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Webサービスの開発・運用において、OSS(オープンソースソフトウェア)はなくてはならないものですが、継続的なオープンソース活動やコミュニティの運営は、資金面や工数面ともに簡単ではありません。はてなブログでは、「OSSコミュニティ支援プログラム」を通じて、技術系イベントも含めた広いテックコミュニティの情報発信を支援しています。
本記事では、支援プログラムをご利用いただき、ブログでも情報発信をされているテックイベント「吉祥寺.pm」を主宰する id:magnoliak/@magnolia_k_さんに、立ち上げの経緯や約7年運営を続けるモチベーション、イベントの裏話、継続的にアウトプットをする秘訣まで伺いました。これから勉強会に参加してみたいという方も、自分でコミュニティを立ち上げてみたい方も、必見です。
知り合いのいない状況から、参加者の8割が懇親会まで出席する濃密なコミュニティに
── まずは「吉祥寺.pm」を始めたきっかけを詳しく教えてください。
吉祥寺.pmは7年くらい前に始めました。
その当時、六本木ヒルズの会社で開催されたテックイベントに出ていまして。わたしは東京の西側に住んでいたので、懇親会まで出ると帰る時間が遅くなってしまう。それをたまたま同じ西側の武蔵境(吉祥寺の2駅隣)に住んでいる方に話したら、すごく共感してもらい盛り上がりました。
西の方でイベントがあれば、夜遅くまで懇親会に参加できて、すぐ帰れて良いんじゃないか。交通の便が良いところとなると吉祥寺かなと思って、じゃあやりましょうとなりました。
── だから地名を大事にしているんですね。
そうなんですよ。西側にはエンジニア多いよね、みんな中央線で帰るよね、と。中央線沿いの駅でやれば人が集まるんじゃないかと思いました。だから地名は大事なんです。
7、8年前は、渋谷.pmや関西.pmなど「地域.pm(pmはperl mongersの略)」が多くて、Perlを使ってWebアプリケーションを使って開発する企業も多かった。はてなさんもそうでしょうけど、Perlが盛り上がっていた時代でした。自分もWebアプリケーションの勉強を一番最初にしたプログラミング言語はPerlでした。なので最初は、Perlの話が多かったですね。今はもう、何が出てくるか誰もわからないイベントです(笑)。そこは時代とともに変わってきました。
── 立ち上げ時はどういった体制だったのでしょうか?
懇親会で盛り上がった2人です。わたしがconnpass(エンジニアを向けIT勉強会支援プラットフォーム)を立ち上げて、もう一人が公共の会議室を予約しに窓口までいくような役割でした。
実は立ち上げるとき、コミュニティ活動をしていなかったので、ほとんど知り合いがいなかったんです。知り合いは、今はてなにいる id:papix さんくらいじゃないかな。そんな中でも、イベントを立ち上げたら知り合いが増えるんじゃないかみたいな思いもありました。
で、実際にconnpassを立てたら、全然知らない人が15、6人集まってくださったんです。面白がってくれる方がたくさんいらっしゃって、これなら進めていけるなという感触があって、続けてきました。
── 現在の運営体制に変化はありますか?
ほとんどわたし一人でやっています。大きい会場でやるときは、先ほどのもう一人や、他の方などに会場での案内などのお手伝いはお願いしています。
── 2020年に入ってリアルイベントが難しい状況が続いています。オンライン化して変化はありましたか?
あります。吉祥寺.pmって、実は懇親会に参加してくれる人の率が非常に多いんです。いつも武蔵野公会堂という公共の会場を使っていて、そこは飲食ができないので、懇親会は近くの居酒屋をどこか選んで予約していくんです。この手のイベントは、懇親会の会場が分かれると出席率が半分とか1/3とかになると思うんですけども、吉祥寺.pmは8割がそのまま参加するんですよ。
一番多いとき、ホールを貸し切ってやった際は、95人の来場があって、懇親会には70人来たことがあります。参加される皆さんが、懇親会も含めたイベントだと思って来るんです。濃密に参加者同士が話ができる場所として、皆さんが気に入ってくれているのかなと思います。
しかし今は懇親会ができない。オンラインでやったとしても、残る人の数が極端に減ります。そこが変化としては大きいですね。
── 懇親会の出席率が高く盛り上がるのはすばらしいですね。そのようにコミュニティが成長した背景はなんでしょう。
よく話しているのは、場所の良さですね。吉祥寺はおいしいお店も多いですし、懇親会会場に選ぶ居酒屋も外れがないですしね。元々は西側の人間を集めようと思っていたんですが、東側に住んでいる方がわざわざ来てくれることもあって。そうすると、せっかくなら懇親会も残ろうかなと思ってくれるんです。
続けるために、無理をせず一人でできる範囲のことしかやらない
── ここまで続けてきて感じたメリットやデメリットはありますか?
吉祥寺.pm以外のカンファレンスに行ったとき、「吉祥寺.pmを知ってるよ!」と言ってくださって会話のフックになる。わたし個人を知らなくても、吉祥寺.pmを知ってくれていて名刺代わりになっています。それは、やり続けるメリットですね。
デメリットは本当になくて……参加される皆さんが紳士的といいますか、事故らしい事故なくここまでやってこれたのは、本当に感謝しかないですね。
── お話を伺っていると良い面が多いですね。あえて聞きますが、何か困ったことはありましたか?
懇親会に参加を希望されていても、どうしても当日にキャンセルが出ることもあります。そういう場合は、会場で飛び入りエントリーを募っています。結果的に、今のところはキャンセルの数より飛び入りの数が上回っていますね。本当にありがたいことです。
── 7年もの間一人で運営を続ける、そのモチベーションの源は何でしょうか?
