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寺地はるなさん「言葉は使わないと、どんどん枯れていく」【私とブログ Vol.2】

インタビュー story キャンペーン 読書

※キャンペーンは終了しました。たくさんのご応募、ありがとうございました。

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第2回の「私とブログ」お話を伺うのは、ブロガーで作家の寺地はるな (id:haruna0109) さんです。独特の文体で多くの読者から支持されている「悩みは特にありません。」をはてなブログで書き始めたのは2014年の3月。同年の12月に小説「ビオレタ」で第四回「ポプラ社小説新人賞」を受賞し、2015年6月には同作の単行本が発売され、小説家としてデビューしました。

小説家になったあとも「生活は変わらない」と話し、仕事と育児を両立しながら、空いた時間でコツコツと小説とブログを書き続けています。今回のインタビューでは、ブログを始めたきっかけや、文章を書く際に意識していることなどを話してくれました。

また本記事では、2月に発売された寺地さん2冊目の単行本『ミナトホテルの裏庭には』のサイン本プレゼントを実施します。応募方法は記事の最後に書いてありますので、ぜひ最後までご覧ください。

(取材・構成:はてなブログ編集部)

何か目的があるのではなく、ブログで文章を書くことそのものが楽しい

――小説家としてデビューする前からはてなブログを使っていただいていますが、ブログを始めたきっかけを教えてください。

寺地 「ブログが出てくる小説を書こう」と思ったのがきっかけでした。でも“インターネット的”なことにまったく詳しくないから、ブログがどういうものなのか全然分からなくて。初めはいろんな人のブログを読んでみたのですが「やっぱり自分でやってみるほうがいいな」と思って。

――なぜ「はてな」だったんでしょうか。

寺地 作家の朝倉かすみ*1さんがはてなダイアリーを使ってらっしゃって。変……あ、すみません不思議な名前じゃないですか「はてな」って(笑)。それでなんとなく記憶に残ってたんです。見てみたら「シンプル」とか「使いやすい」とかって書かれていたので、じゃあ私でも大丈夫だろうと。

――「変な名前」ってよく言われるので気にしないでください(笑)。ブログを書くこと自体が初めてな“まっさら”な状態で、はてなブログを使い始めた感想は。

寺地 私は有名人ではないですし、読んでくれる人って5人くらいだろうなって思っていたら、想像していたよりたくさんの人に読まれてびっくりしました。はてなブックマークも、最初どういうものなのか分からなくて。「素敵なお母さんになれませんでした。」の記事を書いたとき、すごくたくさんのはてなブックマークが付いたんですが、内容がしょうもないから何で伸びているのか分からなくて、めっちゃ怖かったです(笑)。次に更新するとき「同じようなこと書かなくちゃいけないのかな……」と迷ったり……。

――5人どころか、今では700人近くのユーザーさんが寺地さんのブログの読者登録していて、大人気のブログになっています。寺地さんはどんなときに「ブログを書こう」と思いますか?

寺地 私「これは言いたい!」と思い立ってブログを書くことがなくて。通勤中や時間が空いたときに、スマートフォンでブログの編集画面を開いて、頭に浮かんだことを書いています。何か目的があって書いているというよりは、書くことそのものが楽しくて。音楽が好きな人って、聴くだけじゃなくて、自分も歌ったりするじゃないですか。それと同じ感覚で、読んだり、書いたり、そのものが楽しいんです。

――たしかに寺地さんのブログからは「書いていて楽しい」という気持ちが伝わってきます。今まで書いた記事で、気に入っている記事があれば教えてください。

寺地 2015年の秋に書いた「標準仕様」という記事です。小説を書き始めたきっかけを書いています。文章を書いていると、いい意味でも悪い意味でも書いている人の反応を気にするので、文章の体裁を整えているうちに、どうしても書き始めたときの自分の気持ちと遠くなることがあるんです。この記事はあまりズレがなくて、「素」に近い状態で書けたかなと満足しています。

――ブログを今まで書いてきて、なにか記憶に残っている体験はありますか?

