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“不純な動機”で始めたブログは、私を別の場所へ連れていってくれるようになった | チェコ好き

「ブログを書く」ってどんなこと?】シリーズの今回は、ブログに旅や文学について書いているコラムニスト・ブロガーのチェコ好き( id:aniram-czech@aniram_czech)さんに寄稿いただきました。

ブログを前に「いざ始めてみたものの、定期的な更新は難しい」「書く内容に統一感がない」と考え始め、ブログから遠ざかってしまうことがあるかもしれません。更新頻度やモチベーションを保てないと続けられない……? 実はそうでもないようです。

ブログを開設して9年以上のチェコ好きさんは、これまで「更新頻度、熱量、書く内容、モチベーションもバラバラ」とのこと。チェコ好きさんが長くブログを続けてこられた経験は、継続するためのヒントになりそうです。

「ブログを書く」ってどんなこと?

自分ではほんの1〜2年前に始めたばかりのような気がしているのだけど、私がはてなブログを開設したのは2012年の5月なので、実はもう9年近くブログを書き続けていることになる。

9年前にブログを開設した理由は、今となってはうろ覚えの部分もあるが、決して高尚な動機があったわけではないことは確かだ。芸術系の大学院まで出たくせにその知識や経験をひとかけらも生かせない会社に就職してしまいやる気を失っていたところに、当時のブロガーブームやフリーランスブームが重なって、「ブログを始めてみたら、何か人生が変わるかも」という淡い(甘い)期待を抱いてしまった……というのが正直なところである。ぜんぜんストイックじゃないし、はっきり言ってただの“ワナビー”(何かになりたがる人のこと)なので、ちょっと恥ずかしい。

が、今回書きたいのは、そんな不純な動機で始めても、9~10年はブログを続けられるということである。そして、9年か10年続けば、最初の動機がどうあれ、「ブログを書くこと」は自分の中で損得なしに欠かせない存在になっているということである。

更新頻度を重視した頃から、PVを追うことに飽きるまで

 
9年間を振り返ってみると、更新頻度も熱量も書く内容もモチベーションも、時期によってバラバラだ。あまり堂々と言えることじゃないが、他のWebサイトで連載をさせてもらうようになってからは書くエネルギーのほとんどをそちらに注いでいるため、ブログ更新自体はやめていないけれど、ちょっと閑古鳥が鳴いている。
 
そんな現状とは対照的に、ブログを始めた最初の1〜2年は、とにかく更新しまくることが大切だと思っていた。その割には毎日更新する気力はなかったので、「3日に1回」くらいがせいぜいだったのだけど、当時は自分の中で更新頻度にノルマを設けていた記憶がある。

なぜ更新頻度を重視していたかといえば、記事数が増えればPVが増えると思っていたからだ。動機はどうあれ、最初の1〜2年で「書くことを習慣にする、定期的に何か書かないと気持ち悪い状態にまで自分を持っていく」ことには成功したので、「書き続ける」という観点ではよい取り組みだったのかもしれない。
 
そう、私は「長年更新を続けているブロガー」としてはもしかしたら珍しく、一時期までは、けっこうPV(ページビュー)を重視してブログを書いていた。タイトルを考え、導入部分を考え、それがPVという数字として跳ね返ってくることは、実験みたいで楽しかったのだ。一方、当時貧乏で本当はお金も欲しかったのにアフィリエイトを真面目にやらなかったのは、何か高尚な理由があったわけではなく、純粋に売上の上げ方がよくわからなかったからである。でも、アフィリエイトを本気でやっていたらぜんぜん儲からなくて途中で心が折れていた気がするので、結果的にはそれが逆にプラスに働いたと解釈することもできなくはない。
 
ただ、根っこに「たくさん読まれたい」「できればお金もちょっと欲しい」という俗っぽい欲があっても、私はそんなに器用なタイプではなかった。「自分の好きなこと、書けることを、タイトルや導入を工夫してできる範囲でより読まれるように書く」くらいしかやれることがなく、そうなるとPV的にも収益的にもけっこう低いところで天井にぶつかってしまう。それが2015年ごろのことだったと思う。

その頃は何をモチベーションにブログを更新していたかというと、「いろいろな人と会うこと」である。

私はかなり内気な性格なので初対面の人とすぐに打ち解けられることなんてほとんどないのだが、ブログを書いていると、それが事前の自己紹介や、詳細に書かれた名刺のような役割をしてくれる。同様に、相手もブログを書いている人であれば、日々どんなことを考えている人なのか、事前に知ることができる。すると、かなり内気な私でも話題に困らず、人と会うハードルがちょっとだけ下がったのだ。

