フミコフミオさん『神・文章術』刊行。「書きたいという気持ちが起こったら、深く考えずに勢いで書いてしまおう」

※キャンペーンは終了しました。たくさんのご応募、ありがとうございました。

ブログ「Everything you've ever Dreamed」のフミコフミオ(id:Delete_All)さんによる著書第2弾『神・文章術 圧倒的な世界観で多くの人を魅了する』が2021年12月に刊行されました。これに合わせ、フミコフミオさんに本作への思いを寄せていただきました。記事末には抽選で10名様に書籍が当たるプレゼントのお知らせもあります!

この記事は、はてな×KADOKAWAの「ブログ書籍化プロジェクト」で出版される書籍のプロモーション記事です。

「書こう!」という気持ちが沸き起ったらストレートに書くようにすること

こんにちは。フミコフミオです。去る12月16日にKADOKAWAさんより『神・文章術 圧倒的な世界観で多くの人を魅了する』という本を出しました。ブロガーである僕がブログ生活のなかで身に付けた「書くことスキル」と「書くことによって人生をより良いものにするコツ」のすべて入れた文章術の本です。

本作を執筆するにあたって念頭に置いたのは、書くという体験自体の楽しさを伝えること。書くことは楽しい。その一方でハードルがあるのも事実。だから僕自身がどうやってそのハードルを越えて書き続けてきたのか、後からやってくる人たちのために、ハードルの高さを調整して下げるつもりで本書を書いた。

たとえば僕はブログを書いただけで単調な会社員生活が一変した。仕事や上司への不満。将来への不安。人生における悩み。日常の小さな善きこと。書いたことはつまらないことばかりだ。だが、書かなかったらつまらないことは忘却されて流れていくだけだ。塵も積もれば山となるは数少ない真理である。書けば、つまらないものであっても蓄積されて、財産になる。実際、僕はつまらない日常を書いてきただけだ。「つまらないこと書いているなよ」と心優しい読者からしばしばコメントされるが、本当につまらないことを書いているのだから仕方がない。

だが、つまらない日常の出来事を書いただけで思考や感情が整理され、満たされた。その結果、こうして著作を出版しこのような場所で文章を書いている。すべて、書くことから始まっている。「書け!」と強制はしない。書くは自発的な行為だからだ。書きたいという気持ちが行動に移してくれるのを見守ることしかできない。そのうえで、「書くことはいいことばかりですよ」と控え目にセールスしつつ、「スポーツジムに通ったり、芸術を習ったりするよりもはるかに手軽ですよ」と比較商法でやんわり売り込むのが営業マンである僕の流儀である。

正直にいって書くことは多少時間と手間がかかる。頭も使う。仕事を終えたあとで書くとなるとかったるい。加えて、書くことの楽しさはごく個人的なもので、「100連ガチャが無料!すげえこれで最強のデッキが作れる」的な、わかりやすい楽しさではない。一方で利点がないと受け入れてもらえないのも理解している。だからあえて「書くことは楽しいから皆もやろう」「こうすれば書けるようになる」という説法に加えて、「仕事に役立つ」「人生が変わる」といった現実的な利点について、僕の経験にもとづいて書いてある。

もうひとつこだわったのは再現性。なるべく具体例を挙げて書くとともに、読者各位が再現できるようにしてある。細かい技術ではなく、書くことに対する姿勢のつくり方、書くものを自分の中に構築する方法について頁を割いている。細かい技術を積み重ねていく方法もあるが、細かい技術にとらわれると、そこにフォーカスしすぎてしまうという弊害がある。せっかく書くことのハードルを「どーん」と下げてようとしているのに、ちまちまと細かい技術の話をするのは、コースの上に小石をばらまくようなものである。細かい技術やルールは後回しでいい。とにかく書くこと。そして書くことを通じて得られるものを体験すること。それらを積み重ねていくことが継続のコツなのだ。

つまり、書くことを中心にしたサイクルを作り上げてしまって、細かいことは後から考える。サイクルさえ構築してしまえば、書く際に直面するであろう、あらゆる問題、たとえば技術的な問題や「飽き」という気持ちの問題は簡単に乗り越えられる。作家ではない一般人の僕が書き続けてこられた経験が保証する。