寺地 「ビオレタ」がポプラ社小説新人賞をいただいたとブログで報告したら、ものすごくたくさんの方が「おめでとう」と祝ってくださったことです。普段、やりとりしている方以外のぜんぜん知らない方も「おめでとうございます」とコメントをくださって。それがとってもうれしかったですね。

――他のブロガーさんとは交流されていますか?

寺地 ブログでマンガを描かれている「トウフ系」のあゆお (id:kaishaku01)さん。ポプラ社の月刊誌に載せた「ビオレタ」の短編スピンオフで、マンガを描く男の子を主人公にしたんですけど、あゆおさんにメールでマンガを描くことについていろいろインタビューしました。よく読んでいるブログは、いぬじん(id:inujin)さんの「犬だって言いたいことがあるのだ。」です。文章そのものの温度がすごく独特で、リズムも私の中にはないものだなあと。あとは、ブログの読者になっている方はほぼ全員好きですね。

小説は「さみしかったから」書き始めた

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――寺地さんはブログを始める前から小説を書いていたんですよね。いつごろから?

寺地 「小説」というものを書き始めたのは2012年の夏です。私、子供のころから、文章が好きというより言葉そのものが好きで、既存の小説を別の作家の文体で書き直してたりしてて。暗い子ですよね(笑)。文章を読むときもそういうのが気になっちゃって、小説を読むときも、物語そのものを追うというよりは、作家さんの言葉選びのクセやセンスを感じることが多いです。そういうふうに、文章を読んだり、書くのは「好き」でしたが「得意」ではありませんでした。

――文章が「得意」ではない中で、小説を書こうと思ったのはなぜなんですか?

寺地 シンプルにいえば「さみしかったから」です。結婚を機に佐賀から大阪に出てきたので近くに友達がいなくて。夫は忙しいから自分の話に付き合わせるわけにいかないし、子どもはまだ小さいから会話が成立しないですし。そうしているうちに、自分の中に「言葉」が蓄積されていって。すごく大事な「言葉」ではない、些細なことばかりなんですけど。「言葉」は使わないとどんどん痩せていくというか、枯れていくというか、いざというときに「言葉」が出てこなくなるんです。

そんなときに、いつも読んでいる文芸誌に「◯◯賞募集」という文字を見つけて「あ、書いてみたらいいのかな」って。書いた小説を周囲の人に読んでもらうのはなかなか難しいけれど、賞に出したら少なくとも1人には読んでもらえるかなと。でも、小説の書き方を誰に習うわけでもなく、学校に行ったわけでもないので、素養というものがなくて。とにかく自分は文章を書くのが下手だと思っていたんです。あ、今はそんなに思ってないんですけど……。

――よかった! 今もそう思っていたらどうしようかと……!

寺地 今は大丈夫です(笑)。とにかく、どうやったら書くことに慣れるんだろうと考えて。それはやっぱり、人の目を意識して、たくさん書いて、たくさん読むしかないと思ったんです。もし「小説を書く」より先に「ブログを書く」という手段に気付いていたら、そちらだけになっていたかもしれないです。

――賞にはどれくらい応募したんでしょうか。

寺地 受賞させていただくまで、10回ほどでしょうか。初めて書いた作品は、一次審査も通らなかったです。4回目の応募で、初めて最終に残ったけどダメで。「最終には残ったので来年頑張ればいけるかな」と思い、入賞目指して1年間頑張って書いたんですが、また落ちてしまったんです。2回続けて落ちたからもうダメだと思ったんですけど、ほかの賞にも挑戦してみようと思い、応募したうちのひとつが賞をいただけて。

――受賞が決まったときの心境は。

寺地 ホッとしましたね。諦めなくてよかったなあと。漠然と小説を書き続けていいんだろうか、私、30代後半だし……と不安に感じていたので。小説を書くのに年齢制限はありませんが、いつまでも夢みたいなことを追っていいんだろうかと。だから、挑戦するとしても3年と決めていました。3年経って箸にも棒にもかからなかったら、「小説家」になれる可能性はないということだろうと。

受賞が決まったときには決意から2年半ほど経っていたので、図々しいけど「やっとか! 」と(笑)。たぶん、3年経ったあとも「40歳までは!」とか、何だかんだ理由を付けて書き続けたと思いますが。

――ご家族も喜ばれたのでは?