「基本的に、誘われたら断らない」をモットーに、この時期はいろいろな人に会いにいろいろな場所へ出かけていた。そして2016年のはじめ、「ブログがあるから大丈夫」「なんとかなるっしょ」と当時勤めていた会社を辞め、約1カ月のあいだ、中東へ旅行に出かけてしまった……。


 
この時の決断は決して褒められたものではないと思うし、同様のことをあまり他人に勧めるつもりはないが、会社を辞める決断ができたのは、間違いなくブログがあったからである。

もちろん、ブログから得る収益をアテにしていたわけではない。当時の私に収益はほぼない。「ブログがあるから大丈夫」は、「ブログで稼ぐから大丈夫」という意味ではなくて、ブログを書き続けることによって自分の「核」のようなものを育てることができていたし、人脈もわずかながら構築できていたので、会社を辞めてもなんとかなる気がした、みたいなことである。

今振り返ると危なっかしくてヒヤヒヤするが、まあ、まだ若かった。結果的には中東旅行の最後に知人がツイートしていた求人情報から、その後に所属することになる会社が決まった。「なんとかなるっしょ」と思ってはいたが、本当に、なんとかなった。

ブログを書き続けることで、自分の「核」を育てる

 
ここまで「PV」「お金」「人」とすごく浮ついた動機でブログを続けてきたように書いてしまった。しかし、「ブログという場所に文章を書くこと」自体は、純粋にずっと好きだった。読んだ本のこと、行った美術展のこと、観た映画のこと、そして旅した場所のことを、とにかく書きたかった

なぜ書きたかったのかというと、私は「書きながら考える」タイプの人間だからだ。つまり、文章として書き出さないとあまり物事を深く考えられないのである。本を読んで感想を書き終わってはじめて「私はこんなことを考えていたのか」と思うし、行った美術展も、観た映画も、旅した場所も、ブログや寄稿先で文章を書いて、はじめて自分の中で立体的になる。PVを重視していた時期も、小銭とはいえアフィリエイトでお金を稼げることがうれしかった時期も、いろいろな人と会うのが面白かった時期もあるけれど、やっぱり、それだけでは9年もブログを続けることはできなかったと思う。

私の場合、ブログを続けることの一番の喜びは、キーボードの上で手を動かして文章を書くことによって、自分が何を考えているのかが次第に明確になっていくことである。ブログを書き続けることで自分の「核」を育てることができるというのは、そういう意味だ。


 
ブログを書く人として、私はぜんぜんカッコよくはない。「人に読まれても読まれなくても、とにかく粛々と書き続けることが大切でした」というストイックなことは言えないし、更新頻度も熱量も書く内容もモチベーションも、その時々でバラバラなのは、冒頭で述べたとおりである。
 
だから、もし「ブログを書きたいんだけど、なかなか長く続かない」と悩んでいる人に何か伝えるとしたら、「ちょっとダサい下心があっても最初はいい、文体だって書く内容だって字数だってバラバラでいい、ただ、とにかく自分の中の『文章を書くのって楽しいな』という気持ちを大切にして、育てること」と説くだろうか。

忙しくてブログを更新する気分になれない時だって人生にはあるし、1年間くらい更新をサボっちゃっても別にいい。1年後に、何食わぬ顔でまたしれっと再開すればいいのだから。ただその時、前のブログを閉鎖して別のブログを始めるより、増改築を繰り返して不格好になってしまった家みたいになってもいいので、1つのブログをトントンカンカン工事し続ける方が愛着が湧くかな、と個人的には思う。まあ、いろいろな考え方があるだろうけど。
 
PVや収益のような数字で示せるメリットを、長期的なブログの継続に見出すことはなかなか難しい。ブログの更新は生産的な行為か無駄な行為かと問われたら、はっきり言って無駄なことのほうが多いのだろう。でも、ブログがなかったら出会えなかったであろう本、旅先、人、映画、思想が私にはある

ブログ開設から9年経った今、どんなかたちであれ今後もずっとブログを書き続けたいなと思うのは、きっとブログを書くことが、これからも私の「核」を育て続けてくれ、たくさんのものやことや人と出会わせてくれ、私をもっともっと遠い、別の場所へ連れていってくれる気がするからだ。

著者:チェコ好きid:aniram-czech

チェコ好き

旅と文学について書くコラムニスト・ブロガー。1987年生まれ、神奈川県出身。HNは大学院時代にチェコのシュルレアリスム映画を研究していたことから。文筆業を行いつつ、都内のIT企業に勤務もする。著書に『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか 女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド』(大和出版)。
ブログ:チェコ好きの日記
Twitter:@aniram_czech


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