【寄稿】 エンジニアはブログを書いた方が良い、その理由をキャリアの視点から考える

CodeIQ×はてなの エンジニア夏祭り2013 第2夜では、エンジニアにブログを書いてもらうキッカケになってもらえればと、お題キャンペーンを実施中です。この一環として、ITエンジニアがブログを書くべき理由を、CodeIQプロデューサーの サカタカツミ さんに寄稿いただきました。

無名のはてなブロガーが、こんな晴れがましい舞台に出る理由

最初にネタバラシをしてしまうと、エンジニアはブログを書いた方が良い、というエントリーを、まったく無名のはてなブロガーであるが寄稿してあげても良いよという、上から目線で何様な発言を、はてな東京オフィスのとても美味しいランチを取りながらしていたのを、どこでどう間違ったのか、真に受けた人がいて「だったら寄稿してくれてもいいですよ」と依頼メールが飛んできて、今書いているという次第。が、ブログの楽しさを紹介していくブログマガジンを読んでいる人の多くは、もうブログを書いているだろうし、週刊はてなブログというメディアに関心のある人は、ほぼ、はてなブロガーだろう。

その中にいるエンジニアに「エンジニアの皆さん、はてなブログを書くべきです」とお勧めしても「既に書いていますがなにか」と言われるのがオチであり、落語でいうところの枕的な話をしている段階で「お後がよろしいようで」と、楽屋に引っ込むべきなのだろうと思ってもみたが、まあ、それはそれとして、エンジニア夏祭りを仕掛けているプロデューサーとして、エンジニアが、はてな(じゃなくてもいいけど)ブログを書くべき理由のひとつについて、私の専門分野である「転職やキャリア」という視点で整理しながら、書いてみたいと考えている。芸能人ならば、例の渋谷にある、あの会社のブログに書いているよね、というように、エンジニアだったらはてなブログに書いているはずという時代が来たら、寄稿したかいがあったというものです、大げさにいうと。

エンジニア採用は難しいという世間の風潮は本当なのか

数字的なものはインターネットの世界にたくさん転がっていますので、ここでは割愛するとして、企業の採用担当者にとって、エンジニア採用はとても難しいものだと思われているのは事実。理由は簡単で、自分たちにとってはよくわからない人たちを採用するからに他ならない。

エンジニア出身の採用担当者なら話は別なのですが、要は企業の採用担当者の多くは、エンジニアが何をしているかなんて、まるで理解できないと。ですから、自社で採用するのをあきらめてしまって、転職エージェントなどに依頼をして、あとはただ面接をするだけという採用をしている企業もたくさんある。しかし、この面接というのもくせ者で、求職者であるエンジニアと会うことで、その人から受ける印象以外のことはよくわからないと。

だったら、今までにやってきた仕事(=職務経歴書)で判断すれば簡単だし、スキル的なものだったら、私がプロデュースしているサイトで確認したり、その場でテストしたりして、簡単にできそうな気がするけれど、企業の採用担当者たちが知りたいのは、実はそれだけじゃない。そのエンジニアの技術的な関心の領域や、スキルを深めるための活動についても、細かく知りたがっている。それらの多くは、残念なことに、短時間の面接やちょっとしたテスト、職務経歴書などでは測れないものが多い。

非エンジニア領域の採用では、応募者がどういう領域に関心を持っていて、それについて研究しているかという話にはあまりならないのですが、エンジニア採用という場面では、それが意識されることになる。仕事柄、当然といえばそれまでですが。

エンジニアがコミュ障、ではないという顕著なエピソード

エンジニアはブログを書いた方が良い、というエントリーを書くキッカケとなったのは、エンジニアには面接が苦手だという人が多いという採用現場の話を耳にしたから。しかし、よく聞いてみると、エンジニアの面接官がいると話が弾むという。エンジニアはコミュ障だと揶揄する人がいるが、どうやらそうでもない。共通言語を持っていない非エンジニア領域の人と会話するのがスムーズではない、ということのようだ。