詳しくは本を読んでいただくとして、僕が声を大にして言いたいのは、「書きたいという気持ちが起こったら、深く考えずに勢いで書いてしまおう」ということ。さあ書こう。道具は?どこで?どうやって?何を?迷ったらすぐにネットで検索して調べてしまう。「書こう!」なんて考える人は基本的には真面目な人が多い。その真面目さが災いして事前準備をきっちりやってしまうのだ。それが近道だと思うから。だが事前調査は書くことへのハードルを高めてしまいかねない危険性があるから避けよう。

「書こう!」という気持ちが沸き起ったらストレートに書くようにすること。『神・文章術』がその気持ちを爆発させて書き始めることの助けになってくれればこの上ない喜びである。最後になりますが、書きたいという気持ちが起こったら、はてなブログでストレートに書き始めると良いと思う。今の僕があるのは、2003年の年末に「はてな」のアカウントを作ったときにはじまったのだから。最後は宣伝のようになってしまったがフミコフミオは義理深い男なのである。ではまた。(所要時間27分)

この記事をお読みいただいた方の中から抽選で10名様に、この記事でご紹介した『神・文章術 圧倒的な世界観で多くの人を魅了する』をプレゼントします。以下の応募要項をご覧いただき、ぜひご応募ください。たくさんのご応募、お待ちしています!

応募要項

応募期間 2022年1月17日(月)~2022年1月23日(日)23:59
賞品・当選者数 『神・文章術 圧倒的な世界観で多くの人を魅了する』10名様
応募方法 この記事をはてなブックマークに追加 してください。このエントリーをはてなブックマークに追加
抽選と発表 応募期間終了後に厳正な抽選を行い、当選者には、はてな(support@hatena.zendesk.com)から登録メールアドレス宛てにご連絡します。取得した情報は本賞品送付用途以外には使用いたしません。なお、送付先は国内に限らせていただきます。

※最近、当選のお知らせメールに返信がなく、当選が無効となるケースが多発しております。ご応募の際は登録メールアドレスのご確認をお願いします。

※この記事は以下の取り組みで出版された本の紹介記事です

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編集:週刊はてなブログ編集部

追記

公開時の内容に一部誤りがありました。2022年1月20日16時58分に当該箇所を修正しました。ご指摘いただいたユーザーの皆さま、ありがとうございました。

ブログを書くために「概念A」を理解しようと頑張る。アジマティクス・鯵坂もっちょさんが数学ブログを書く理由

はてなブログのユーザーに、自身とブログについて語っていただく【「ブログを書く」ってどんなこと?】シリーズ。今回は、2016年からはてなブログ「アジマティクス」で数学に関する解説記事を書いている鯵坂もっちょ(id:motcho@motcho_tw)さんに登場いただきました。

鯵坂もっちょさんはブログの記事ごとに1つ、わかりやすい図やGIFアニメを使って数学のさまざまな概念を解説しています。それらの記事ははてなブックマークでも人気を集め、「内容がわからなくても面白い」というコメントも。

鯵坂もっちょさんが「数学ブログ」を続けるモチベーションはどのようなものか、そして書き始めた理由について、寄稿していただきました。

鯵坂もっちょです。「ブログを書くこと」について何か書いてください、とのことです。

ではここでそれを完全に無視して素因数分解の一意性について説明しましょう。とかやったら怒られるかな。怒られるよな。

でも数学系の界隈ってそういうことをやっちゃう人、結構いそうではある。

……やめよっかこの話。

私について

「アジマティクス」というおもしろ数学つまみ食いブログをやっています(「おもしろ」は「数学」を修飾しています)。

www.ajimatics.com

どんな感じはこの先を読んでいただければわかるとして、とりあえずここでは複素数の掛け算をご覧ください。

いいですね〜

「ブログを書くことについて」と言っても、このブログは基本的には「一記事ごとに一つ、数学の概念を解説する」スタイルなので、「ブログ」という言葉から想像されるものとは少しズレているかもしれません。

