【ゆかいインタビュー】 「ゆかい食堂」のくらふとさんが東京にいらっしゃったので杉浦茂風のまんがや動画のことをいろいろと聞いてみたぞ!(前編)

同人誌「ゆかい食堂セレクション」
同人誌「ゆかい食堂セレクション」

食レポートまんが「ゆかい食堂」シリーズが大人気! ブログ「ギャラリークラフト」の くらふと (id:craft_kim) さんが取材のため東京にいらっしゃいました。ということで、はてな東京オフィスのまかないランチにお招きして、ゆかい食堂のこと杉浦茂のこと、その前に作られていた動画やまんがのこともお聞きしました。

取材構成:はてなブログ編集部(id:mohritaroh

―― ひょっとして今日はもうさっそく取材を?

くらふとはい。朝に東京に着いてすぐ1食行ってきたところです。その後、こちらに来る直前までもう1軒寄ってきました。

―― それは忙しいところをわざわざありがとうございます。それではランチにいたしましょう。

※当日のメニューは「カリフラワーの梅味噌そぼろあん」でした。

ゆかい食堂は「美味しそう」がいちばん大事やとおもうんです

―― (ランチ後)さて、「ゆかい食堂」のこぼれ話などが聞けると嬉しいのですが、まず載せるお店はどうやって選んでいるんでしょう?

くらふと大阪に住んでいるので、近い美味しいお店を紹介しているだけなんですけど、美味しいと勧められて行ってみて描いてみた、というのもありますし、ほんとうに近所の掘り出しもんもありますし、食べ歩きの途中で目についたお店もたまにあります。

―― ご出身は大阪ですか?

くらふと生まれも育ちも大阪なので、大阪の土地勘はあります。いま住んでいるところは梅田に1駅で出られて便利です。でも、関東の知り合いには「大阪のお店のばっかりで、なかなか行けないぐぬぬ」と言われてます。

―― はてなブックマークでは、行ったことがある読者がコメントをつけてることもありますね。

くらふと実際に行った人がコメントしてるのは嬉しいですね。ブログを見て行ってみたという人も、以前に行ったことがある人から「このメニューはこうだった」という感想がつくのも嬉しいです。

―― もともと食べ歩きは趣味だったのですか?

くらふとどちらかというと、まんがを描いたらウケが良かったから、ほかにも描いてみようというかんじです。

―― キャラがものを食べているときの、ほっぺたの“ふくらみ”が好きなんですよ。ほんとうに美味しそうで。


ほっぺたの“ふくらみ”

くらふと食べもんの専門的なこととかわからないので、「美味しそう」ということがいちばん大事やとおもうんです。

―― 描くのにどれくらい時間がかかるんでしょう?

くらふと4ページで、だいたい8時間ちょいくらいですかね。キャラクター自体は、いったん決めたらそんなにかからないんです。食べもん自体の絵が、いちばん時間がかかりますね。あとは店構え。この2つだけはリアルタッチにしています。食べ物の絵が美味しそうというのが、単純に大きな魅力だとおもうので。

―― 行ってみたけどダメだったーってこともありますか?

くらふと描いてない店はいくらでもあります。ネタ帳にメモ書きはあるんだけど、メモして終わりとか。「そろそろ更新しないとあかんかな」というときもありますけど、美味しくないとは書きたくないですし。

取材メモ
特別に見せていただいた「ゆかい食堂」取材メモ

―― ずいぶん細かくメモを取られてるんですね。

くらふと写真とメモが頼りですね。食べながらノートを開くわけにもいかないので、後で近くの喫茶店などに寄って、思い出せるだけのメモを書き出しています。いろんなところに行って、気づいたことはどんどん書いているかんじです。

 写真もiPhoneですけどよく撮るようになりました。まんが目的でなくても、食べたら何か撮っとこうかなと。

わかってくれる人が1,000人に1人でも、ネットならそこまで届く

―― もともとまんがや絵を描かれていたんですか?

くらふと絵を描いたりまんがを描いたりは小さい頃から好きですが、高校のころ大学受験のためにずっとデッサンをやってたので、それが地力になってるとおもいます。

―― ブログのようなネットでの表現活動も以前からされてたんですか?

