好きなモノを本気で推す最適ツールはブログである。戦略としての“推し”ブログ術(寄稿:ゲーマー日日新聞/ジニ)【書籍プレゼントあり】

【書籍のプレゼント情報あります!】
『ゲーマー日日新聞』でゲームの文化的価値を発信するジニ(id:arcadia11)さんに「推す」ツールとしてのブログ術をブログへの溢れ出る愛とともに寄稿いただきました。記事末にはプレゼント情報もあります! この記事は、はてな×KADOKAWAで取り組む「ブログ書籍化プロジェクト」で出版される書籍のプロモーション記事です。

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インターネットは戦場と化している。自分が作り出した「正しさ」や「美しさ」を世界中の人間に伝えるべく、企業、行政、シンクタンクなどあらゆる人材とリソースが、インターネットにおける「情報」というミサイルを射出している戦場の如き徹底した砲撃、爆撃、掃射によって、インターネットには視覚的、聴覚的爆音が轟く。

しかし、情報に溢れるインターネットだからこそ、自分の言葉を伝えたいという意志を持つ人が今増えつつある。言葉という武器を抱えて戦場に飛び込みたいという勇ましい人がたくさんいる。

だから私が書籍化のお話を頂いた時、自分の戦果を掲げるよりも、武器を配ろうと考えた。私がこれまで6年ブログを続けて蓄積した、好き、愛、推し、そういったものを、言語化するノウハウを集めた本だ。

好きなものを「推す」だけ。共感される文章術

好きなものを「推す」だけ。共感される文章術

  • 作者:Jini
  • 発売日: 2020/05/01
  • メディア: Kindle版

ゲームを推すためにブログを書いた


私がブログを書いたきっかけは『The Last of Us』*1というビデオゲームである。

誠に傑作であった。もう7年も前の作品だが、定期的にエンディングまで遊び直している。感染という未曾有の災害を題材にしながらも、そこに直面する人の意志や絆のみを、ゲームのインタラクティブな表現で体験する姿勢は今もなお唯一無二の感動がある。

ところがネットでこの作品の評価はまばらであった。傑作という声もあったが、「何が言いたいのかよくわからない」「遊びづらいので面白くない」という意見も少なくなかった。触れた作品にどんな印象を抱くかは人の自由とはいえ、彼らが『The Last of Us』の魅力を理解できなかったり、欠点を誤解しているなら、私は彼らに今一度この名作の価値を再度検討してもらえないだろうかと考えた。

これはゲームだけではない。アニメでも、漫画でも、小説でも観光地でも、宗教でさえそうである。はじめは一人、二人の限られた意見が世論となり、やがて後世に「伝説のクソゲー」「つまらない打ち切り漫画」などと、触れたことすらない人に揶揄されるようになってしまう。

『The Last of Us』に限らず、優れたゲームとは何か、あるいは優れたゲームの何が優れているのか、そういった落とし所はまだまだ未知の部分がある。

加えて、今のゲーム文化の進歩は著しい。2017年は『ゼルダの伝説 Breth of the Wild』*2がオープンワールドの規格を全く新しいものに更新してしまった。2018年の『God of War』*3は血にまみれた過去と対峙する父親の精神を丁寧に追体験させた。2019年の『Outer Wilds』*4は時間と空間の軸を宇宙という舞台にダイナミックに収束させた……。これを書いている一分一秒の間にも、ビデオゲームは常に変化し、進化する、ミレニアル世代、いや、人類を代表するエンタメになりつつある。

この可能性に満ちたエンタメのあまりの進化のスピードに、遊ぶだけの私たちすらついていけていない。語られるべき作品が語られることなく、次の作品の波に埋もれていく。そのありふれた焦燥感こそ、私がブログを書き始めた理由だ。

推しに文章が強い理由


だから私はブログを作った。自分の好きな作品、今で言う「推し」を本気で推すために。

誰かに推されるのを待つよりも、自分で推した方が早い。世論に対峙するには、言わずもがな自分も意見を発信するしかない。それも、他の多数の意見と比べても十分傾聴に値すると思わせるような、溢れ出んばかりの情熱、理路整然とした長文、誰の言葉か明らかにして伝える言葉を編まなければいけない。

そしてそのために必要な土壌こそ、ブログなのである。

既にブログブームなるものが去って久しい。SNSや動画投稿プラットフォームがある中、あえてブログで投稿することに何の意味があるのかと思う人も多いだろう。確かにインプレッションや、そこから広告収入を得ることだけ考えれば、ブログは不向きである。

