常に大きなポイントと言えるのではないでしょうか。

── ちなみに「別の場所」と仰ったように、企業ブログなどの情報発信の場をサブディレクトリではなく、サブドメインに配置しているという企業も多いと思います。この場合はSEOの観点からいかがですか?

 別ドメインにするよりは良いですが、Googleからは別サイト扱いとなって評価されづらいことが多いですね。例外もありますが、サブドメインで企業ブログをつくるのはもったいないと思います。極力、サブディレクトリに移動するべきでしょうし、実際に私がお手伝いしている企業さまにもそのようにしていただくことが多いです。

サブディレクトリとサブドメイン

既存のWebサイトをexample.comで運用しているとき、ブログ用にblog.example.comという別ドメインを用意するのがサブドメイン運用です。サブディレクトリ運用では、同じドメイン上にexample.com/blog/というパスを設定してブログを置きます。

サブディレクトリとサブドメイン

タイトルやディスクリプションの細かい設定が大きな差に

── SEOの観点から、サブディレクトリに情報発信の場を設置することの重要性が理解できました。その上で、さらにSEOするためには、どういったアクションが必要ですか?

 いかにGoogleに適切にコンテンツを認識してもらうかが重要です。まず大きなところで言うと、これまで蓄積してきたコンテンツをきちんと整理し、カテゴリ分けすることだと思います。

例えば、同じ企業の情報を発信するにしても、自社製品の開発秘話のようなコンテンツと、コロナ禍における出勤や対応について案内するコンテンツでは、趣旨が異なってきますよね。そこで、それぞれのコンテンツに適切なカテゴリを付与してあげると、人間向けの動線としても、検索エンジンが認識するサイト構造としても、しっかり分かりやすくなる。このように構造的に整理された形にメディア全体を設計していくことは、大きな視点として重要だと思います。

大西 ついついコンテンツができるとそのまますぐ公開してしまいがちですが、適切なカテゴリ付けを行うことが大事なんですね。

 はい。個別のコンテンツの話で言えば、やはりtitle要素を正しく設定することは、一番簡単にできて効果的なSEOです。検索結果に表示され、顧客候補に最初に見られる場所でもありますので、記事タイトルやソーシャルメディアで表示されるOGPとは、切り分けて考えることが重要だと思います。

ほかにも、重要な記事ではDescriptionもしっかり記入するなど、まずは顧客候補との最初の出会いの場所になる検索結果において十分に魅力を伝える、ということは重要な要件だと思います。

株式会社JADE辻正浩の写真2

大西 手前味噌ですが、辻さんに挙げていただいたtitle要素やDescriptionの設定は、意外と他のブログサービスではできないことが多い。「はてなブログBusiness」では他にヘッダの設定やファビコンの設定といったこともできるので是非活用いただきたいですね。

ネットコンテンツの潮流は変わった。企業の情報発信に求められること

── 今後のことを見据えると、Google Discoverなどレコメンドの持つ役割も非常に大きくなっていきそうです。何か対策はありますか?

 やはりページのテーマをGoogleにしっかりと認識させることが大切ですから、先ほど挙げたtitle要素やカテゴリの設定などは同じく重要です。

あとは基本的なことですが、情報を定期的に発信することが何より大事でしょう。一つ例を挙げると、あるホテルでは、それまで各レストランの店頭でしか出していなかった週替わりメニューを、毎週月曜11時に新規記事として掲載するようにしました。するとそのホテルでランチをするような人にGoogle Discoverが毎週メニューを届けてくれる状態になって、流入がものすごく増えたと。ここで大事なのはコンテンツを”定期的に発信する”ことです。

大西 定期的かつ継続的なコンテンツ発信は、やはり重要ですよね。そういった意味では、はてなブログにはブログメンバーという機能があり、寄稿者/編集者/管理者と権限を段階的に移譲することができます。

例えば、単発で記事執筆をお願いするときなど、ライターさんに寄稿者権限を付与すれば、そのまま執筆から入稿までお任せできます。「はてなブログMedia」のお客様にも便利に使っていただいていますよ。

 ちなみにはてなブックマークについては、4つの方法のうちソーシャルとレコメンドの中間あたりの位置付けだと思いますが、企業が情報発信する上でどのように捉えればいいのでしょう。

大西 はてなブックマークは、いわゆるソーシャルブックマークサービスの一つで、コンテンツを拡散流通させる役割を持っています。同じはてなのサービスなので「はてなブログBusiness」には最初から「はてなブックマーク」のボタンが付いているなど相性がよくなっていますし、はてなブックマークの獲得が他のTwitterなどのSNSでの波及効果を生むことも少なくない。

最近ではオウンドメディアの記事がトップに上がってくることもあるので、トラフィックを得るための経路として注目していただくのも良いかもしれませんね。

株式会社はてな大西康裕の写真2

── 最後に、今後企業の皆様にはどういった発信をしていってもらいたいですか?

 インターネットに情報の資産をつくってほしいと思います。一般の個人では持ち得ない情報を企業は持っているはずで、それをしっかりと発信してほしいですし、そういった情報をしっかり届けるためにもSEOには是非取り組んでいただきたいですね。

大西 私はユーザーの知りたいことに対応するような便利な記事だけでなく、ユーザーの気持ちを揺さぶるような情報発信にもぜひ挑戦してほしいと思います。というのも、昔と比べて人気を集めるコンテンツの特徴が変わってきていると思うからです。

先ほど話にも上がったはてなブックマークのトップページには、その時々で人気のページがまとまっているのですが、以前はライフハックなどの便利なページが多く見られました。しかし、今はどちらかというと内容のしっかり詰まった読ませる記事が多い。

それはインターネットが人々にとって単なるツールではなく、生活に寄り添ってくれるパートナーになったということでしょう。情報発信しようと考えている企業の方々にも、是非その傾向を意識していただき、ユーザーに愛される記事を発信してほしいですね。

取材・文/山田井ユウキ
撮影・編集/はてな編集部