くらふとはてなダイアリーを開設したのが2004年です。ライトノベルの感想を書いている人たちと交流があって、合同のファンブック(同人誌)にライトノベル風のイラストを描いたりもしてましたが、そっちの方ではあんまり上手くなくて。面白かったんですけど、同じことやってる人がいくらでもいますからね。

―― そこからいまの杉浦茂タッチの画風に変わったのは何かきっかけがあるんでしょうか?

杉浦茂(すぎうら・しげる) 漫画家。1908年東京生まれ。戦後の子供向け漫画「猿飛佐助」(1953年)で一躍人気に。独特のシュールな描線やナンセンスなギャグで、1980年代以降何度も再評価されている。2000年没。

くらふとかなり古い杉浦茂の漫画が実家にあったっていうのはありますね。懐かしのまんが大全集のような本で、杉浦茂の「猿飛佐助」のほかに、鉄人28号、快傑ハリマオ、エイトマンとか、アトム大使とか。アトムが目当てだったのか、親が買っていたのを読んでました。

 これが最初の杉浦漫画体験かな。小学校入るかどうかの、めちゃくちゃ小さいころですね。それで杉浦茂まんがのゆるい、クリーチャー的な絵は好きだったんですけど、決定的になったのは2009年に行った杉浦茂展です。

特別展「冒険と奇想の漫画家・杉浦茂101年祭」展 - 京都国際マンガミュージアム
「レレレのおじさん」に元ネタ? 杉浦茂作品を復刊&企画展 - Excite Bit コネタ

 また改めて「こういうのいいなあ」ということになって、それで「アイドルマスター」(アイマス)を杉浦茂風に描いた絵をニコニコ動画にアップしたのが、2009年4月です。

【手描き】 杉浦茂風アイドルマスター・アイドル紹介 ‐ ニコニコ動画:GINZA

―― そういえばニコニコ大百科お名前がありますね。

くらふとニコニコ動画は、2007年のβのころからよく見ています。いまでもアイマス関係の人のつながりがメインですね。ニコマス的にブレイクしたのは、2010年1月に作った杉浦茂風の紙芝居まんがで、3万再生くらいいきました。

【手描き】 杉浦茂風アイドルマスター・大あばれドームの巻 ‐ ニコニコ動画:GINZA

 ニコニコとかネットで広まることの有難いんは、ネタをわかってくれる人が100人に1人でも1,000人に1人でもいたら、そこまで届く。それがもうすごく嬉しいことですし、もうそれでいいんですよ。

 ウケるために狙ってやっても、そんな狙った通りにはウケないですし、なんというかなあ、自分が好きで作りたいから作る、楽しいから作る、というのが先にありますし。

―― アイマスは好きだけど杉浦茂はよく知らないという人も……。

くらふとそういう人が大多数ですよ。MADっていうのはすごく深すぎるところが面白くて、なかなか理解されないんですけど、いろんなジャンルの中で、何風のなんとかで、さらに要素を何か加えて、ってバリエーションがどんどん生み出されているんで、入り口は自分の知っているものでいいとおもいます。そこから知らないところに引き込むにはどうしたらいいかって。

―― やはり活動を続けていると広がっていくものなんでしょうか。

くらふと杉浦茂先生の誕生日(4月3日)には、誰に頼まれるわけでもなく「誕生祭をやるぞ!」と勝手に動画をアップしてました。自分ひとりでやるつもりやったんですけど、好きな人が他にもいてくれて。

ゆかいじゃのう2010とは (ユカイジャノウニセンジュウとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

 杉浦茂祭りを始めたら乗ってくれる人がいた、っていうのがすごく面白いことなんです。杉浦茂を知っていてなおかつアイドルマスターを知ってる人なんて、普通に考えたらあまりいないですから。

 その2年後に公開したアイマスのオープニングを手描きアニメで作った動画は、かなりいろんな人に見てもらって。いちばんのヒットになりました。

杉浦茂風アイドルマスター オープニング ‐ ニコニコ動画:GINZA

どこかの本が載せてくれるわけでなくても、ネットだったら発表できる場がある

―― 「まおゆう」をまんが化されたのもこのころですね?