つまりは「日記」ではありません。なのでこのブログには自分自身のことについてはほとんど書いていないんですね。

まあそりゃそうです。数学の面白いところが知りたくてやってきた人は「鯵坂もっちょ」に興味がありません。

「誰々が言ってたから正しい/間違い」が存在しないのが数学のいいところの一つですが、とはいえ中にはそういう判断をしてしまう人もいるでしょう。

そういう理由もあって、私は私のことについてアジマティクスにほとんど書いていません。誰が書いたかで判断されたくないので、という思いもあるんでしょうね。知らんけど。

ただ、他の数学ブログと比べるとけっこう日記っぽい記事もあるのがアジマティクスの特徴とも言えます。

ハワイに旅行して海がきれいだったので水平線までの距離を計算してみた」や「ルービックキューブができなすぎて悔しいのでその構造を考えてみた」のような現実世界との関わりを多めにやっていて、それらは他の数学ブログにはあまり見られない要素なのではないかな、と思います。

そんな感じでやっている人です。自己紹介でこれ以上何か言うことある? 既婚です。まだ手足をジタバタさせることしかできない元気いっぱいの双子の0歳男児に乳首をバカスカ殴られ股間をバカスカ蹴られています。助けてくれ。

ブログを書く理由

さて。

鯵坂もっちょさんがブログというものを書く理由について聞かせてほしい、とのことで考えてみましたが、おおまかに4つあることに気づきました。

そのうち1つはかなりきれいな理由。1つは普通にきれいな理由。もう1つはまあまあきれいな理由。残り1つは、あまりきれいではない理由です。

「きれい」ってどういうことを言っているのかは、たぶん読めばわかります。

理由1(かなりきれい)

ブログを書く理由の1つ目は、文章としてアウトプットしたほうが自分の理解が深まるから、です。きれいですね。

これは「何かを説明する、解説する、わかりやすく伝える」ということに挑戦したことのある人なら総じて心当たりのある話なのではないかと思います。

「数学の解説ブログ」などと標榜しているからにはある程度、そのとき扱おうとしている概念(概念Aとします)をわかりやすくかみ砕いて伝えることができなければなりません。

そして、概念Aをわかりやすくかみ砕いて伝えられるようになるためには、自分の中で概念Aがある程度かみ砕かれた形で理解されていなければなりません。

ということで、「ブログを書くために」というモチベーションでもって概念Aを理解しようと頑張る、という行動が発生するのですね。

まあ普段ボーッと生きてても「よし、中国剰余定理を理解しよう」ということにはなりませんから、こうやってモチベーションが外部から与えられるのはとても助かることです。

中国剰余定理

そしてこれは大いに「ブログを書く」ということの理由にもなり得るんですね。

なので、あまり大きな声では言えませんが、ブログを書き始める段階ではあまりちゃんと理解していなかった、ということすらあるんですね。

この辺のことはあんまり理解してないけど書き進めてるうちに必要に応じて理解してくるやろ、と未来の自分を信用しているわけです。

「明日の自分に任せて今日は寝よう」みたいな話ですね。死亡フラグやん

もちろん、これはあまりおすすめできるやり方ではありません。書き進めても結局理解が及ばなかった場合、その記事はボツになることが多いです。

私の下書き欄にはそのようないきさつでボツになった記事たちの怨念が渦巻いています。

でもこのやり方にはいい面もあって、「とりあえず書き始めることができる」んですね。逆に「ちゃんと理解してから書き始めよう」と思っているといつまで経っても書き始められません。

数学に限らない話だとは思いますが、一つのことを理解すると、それを足掛かりにすることができるようになり、そしてそれを足掛かりにしないと見えてこなかった問題意識を抱けるようになります。そうすると今度は、その問題をちゃんと理解してから書き始めよう……と思うようになり、以下無限ループです。

どこかで割り切ってエイヤで書き始めることも大切なのだと思います。怨念たちには悪いですが。

理由2(普通にきれい)

2つ目のきれいな理由は、数学の面白い話を知ったらみんなに伝えたくなっちゃうから、というものです。

2017年から「数学デー」という名前のイベントを運営しています。数学好きとかそうじゃない人とかが集まって、数学について話したり問題を解いたりゲームしたりするイベントです。