だが「伝えたいこと、伝えるべきことを、伝える」という目的において、ブログは未だ完成された武器だ。ブログはSNSのように流れないし、動画のように抽象的にはならない。ただこうであると記すだけで、客観的に他人に伝えることができる数少ない手段であることは変わりない。

今は爆風のように情報がインターネットの網を駆け巡っている。半端なコンテンツはその速度についていけず、すぐに流されてしまう。ブログは即時的に数字を取りに行く上では「オワコン」と形容されるのも仕方ないが、明確な目的と情熱が見えたコンテンツは長期的にずっと印象に残るし、何かのきっかけで発掘される可能性も高い。

ブログに限らず、コンテンツを作るには何か目的があるだろう。目立ちたいのか、褒められたいのか、お金を稼ぎたいのか、それぞれ目的には最適な手段がある。中でも好きなモノを推すのであれば、最終的にブログ、テキストサイト、文章系プラットフォームは最も有力な選択肢になりえる。

ブログで推してみよう

そんなわけで2020年5月1日、自著『好きなものを「推す」だけ。共感される文章術』を上梓することになった。

好きなものを「推す」だけ。共感される文章術

好きなものを「推す」だけ。共感される文章術

  • 作者:Jini
  • 発売日: 2020/05/01
  • メディア: Kindle版

書籍化のお話を頂いた時、最初はブログで書いていたようなゲームに関する批評をまとめようかと考えていたが、刻一刻と情報のスピードが加速し、そこに埋没していく(ゲームに限らず)数々の作品のことを鑑みれば、今自分が還元できるものは米よりも種籾、魚ではなく釣り方なのではないか、そう考えた結果私は「推し方」そのものを本で書くことにした。

本著はあくまで日常生活からSNSまで、そして長文といった普遍的な「推し方」をプラットフォームやコンテンツに応じて列挙したものであるが、せっかくなので「はてなブログ」で好きなものを推すにはどうすればいいかポイントをかいつまんでみよう。

まずはてなブログというプラットフォームのメリットは、テキストを使えること、開設が楽なこと、それなりに独立できることである。

テキストとあえて表現したのは、今テキスト以外のコンテンツを配信する方法が豊富だからだ。YouTubeのような動画もそうだし、podcastでラジオを配信する人もいる、最近はゲームアプリという形で表現する人も増えつつある。編集や地声、プログラミングに自信があるならこれらを選ぶのも十分ありだ(「週刊はてなブログ」でこの指摘はまずいだろうが)。

ではテキストには文才が必要かといえば、そうでもない。むしろテキストは数ある媒体で最も自由であり、「文才」はあまり問われない。ブログの源流ともいえるテキストサイトにも、なんてことのない日記系もあれば、コメディとして楽しめるもの、異様に深い洞察をするもの、小説なんだか事実なんだか分からないものと多数あり、それぞれがある種「文才」と言えた。

従ってブログにも自分なりの書き方を突き詰めていけば、やがて読まれるだけのものとなるだろう。テキストサイトの多くが先代(例えば、優れた小説、批評、論述など)の亜流となっているように、ざっくりとスタイルを模倣しつつ、自分が最も得意で好きな話題を、好きな角度から、好きな文体で書いていこう。重要なのは形式でなく実態であり、品質よりも個性である。誰も知らなかった事実や、読んだことのない話を記事にすれば、必ず読んでもらえると私は信じて疑わない。

ブログは開設が楽なこと、イニシャルコストが低いことも魅力的だ。始める上で必要な機材などまったくないし、最低限のノートPCとオンライン環境さえあれば十分。人によってはスマホで済ます人もいるだろう*5。なので「とりあえず」で始めてみること。始める前に躊躇する必要はない。

最後に、ブログは独立できるとはどういうことか。実は多くのプラットフォームでクリエイターが投稿したコンテンツは自由に動かせない。削除はできるだろうが、投稿した後から大部分を編集したり、自分の個性を反映したプロフィールを用意したり、投稿したコンテンツ別のプラットフォームに引っ越すといったことに、多くの制約がかけられている。加えて規約やポリシーも日々変わるので、常にプラットフォームの信じる「正しさ」に沿って運営しなければならない。