まおゆう(魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」) 2009年9月から11月にかけて、2ちゃんねる発表された長編小説。原作者の橙乃ままれによって2010年末にノベライズされたのち、コミカライズ、アニメ化などメディアミックス展開されている。

くらふと「まおゆう」が話題になりだしたんが、2010年の春くらいでしたから。あれはほんとうに面白かったので、ぜひなんとか形にしようとおもったんです。

 自分はまんがを描けるというのもありますし、杉浦茂風という武器があったんで、最初にイメージ図というか、キャラクター一覧というか、全員集合みたいな絵を1枚上げてみて。

 それから、どんくらいかかるか自分でもわからなかったんですけど、やり切るつもりで、最初の4ページだけ描いたんです。

【漫画】「われのものとなれ」「よしなよ」【杉浦茂風】 - ギャラリークラフト

―― 反響はどうでしたか?

くらふと乗っかってくれる人はかなりいたんですが、反応は最初に出したときがいちばんあって、ぶっちゃけたぶん「まあどうせ一発ネタや」とおもわれてたんですよ。「まおゆう」の長さ知ってる人なら、こんなん絶対最後まで描けるわけないってみんなおもいますから。

 僕はやる気だったんで、ほんとにコツコツと書き続けて、2011年の5月末に完結したんです。2010年5月から1年かかりました。

まんが「ゆかいな魔王と勇者」

 これこそネットでしかできない発表というか、どこかの本が載せてくれるわけでなくても、ネットだったら発表できる場がありますから。

 中盤にはアップロードしても見てくれる人はあんまりいなかったですけど、「元のスレは長いので、まんがは読みやすいからこっちから入った」という人が何人かいたのは嬉しかったです。

―― コミカライズならではの工夫もあったとおもいますが。

くらふともとは2chの会話文だけなんで、ストーリーを4ページずつに分けるのは全部自分でやりました。もともとのスレによって内容の濃さに違いがあるので、同じ(原作の)分量でも、まんがにするとやっぱりちょっと量が変わったりするんです。

 キャラデザも自分でやって描いてます。まだ公式(のコミカライズ)が動いてなかったんで(※)。実はただの杉浦茂風だけじゃなくて、細かいところにいろいろな要素が入ってるんです。まずアイマスとは切っても切れない形になってる二次創作なんで、商業的にはできないんですけど、自分のなりの答えとか含めてますし。

※注:2011年6月、7月号から、角川書店『月刊コンプエース』など4誌が連載を開始。

―― 同人誌版も出されてますね。

くらふとネットのTumblrなら無料で読めるんですけど、同人誌版はいちおう公認済みということで、「まおゆう」原作者の橙乃ままれさんに「あとがき」を書いてもらっています。それから、コミカライズ担当の峠比呂さんや七積ろんちさん、まおゆう同人のmayさんからのゲストイラスト、漫画評論家の泉信行さんの解説文も載っています。

 やっぱり完結したからには紙にしたいなあとはおもったんですけど、もうすごいページ数になりまして、上下巻で560ページ。在庫があるんで持ってくればよかったですね。同じものはKindleでも売ってます。

―― その後、ブログで「ゆかい食堂」を掲載するようになっ……

とまあ、くらふとさんのゆかいなインタビューはまだまだ続きますが、ずいぶん長くなってきましたので、また来週といたしましょう。後編をお楽しみに!(後編ではプレゼントを企画しています) ところで、くらふとさんがこの取材の様子をまんがにしてくれました。ぜひこちらもお読みください!
【ゆかい食堂 東京出張編】 番外編・株式会社はてなの東京オフィスでまかないランチを食べる! - ギャラリークラフト

※インタビュー後編「いろいろな活動を続けてきたから、自分のことを知ってくれている人がいた」もぜひお読みください。

まんが ゆかいな魔王と勇者・上

まんが ゆかいな魔王と勇者・上

まんが ゆかいな魔王と勇者・下

まんが ゆかいな魔王と勇者・下