そこで、週刊はてなブログでは「好きなもの・こと」についてつづるはてなブロガーに、その思いを語っていただく連載【わたしの偏愛】を実施。
第6回となる今回は、「旅するトナカイ」のトナカイフサコさん (id:i--o) に「海外のすごいトイレ」について寄稿いただきました。トナカイフサコさんはヨーロッパやアジアを一人で回るほどの旅好きで、旅行先での出来事をユーモアを交えて漫画で紹介しています。今回は、過去に訪れた国の中から選りすぐりの「トイレ」を紹介。日本では味わえない貴重なトイレの体験エピソードから、各国のトイレ事情まで詳しく描いていただきました。
海外旅行になかなか行けない日々が続く昨今、旅行好きの皆さま、いかがお過ごしでしょうか。トナカイフサコと申します。
社会人になってから海外旅行にハマり、これまでに行った国はヨーロッパを中心に15カ国ほど。日常の仕事や人間関係から遠く離れるために一人での旅を楽しんでいます。ただしドジの星の元に生まれた私のひとり旅はドタバタ体験がつきものです。
そんな体験を皆さんに読んで笑っていただこう、そして私の失敗を他の旅行者の方の役に立てていただこう、という思いからブログで漫画を描き始めました。
さて、いろいろな国の話を描く中で欠かせないのが海外のトイレ情報。
なぜなら私は、水分とストレスが膀胱に直結するタイプで、道も分からず、言葉も通じず、荷物も多い海外旅行においてトイレの情報は最重要だからです。
旅のバイブル『地球の歩き方』には末尾のページにトイレ情報が掲載されています。目的地へ向かう飛行機でそのページをチェックするのが私のルーティン。それでも、これまでにトイレの場所や使用方法が分からず、ギリギリの攻防を何度か経験しました。
そんな経験をもとに、今この瞬間、世界のどこかで困っているトイレ困窮者の方に、インターネットの海を渡って届いて欲しい!と祈る思いでブログにもトイレ話を描いています。
いろいろとトイレで苦労もしてきた私ですが、旅を重ねていくにつれて、各国のトイレを訪ねることが旅の楽しみの一つになっていきました。トイレ利用中は自分もそれどころではないのですが、後から思い返して「どうしてあんなトイレを作ったんだ……?」と考え始めると、トイレの様式がその国の文化・習慣とクロスオーバーして楽しい発見があるのです。
というわけで、今回は光栄にも「私の偏愛」について語る場をいただいたので、興味深かった3カ国のトイレを漫画と文章でご紹介します。
【漫画】トナカイフサコの海外トイレ総集編!
「ぼっとん式」から異なる進化をとげたタイのトイレ
日本にも「和式トイレ」と「洋式トイレ」があるように、タイでも旧式の「しゃがむタイプのトイレ」と「洋式トイレ」が混在しています。
私が訪れたのは首都・バンコクと古都・チェンマイですが、地域や施設のランクによってトイレのタイプも異なるので(高級店ではペーパーを流して良いパターンもあります)、一度の旅でいろいろなトイレを体験できました。
タイの旧式トイレには水が貼った桶が設置されおり、お尻を洗う文化は古くからあるようです。その文化が、シャワー型のウォシュレット(ウォーターガンと呼ぶようです)という形で進化していったんだそう。
ウォーターガンも、古びたものからメタリックでナウいものまであって、これ自体も年を経てマイナーチェンジしていることがうかがえます。
海外に行くとなかなかウォシュレット付きトイレを見かけないので、タイのトイレはウォシュレット派にとって最高の国かもしれません。
ちなみに「便座が外されたトイレ」は、タイだけでなく他の国でも目撃情報があります。各国共通の「トイレあるある」なのかもしれませんね。
クロアチアのトイレは「清掃員」目線で進化を遂げた?