寺地 それが、夫には最初、小説を書いていることすら言っていなくて。「何書いてんの?」と聞かれたときに「ちょっと」て答えたら「んー」とだけ返ってきて。それ以上聞かれなかったので「あ、いいんだ」って。夫に伝えたのは、最初に最終選考に残ったときですね。書き始めて半年くらい経っていました。さすがに言わないとダメかなと思い伝えたら「それ、応募数どれくらいあんの」「1000くらい」「へー。すごいやん」とだけ。

――なかなかクールな反応ですね。妻が実は小説を書いていて、賞の最終選考に残ったって聞いたら、ビックリしますよね。

寺地 そうですよね、マイペースで面白い人なんですよ。受賞が決まったときも。「へーよかったやん」くらいで。あまり喜んで「どうなん?どうなん?」みたいに迫られるよりはいいかなと(笑)

――2014年12月に「ポプラ社小説新人賞」を受賞して1年が経ちましたが、どんな変化がありましたか?

寺地 変化はね、特にないんですよ。夫もそんな感じの反応だし、仕事を辞めたわけでもないので、小説を投稿していたころと変わりないです。働いて、家事をして、子供が寝たら少しずつ小説を書き溜めています。

――2月15日には、2作目となる『ミナトホテルの裏庭には』が発売されましたね。

寺地 実は前回の『ビオレタ』は小説を書き始めのころに書いたものなんです。賞に出しそびれて、出しそびれて、ようやく1年半経ったころに「出してみるか」と思い立ち応募した作品で。今回の作品はデビューしてから書いたものなので、書いた時期は離れている2作なんですけど、内容に似たところがありつつも、反転させたような連続性が出たなと思います。

――寺地さんの小説って、設定が不思議ですよね。

寺地 そうですね、ファンタジーではなくて、でも現実から一歩ズレた世界観だと思います。日常的に空想癖があるので、“好きなもの”を詰め込んでいくと自然とそういう世界ができるんです。今回登場する「ミナトホテル」は、大阪にある大正時代にできた元ホテルだったビルがモデルなんです。元ホテルだったと聞いて「もし今もこの場所で商売が続いてたとしたらどんなホテルなんだろう」と空想したのが、設定の発端ですね。

――読んでみて「休むこと」や「適切な休息」の大事さを感じる作品だと思いました。そういった内容を書こうと思ったきっかけは?

寺地 世の中には寝てない人が多すぎると思うんです。Twitterを見ているといつ寝てるんだろうって思う方がいらっしゃったり、実際私の友人も過労で倒れたことがあって。疲れてるんだろうなあ、寝たほうがいいと思うけどなあという気持ちがまず第一にありました。

あとは、前回は「主人公と同じ若い女性の方に向けた作品ですね」と編集者の方がおっしゃっていたので、今回は女性だけでなく他の方にも読んでほしいと思い、若い男の子を主人公にしました。男女ともに、幅広い年代の方に読んでほしいです。

はてなブログは「星」。強い光もあればやさしい光もある

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――ブログと小説を書いている寺地さんが、ブログを書く上で意識していることはありますか?

寺地 小説はもちろんですけどブログも、常に私のことを全く知らない人や初めての人が読むということを忘れないようにしています。人の名前や固有名詞は「分かるかな?」と気をつけながら書いたり。ブログを書き続けていると「みんな当然知ってるよね」みたいなテンションで書いてしまうことってありますよね。でもそれって、初めて読む人にはつまらないだろうなと思うので、読む人への配慮は、最低限意識したいです。

――小説に書くことと、ブログに書くことの違いは。

寺地 どちらも自然に書いているので文体とかは同じなんですけど、やっぱり小説は虚構の世界。ブログは日記ほどではないですけど、より自分に近い話になります。ブログに書いてあることは、全部100%私の話でウソを書いたりしないですし。友達の話をするときは誰か分からない程度にボカす、とかはしますけど。思いついたことを書いているだけなので、役に立つことは一個も書いてない。親戚には「言葉の面白さだけでやってるところあるよね」ってブログにダメ出しされました(笑)

――わりと辛辣なダメ出しですね(笑)。

寺地 でもたしかにそうだなと。「悩みは特にありません。」というアホみたいなブログタイトルにしたのは、そんなに難しいことは書きませんよという意思表示でもあるんです。書く楽しさだけで続けているので、ブログをきっかけにこうなりたい、こうしたいというのは、ないんです。無意味なものとか無駄なものがたくさんあるほうが楽しいし、有意義さだけを追求していくとつまんなくなると思っています。

――では、ブログで得た経験を小説に活かすことはありますか?