詳しくはこちら↓

sites.google.com

数学デーではさまざまな話題が出ます。当然、私の知らない話もたくさん出るわけで、その中で抱く「これは面白い!」という感情は「ブログに書こうかな」に直結しています。

例えば以下の記事なんかがそうです。これらの記事ではこの話を知ったときの興奮がそのまま文章にされています。

やばい連分数

ていうか書いとかないと忘れるしね。

どれだけ面白くて興奮した話であっても、書いておかないと必ず忘れます。書いても忘れます

ときにはダラダラと1ヶ月くらいかけて書いていることもあるのに、それでも忘れるんですね。

でも書いてあればいつでも思い出せます。

理由3(まあまあきれい)

3つ目の理由は、ググって出てくるような数学解説は初学者を突き放していることが多いから、もっとストレートに言うならそういう解説記事は大概わかりにくいから、というものです。

つまり、そういうものが多いので、それなら俺がもっとわかりやすい解説やったろうやないか、と腕まくりをしているわけです。

例えば「行列式」について、Wikipediaの冒頭ではこんな書かれ方になっています(以下は例として挙げただけであり、内容を理解しようとする必要はありません)。

数学における行列式(ぎょうれつしき、英: determinant)とは、正方行列に対して定義される量で、歴史的には行列が表す一次方程式の可解性を判定する指標として導入された。幾何的には線型空間またはより一般の有限生成自由加群上の自己準同型に対して定義され、線型変換に対して線形空間の拡大率ということができる。行列の可逆性を判定する指標として線型代数学における最も重要な指標の一つと見なされている。

どう思いますか? これ。

多くの読者には「わかりにくい」「何を言ってるのかわからない」という感想になるのではないかと思います。特に「行列式」ってなんだかよくわからないけど、よく耳にするからどういうものかだけでも触れておきたいなぁ〜、くらいの人にとっては。

そういうことではないのですね。Wikipediaの記述が悪いと言っているのではない。つまりは対象読者が違うのです。

このWikipediaの記述は明らかに「行列式をすでに知っている人」に向けて書かれています。

ところが、行列式を知っている人だけが「行列式」と検索するのかといえば、当然そうではありません。それこそ上述のようになんとなく知っときたい、くらいの人も少なくないはずです。

2016年にアジマティクスを始めた当初は、そういう人たちの受け皿になるくらいのレベルの数学記事がネット上には本当に少なかったのですね(今だと数学系YouTuberの方なども多いのでだいぶ状況も良くなってきてはいるように感じます)。

それが3つ目の私がブログを書く理由、もとい、これに関しては書き始めた理由でもあります。

一度、読者の方から「数学用語で検索した結果の一番上が全部アジマティクスになればいいのに」といううれしい反応をいただいたことがあります。

それはさすがに大きすぎる目標かもしれませんが、心意気としてはそんな感じになれたらいいなあ、くらいでやっております。


「行列式」という言葉が気になった方は、以下をご参照いただければ楽しいと思います。

www.ajimatics.com

理由4(決してきれいではない)

最後の理由は、まあ、なんというか、こんなこと言うのも本当にアレなんですが、承認欲求です。

私は数学解説ブログを書く者として、「わかりやすく物事を伝える」ということに関してはいっぱしの自信があります。

単純に「これをどう書けばわかりやすくなるだろうか」と知恵を絞ること自体が好きだったりもします。

そしてありがたいことに、記事を読んで「わかりやすい」という反応をいただくことも珍しくありません。本当にありがたいことです。

これが、美味いのですね。

いや本当に。おいしいおいしい。いくら食べてもお腹いっぱいにならない。

これはもうほとんど麻薬です。

最近ちょっと承認欲求切れてきたしアジマティクスでも一本キメとこうかな、みたいな。

ね。きれいじゃないでしょ。

「ブログを書く理由」として、大手を振って答えられる回答ではない。

「あなたがブログを書く理由を教えてください」→「承認欲求を満たすためです」って、ちょっと、ねえ。いや、でも逆に大物っぽいな。俺大物かもしれん

もちろん、これはどちらかといえば些末な理由であって、ブログを書く理由として大きいのは理由1と2と3です。

まず数学の面白い話を知り(理由2)、でも知ったばかりであまり深く理解できてはないので理解しようと頑張り(理由1)、調べてみると案の定巷間には初学者にやさしくない記述が多いのでじゃあ俺がいっちょやったろうかと筆を執る(理由3)。