今、吉祥寺.pmって、募集をかけると参加者よりも登壇する人の方から埋まっていくんです。完全フリーエントリーで早い者勝ちなので、運営する側も、実際発表が始まるまで何の話題なのか分からない(笑)。何が出てくるか分からないイベントなので、その楽しさがあります。
── 何が起きるか分からないことを楽しむ姿勢は、何かを始める場合の参考になりますね。これからイベントを立ち上げようと思っている方に向けて、アドバイスをお願いします。
まずは無理をしないこと。大きいイベントを見ているとすごく作り込まれているので、それを真似しようとすると疲れてしまう。まずはやれる範囲で、2回3回…… と続けることが大事かなと思います。
── やれる範囲で、というのは確かに重要かもしれません。本業のお仕事もある中で、7年間イベントや情報発信を継続してきた秘訣はありますか?
一人でやっているので、一人でやれる範囲でしかやらない。それ以上の無理を絶対にしないことですね。
例えば「動画配信はやらないんですか?」と聞かれることもありますが、手が回らなくなってしまう。一人でできなくなってくる。手伝いますよというお声がけもいただくんですが、そうすると、コミュニケーションコストもかかってくるので、今は当日のお手伝いに限ってお願いしています。
そういう中で、ブログやTwitterなどのテキストメディアは、隙間時間に書いて下書きにしておけば良いので、すごく相性が良いです。
── Twitterやブログなど、プラットフォームごとでのすみ分けはどのようにしているのでしょう?
はてなブログを使う一番のポイントは記録に残ることです。やっぱりTwitterのタイムラインは流れていくので。時々、はてなブログが1年前の記事をメールで通知してくれるので、思い返すことができています。自分が振り返るためのメディアとして、ブログを使っています。
一方で、イベントの告知やお知らせの周知などにはTwitterを使っています。
アウトプットはスキルアップの訓練。自分が振り返るためのメディアとして、ブログを使う
── まだ登壇経験のない、今後発表に挑戦してみようという方にメッセージはありますか。
登壇した経験がない方が圧倒的に多いと思います。30分や1時間の登壇資料を作り込むのは大変ですが、数分のLTであればスライド数枚でもできます。各イベントでは、LTの時間が用意されていることが多いので、まずは一度でも良いのでチャレンジしてみてほしいなと思います。自分の言葉を外に発信するのはスキルアップの訓練にもなります。
── テキストメディアでのアウトプットはどう考えていますか?
ブログは残るストックのメディアで、SNSは流れるフローのメディアです。
まずはSNSに考えを流してみて、ブログにまとめると良いのではと思っています。最初から気合いを入れてブログを書こうとすると、なかなか書き出せないということがあると思うので。まずはクローズドなSlackのチャンネルでもTwitterでも、フローなメディアにアイデアを流して、あとから見返してみると良いと思います。
── 吉祥寺.pmとしても、id:magnoliakさん個人としても、はてなブログをご利用いただいています。団体・個人ともにはてなブログを選んだ理由を聞かせてください。
やはりエンジニアの方の利用率が高く、リーチしやすいのかなと思っていました。自分でサーバーを立てて自作のツールを使うでも良かったんですが、吉祥寺.pmのブログは、時間を最小限にするために既存のブログサービスにしようと最初から決めていました。その中でも、相性の良さそうなはてなブログを選びました。
個人の方は、しばらく自作のツールを使っていましたが、メンテナンスが面倒になったので、既存のツールに乗り換えようと。その時に思ったのは、吉祥寺.pmで使っていたのもありますし、吉祥寺.pmに参加していただいたはてなの方とも交流があったことです。作っている人の顔が見えて安心感があったから選びました。
── 最後に、エンジニアの皆さんが、継続的にアウトプットする秘訣があれば教えてください。
自分がやれるペースを作ることですね。例えば通勤の電車の中でしか書かないとか、やれるペースや範囲をまず決める。そこから何を書くか考えていった方が良いかなと思います。
気合いを入れて書こうとすればするほど燃え尽きて書けなくなってしまいますよね。
わたしも、個人のブログでは技術的に勉強したこと、調べたことをアウトプットしようと思っているんですが、他の人が読むことを意識した瞬間に書くのが止まってしまう。前提となるこういう知識がないと…… とか考えてしまう。
そういう場合は、手書きでメモを書いてみてまとめてみるとか、気分を変えて書くようにしています。
お話を伺ったコミュニティ:吉祥寺.pm(id:kichijojipm)
吉祥寺.pmは、平日の夜、東京の西側で開催することをコンセプトに続く、所謂IT勉強会です。
3ヶ月に一度の開催ペースで、これまで7年ほど運営されています。2020年はオンライン開催に移行しました。
当初はPerlを中心としたイベントということで、「”地名".pm」(pmはperl mongersの略です)でイベント名が決まりました。
しかし、今では「発表したい人が、発表したいことを、自由に発表する場」になっていて、データベースや設計、コンテナ、マネジメント、アジャイルなどなど、多岐に渡る発表が2時間程度の短い時間の中で次々に行われる点が特徴です。
connpass:吉祥寺.pm - connpassブログ:kichijojipm’s blog
Twitter:吉祥寺.pm (@kichijojipm) | Twitter
吉祥寺.pmの中の人:magnoliak(id:magnoliak)
ブログ:Magnolia Tech
Twitter:magnoliak🍧 (@magnolia_k_) | Twitter
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