その点、ブログは完全に自力で作ったサイトほどではないにせよ、ある程度ユーザーが自由に動かせる。必要に応じてコンテンツを後から編集できるし、大部分のサイトのデザインやレイアウトもカスタマイズできる。はてなブログはテンプレートのデザインも多数秀逸なものがあるので、外枠にも自分の個性をちゃんと反映できるだろう。ブログの運用や収益化にも一定の制約はあるものの、かなり広範な裁量が認められている。公序良俗に反さない限り、表現の自由は最大限守られる。

特に、コンテンツのエクスポートに対応しているのは本当に大きなポイントだ。はてなブログをはじめとしたブログサービスでは、大抵投稿した記事のテキスト部分のみをファイルとして抽出し、更に他サービスにインポートすることができる。要はコンテンツの引っ越しだ。せっかく自分が作ったコンテンツ、万が一今のサービスに不満を覚えたり、何らかの悪意に晒された時、ちゃんと自分の手で守り通せるというわけだ。はてなブログであれば、自費での印刷・製本にも対応している。

総じて、ブログは推す手段として自由で、準備も少なく、それなりに独立してコンテンツを維持できる。決して派手ではないが、好きなモノを推すという目的において、これほど充実感のあるツールはないだろうと私は考える。

というか、他媒体では正直足りないのだ。溢れ出んばかりの推しへの情熱、探求、苦悩、そういった推しに対する憎愛を100%形にするには、もう長文テキストしかないと私は結論づけている。多分テキストが一番「気持ち悪い」形であることを許容されるコンテンツなのだろう。



長くなったが、より本格的かつ機能的な「推し方」については拙書『好きなものを「推す」だけ。共感される文章術』で思う存分書き散らしている。

好きなものを「推す」だけ。共感される文章術

好きなものを「推す」だけ。共感される文章術

  • 作者:Jini
  • 発売日: 2020/05/01
  • メディア: Kindle版

今回は古巣のはてなブログなので文章もやや硬くなったが、本の文章は濃厚なオタクでない人も楽しめるような文体で、かつ濃度はそれ以上といった具合だ。

「自分の好きなものを誰かに知ってもらいたい」という思いを一度でも抱いた人なら、多少なり役立つ内容になっているので是非読んでほしい。

著者:ジニid:arcadia11

ジニ

ゲームジャーナリスト、批評家、編集者。ゲームの文化的価値を発信するため、2014年ブログ「ゲーマー日日新聞」を設立。5年で2500万PV達成。2019年からTBSラジオ「アフター6ジャンクション」に出演、2020年5月には書籍『好きなものを「推す」だけ。共感される文章術』を上梓。
ブログ:ゲーマー日日新聞
Twitter:@J1N1_R

ジニさんの著書『好きなものを「推す」だけ。共感される文章術』を抽選で10名様にプレゼントします。詳細は以下の応募要項をご覧ください。たくさんのご応募、お待ちしています!

応募要項

応募期間 2020年4月30日(木)~2020年5月6日(水)23:59
賞品・当選者数 『好きなものを「推す」だけ。共感される文章術』10名様
応募方法 この記事をはてなブックマークに追加 し「#ジニさん本プレゼント」と記入してください。このエントリーをはてなブックマークに追加
抽選と発表 応募期間終了後に厳正な抽選を行い、当選ユーザー様の登録メールアドレス宛に送付先情報等を確認するメールをお送りします(取得した情報は本賞品送付用途以外には使用いたしません)。なお、送付先は国内に限らせていただきます。
発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。

※最近、当選のお知らせメールに返信がなく、当選が無効となるケースが多発しております。ご応募の際は登録メールアドレスのご確認をお願いします。

※この記事は以下の取り組みで出版された本の紹介記事になります
hatenacorp.jp


編集:はてな編集部

*1:2013年発売。ノーティードッグが開発したPS3向けサバイバルアドベンチャーゲーム。感染症のワクチンを求めてアメリカを横断する

*2:2017年発売。任天堂が開発したアクションアドベンチャーゲーム。既存のゼルダに数々のオープンワールドのメカニクスを導入した

*3:2018年発売。ソニーSanta Monica Studioが開発したアクションアドベンチャーゲーム。神々の親子の絆を描く

*4:2019年発売。Mobius Digitalが開発したアドベンチャーゲーム。20分で滅ぶ宇宙を舞台に謎を解く

*5:かのフミコフミオ先生はガラケーであの膨大な執筆をこなすという