こんな流れであることが多いですね。もうこの時点でいろいろな目的は達成されているので、承認欲求に関しては、満たされようが満たされなかろうが別にいいかなといったところです。満たされたらそれはそれでラッキーだね、くらいのもので。

承認欲求が第一の理由になってしまってはまずいと思っています。書いた記事があまり読まれなかったというだけでブログを書くモチベーションを失ってしまうことになりかねません。

もし承認欲求がブログを書く最大の理由になっていたとしたら、1年も持たずに私はブログをやめていたことでしょう。

麻薬はほどほどにしましょう。

「書く理由」まとめ

まとめましょう。私がブログを書く理由は、

  1. 文章としてアウトプットしたほうが自分の理解が深まるから
  2. 数学の面白い話を知ったらみんなに伝えたくなっちゃうから
  3. ググって出てくるような数学解説はわかりにくいことが多いから
  4. 承認欲求

基本的には以上の4つです。

これらはとりもなおさず、「あなたが」ブログを書く理由にもなると思います。

誰しも、とは言いませんが、専門分野や興味のある領域の存在する人は少なくないでしょう。

その分野について、全然理解できない! と落ち込むのではなく、ブログに書きましょう。

面白い話を知ったけど忘れてしまいそう……と気を揉むのではなく、ブログに書きましょう。

巷にあふれる解説がわかりにくすぎる!と憤るのではなく、ブログに書きましょう。

承認欲求に関してはいったん忘れましょう。

そんな感じでもって、長いことブログをやってます。鯵坂もっちょでした。

自分のことを書いただけですが、これらの理由付けが皆さんのブログを書くモチベーションにでもつながってくれれば、とても喜ばしいことだと思います。

おわりに

まいったな。「ブログを書く理由」だけで5,000字近くあるとは思わなかったな。別にそんな大層な気持ちで毎回ブログ書いてないんだけどな。

素因数分解の一意性の解説いらないですか?

本当に大丈夫ですか?

しますね。

マイナスでも分数でもない普通の1, 2, 3, 4…という数を「自然数」と呼びますが、すべての自然数はただ一通りに素因数分解ができます。

例えば10なら2\times5、28なら2^{2}\times7、476568901なら23\times59\times149\times2357といった具合です。

「ただ一通りに」というのが大事で、なにか一つの自然数n

n=\clubsuit\times \diamondsuit
n=\heartsuit\times\spadesuit

などのように2通りに素因数分解されるということはありえません(順番の違いは同じものとみなす)。

これは例えば28は2^{2}\times7ですが実は3\times5でもあるんですよ~ババーン! ということはありえない、ってだけのことを言っています。当たり前ですね。

ごくごく当たり前のことに思えますが、これはそれ自体証明を要する事実であって、つまり全然当たり前ではありません。ちょっと調べてみるとわかりますが、その証明自体も結構大変で、初学者が一朝一夕にできるものではないのです。意外なことです。

で、この「素因数分解がいつもただ一通りにできる」という性質を「素因数分解の一意性」といい、「自然数は素因数分解の一意性を備えている」ということになります。

てことは、素因数分解の一意性とはいつでもかんでも成り立つものではなく、自然数の性質にすぎないんですね。

そうなると「素因数分解の一意性の成り立たないような世界(体系)」もありうるのでは? という問いを立てることができるわけですよ。

3の倍数+1

ここで「3の倍数に1をプラスした数しか存在しない世界」というのを考えてみましょう。

3の倍数とは0, 3, 6, 9, 12, 15, ...なので、つまりこの世界には1, 4, 7, 10, 13, 16, ...という数だけが存在していることになります。

そしてこの世界では、4や10、25などといった数はいわば「素数」のようなものになります。

なぜだかわかりますか? なぜなら、これらの数は「それより小さい数の積に分解できない」からですね。

4、10、25は自然数の上ではそれぞれ2×2、2×5、5×5と素因数分解されますが、今考えている世界には「2」も「5」も存在しません。3の倍数+1の数ではないですからね。