典型的なエピソードを紹介しておく。エンジニアがたくさんいる企業の同期が集まって食事会をしたときのこと。経理、財務、営業などの中に、エンジニアもいた。他の同期は、それぞれ周囲の人に「どんな仕事をしているのか」「働く上で何が楽しいか」などの会話をしていたらしい。しかし、一同は、エンジニアには、何を聞いたら良いのか戸惑ってしまったのだという。

そしてある人が口を開いた言葉が「やっぱりアニメや二次元が好きなのですか?」という質問だった。それを聞かれたエンジニアは「何度も質問されるので、もう慣れましたが、僕はそうでもないです」と回答したらしい。あとはアキバに通うのかとか、家でもコードを書いているのかとか、そういう質問ばかり。参加者のひとりは「後から考えると、普通に仕事の話を聞けば良かったのですが、なぜかそんな話になりました」と、後の祭り的な反省をしていた。

振り返ると、インド人にカレーは食べましたかとか、イタリア人にナポリタンは美味しいですかと聞くのと似たようなメンタリティだったという。その仕打ち、わかる、というエンジニアは少なくないでしょ。

共通言語を持たない人とのコミュニケーション手段としてのブログ

面接などの短い時間で共通言語を持たない人と十分なコミュニケーションを取ることは難しい。自分の魅力を相手にアピールする場なのに、それができないなんて悲しすぎる。

そこでブログの登場だ。話すのは苦手だけれど、ブログなら饒舌だという人も少なくないだろう。ジックリと時間を書けて、自らの考えを開陳するのもよし、ライフログ的に興味関心のある分野や技術についてメモを取るのもよし、勉強会などに参加した気づきを書いたり、自分なりのライブラリーとして使ったりと、それこそ使い方は千差万別だが、書き溜めておくことによって、自分のことをちゃんと理解してくださいよというシーン(例えばそれが転職時の面接)において役立つ、はず。

共通言語を持たない非エンジニア領域にいる採用担当者が、エンジニアのブログに興味を持つのかという声が聞こえてきそうだが、大丈夫、持つのだ。ただ、すべてを理解することはできないので、後々、応募者の上司にあたるエンジニアに解読を依頼する。なので、ハッタリやコピペ、嘘や大げさ、紛らわしいブログは看破されるだろう。

採用の現場では、ブログの記述を参考に応募者の特性や志向を見極める作業が行われているケースも、だんだんと増えてきているのだ。ブログに何を書くべきかという話は、検索すればいくらでも指南があるので、そちらを見て欲しい。十分に参考になるノウハウがそれこそ山のようにある。ブログだからといって珍しいこと、変わったことを書く必要はない。セルフブランディングを意識しないなら(有名エンジニアになりたいというなら、別のアプローチが必要)。

ブログを書くのに小難しい理由はいらない、けど

はてなブログを読んでいると、時々感心することがある。どうしてブログを書くべきなのかとか、自分が文章を綴るべき理由が定期的に議論されるからだ。ただ、いつも答えは出ない。当たり前だろう。ブログを書くのに取り立てて理由は不要だ。逆に、自分の考えていること、自分の行動や生活をさらすことのデメリットを考えるべきで、そのリスクに見合うリターンがあるのかと考えると、おいそれと「ブログ書いた方がいいよね」とは勧められない。

しかし、エンジニアに関してだけは、ブログを綴るメリットはあるような気がする。自分たちとは共通言語を持ち得ない人たちとのコミュニケーションの手段として、自分をより良く、そして、より正しく理解してもらうための武器として、ブログは上手く使えばかなりの威力を持つはずだ。

と、ながなが書いてきたが、ブロガーの皆さんには自明の理だろう。ただ、エンジニア採用の領域でサイトサービスをプロデュースする立場の人間からすると、もっとブログを書く人が増えると、エンジニアのアセスメントに正確性が増し、エンジニア自身が(必要とあれば)望む場所に移ることができるのにと、日々思っている。だからエンジニアは『はてな(じゃなくてもいいけど)ブログを書くべき』なのだ。あ、ここは『週刊はてなブログ』だった。ぜひブログは、はてなで書きましょう。

執筆:サカタカツミ(クリエイティブディレクター・CodeIQプロデューサー)