寺地 あります。2回目に、最終選考に残って落ちたころに、小説を書くのが楽しくなくなってしまって。ちょうどそのころ、原稿用紙10枚程度の文量で、お題に沿って短編小説を書く「短編小説の集い「のべらっくす」」の第0回が始まったんです。そういう条件で小説を書いたことがないから挑戦してみたら、すごく楽しくて。小説の楽しさを思い出させてくれたブログとして、すごく思い入れがあります。

あと『ミナトホテルの裏庭には』は「のべらっくす」に2回目に参加したときに書いた「咲いている」を長編にしようと思って書き始めたんです。物語には“ふさわしい長さ”というものがあると思い、最終的には設定を変えて全面的に書き直したんですが、同じセリフがちょっと出てきたりします。

――やっぱり、読者の反応って気になりますか?Webって紙と比べて情報の速度が速いから、小説やブログへの反応もすぐに届きますよね。

寺地 最初は「つまらなかった」という反応が嫌でしたね。でも、みんなに好いてもらったり、受け入れてもらうことはできないから、次第に「それは当然だ」と思うようになりました。私を傷付けたいわけではないのだと。そう考えられる下地ができたのは、ブログへのコメントで“訓練”したからだと思います。ブログをやっていてよかったことのひとつですね。

――寺地さんにとって、はてなブログはどういう場所ですか?

寺地 「星みたいだな」って思います。星って、地上から見ると近くで隣り合ってるように見えますが、実際はすごく離れていて。あと、いろんな意見の人がいろんな情報を発していて、それが私の目にはとても輝いているように見えるので「星」。強い光もあればやさしい光もあって、それぞれがとてもきれいだと思います。

――最後に、寺地さんがブログを書き続ける理由を教えてください。

寺地 やっぱり、言葉を使うのが楽しいんだと思います。小説を書く前に感じた「さみしさ」は、書くことで友達を作りたいという種類の「さみしさ」ではなくて、自分のなかの言葉が枯れていく「さみしさ」だったんです。小説もですけど、ブログを書くことで定期的に言葉を出す習慣が生まれたのは、すごく自分の役に立ったと思います。ブログは、私が言葉を発するひとつの場所になっていますね。

寺地はるな (てらち・はるな)(id:haruna0109)

寺地はるな

2014年3月に「はてなブログ」を開始。 代表的な記事は「素敵なお母さんになれませんでした。」「そういうこともあるよね。…」など。

寺地はるなさん新刊『ミナトホテルの裏庭には』サイン本をプレゼント

記事中でお話を伺った寺地さんの新刊『ミナトホテルの裏庭には』(ポプラ社)のサイン本を3名様にプレゼントいたします。応募方法は、この記事をブックマークするだけ。よろしければTwitter連携をオンにして、記事のご感想などをコメントしてください。

ミナトホテルの裏庭には

ミナトホテルの裏庭には

応募期間 2016年2月19日(金)~2016年3月3日(木)
賞品・当選者数 寺地はるな『ミナトホテルの裏庭には』(サイン本) を3名様
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抽選と発表 応募期間終了後に厳正な抽選を行い、当選ユーザー様の登録メールアドレス宛に送付先情報等を確認するメールをお送りします(取得した情報は本賞品送付用途以外には使用いたしません)。なお、送付先は国内に限らせていただきます。
発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。

「私とブログ」今までの記事はこちら

みなさんにもっとブログのある生活を楽しんでもらうためにスタートした、インタビュー企画「私とブログ」。ブログを始めて嬉しかったことや苦労したこと、続けられた理由などなど、はてなでブログを書いているユーザーさんの生の声をお届けします。

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*1:小説家。著書に「肝、焼ける」「田村はまだか」など。2005年9月から2015年3月まで、はてなダイアリーでブログを更新(現在は閉鎖)。