イタリアのすぐ対岸、東ヨーロッパに位置するクロアチアは長い内戦の歴史がありますが、西洋と東洋の文化が合流する地で生まれた数々の美しい建物が今も残ります。
クロアチアの公共トイレは有料のところが多く、大体ワンコイン*1で使えます。私が旅したのは2013年なのでもうずいぶん前ですが、当時は現金(コイン)しか使えないトイレが多かったので小銭は常備必須でした。
当時は清掃をされる集金係の方が管理されていましたが、今ではコインを入れれば鍵が開いて、便座清掃もオートになっているという全自動公共トイレが導入されているようです。
ちなみにどんな感じで回転・除菌するのか、見てみたい方はこちらの動画をどうぞ。(こちらはドイツのトイレですが、原理としてはこんな感じでした)
Robot - Self Cleaning Toilet Seat - Germany - YouTube
日本のトイレは利用者の快適性のために進化してきたように感じるのですが、クロアチアのトイレは集金・清掃といった管理者側の作業の自動化のために進化しているように思われます。進化の方向がそれぞれに異なるトイレ、比べるほどに興味深いですね。
デザイン大国フィンランドのトイレはジェンダーにも配慮されて先進的
フィンランドといえば世界幸福度ランキング1位の国として有名*2で、福祉国家・教育国家としても知られます。サウナ発祥の地としても近年話題ですね。ムーミン、マリメッコ、サンタクロース、『かもめ食堂』など日本人になじみ深い名物も多いです。ちなみに私の「トナカイフサコ」という名前も、初めて旅行記漫画を描いたのがフィンランド旅行記だったから……という、個人的に思い入れの強い国です。
また男女平等の国としても有名で、フィンランド語では「彼/彼女」を同じ単語(hän)で表すから男女平等になったんだ……なんていうジョークも生まれるほど。
そんなジェンダー先進国のフィンランドでは性的マイノリティーの方に配慮した、男女を区別しない「オールジェンダートイレ」がいくつも配備されています。
ヘルシンキ大学駅で見かけた「いきなり個室」のトイレは、使っていた際には「オールジェンダー」とは気づかず「通路にいきなり個室があるなんて、不思議だなぁ」と思った程度でした。実際のトイレ写真はこちらのブログに掲載されています。
japaneseinfinland.blogspot.com
2018年にオープンした図書館OODIには、「老若男女が同じ入り口から入る」というオールジェンダートイレがあります。
初めて利用した際は、正直、犯罪の心配もあってちょっと抵抗があったのですが……。実際はそんなに困ることもなく、普通のトイレと違わずに使用できました。
OODIのトイレ写真はこちらの記事に掲載されています。
フィンランドには前述した通り、昔からサウナを楽しむ文化があります。日本でいう温泉・銭湯のようにサウナが身近にあり、職場の同僚や研究室の仲間と親睦を深めるために男女混浴でサウナに入る……なんていうこともあるようです。
現地では「サウナには妖精がいる」と言われていて、サウナで悪いことをしてはいけない……つまり男女混浴であってもそうでなくても、人を不快にさせることをしてはいけない、という暗黙のルールが国民に広く根付いているそう。
もしかしたらこのルールがあるおかげでオールジェンダートイレが広がっているのかもしれないですね。
これからも世界のトイレに注目して
日本と似て非なる進化を遂げている各国のトイレ。ヒトが生活していくうえで、古より続く大切な行為を担う場所だからこそ、お国柄や文化が滲み出ているのかもしれません。今回は3カ国のトイレを紹介しましたが、まだまだ興味深いトイレを利用している国はたくさんあります。
なかなか話題にできないテーマだからこそ、旅行記漫画の中でこの面白さを共有したい! ということで、これからも各国のトイレを発信していきます。また安心して海外旅行が楽しめるようになったら、世界のトイレ探訪へと出かけたいと思います!
著者:トナカイフサコ(id:i--o)
旅行記漫画家。2017年に脱サラし、海外ひとり旅のエッセイ漫画をはてなブログで連載開始。2019年発売のフィンランド旅行記『はじめてフィンランド〜白夜と極夜 ひとり旅』(河出書房新社)は、全国学校図書館協議会の選定図書に選ばれている。
ブログ:旅するトナカイ
Twitter:@fusakonomanga