なので"この世界においては"、4や10や25、そして22、34、46なども、それ以上分解できない「素数みたいなもん」になります。

逆に、16、28、40、49などは、この世界においても分解できる合成数です。

これらの数それぞれの"素因数"分解は4×4、4×7、4×10、7×7となり、4も7も10もこの世界に存在しているので分解できる、というわけです。

この「3の倍数+1世界」における素因数分解を一覧にしてみたのが以下です。範囲は1から97まで、「p」はそれ以上「3の倍数+1の数」の積に分解できない"素数"を表します。

さて。ここまでの流れで想像のついている方も多いかもしれませんが、この「3の倍数+1世界」こそ、実は「素因数分解の一意性が成り立たない世界」なのです。

実例を見てみましょう。素因数分解の一意性が成り立たない、その最小の例が「100」です。

100はまず「4×25」と書くことができます。しかし、それに加えて「10×10」とも書くことができるんですね!(それはそう)

前述の通り、4も10も25もこの世界における"素数"です。これはすなわち「100は2通りに素因数分解できる」ことにほかならず、それはまさしく「3の倍数+1世界は素因数分解の一意性が成り立たない体系」であることにほかなりません。

あんなに当たり前かのように思われた素因数分解の一意性も、実は「自然数」という特殊な状況設定があってこそのものだった、ということだったんですね。

この「当たり前だと思ってたことが実は全然当たり前でもなんでもない」というのは数学をやっていると頻繁に発生して、そういう事に気づかせてくれることこそが、数学の魅力の一つだったりもします。

……みたいな感じのことをもうちょっと厳密にして、もう少し高度な話題(モノイドとか)にも触れた記事を今度アジマティクスでやろうと思っていますが、わかりません。怨念の沼底に沈むかもしれません。

というわけで今回は素因数分解の一意性についてのお話でした。数学ってとっても自由でいいですよね。同じくらい、ブログも自由に書けばいいんじゃないかと思います。うまいこと話がつながりましたね。

それでは今回はこのへんで!

著者:鯵坂もっちょid:motcho

数学ライター&ブロガー。自ら「数学のファン」と名乗り、数学の魅力をさまざまな切り口で伝える。数学好きが集まってダベるだけのイベント「数学デー」支配人。大規模数学イベント「ロマンティック数学ナイト」では、ほかのプレゼンターとは異なる毛色のプレゼンを得意とする。共著に『笑う数学』『笑う数学 ルート4』(共にKADOKAWA)、監修に『OKRA』(正進社)がある。

ブログ:アジマティクス
Twitter:@motcho_tw


同シリーズの過去の記事を読みたい方はこちらから!

blog.hatenablog.com

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データ駆動野球観戦のすすめ - お笑いとラジオ、データ分析が野球の楽しさを教えてくれた【わたしの偏愛】

はてなブログは、「書きたい」気持ちに応えるブログサービス。ささいな日常や忘れらない出来事をつづるブログだけでなく、「推しへの思い」や「好きな映画の感想」「お笑いの分析」など、趣味や好きなものへの思いを言葉にするブログも数多く見られます。

こうしたブロガーの皆さんの情熱をお伝えすべく、週刊はてなブログでは「好きなもの・こと」についてつづるはてなブロガーに、その思いを語っていただく連載わたしの偏愛を実施しています。

第7回となる今回は、「Lean Baseball」のshinyorkeさん (id:shinyorke) に「データ駆動野球観戦」について寄稿いただきました。大の野球ファンであり、データサイエンティストでもあるshinyorkeさんは、野球観戦の際も電卓を叩き、「あのスコアが意味するところ」を徹底的に解析するといいます。野球×データという、マニアックな視点を得るきっかけ。意外な驚きをくれるデータ分析手法など、shinyorkeさんの提唱する「データ駆動野球観戦」のあれこれをつづってもらいました。

データ駆動野球観戦メインカット

はじめまして。shinyorke(しんよーく)と申します。

私は7年ほど前から「Lean Baseball」というブログで、ソフトウェア・エンジニアリングやデータサイエンス、自分のキャリア、そして野球について記事を書いています。

野球好きが高じ、2018年から約1年半、スポーツ、特に野球のデータ解析・分析の会社のリードエンジニアとして働いていた時期もありました。現在はニュース・報道ベンチャーのエンジニア兼データサイエンティストとして働いています。

私にとって、野球を楽しむうえでの軸は、数字やデータです。打率、防御率などはもちろん、選手がプレーすることで刻まれる、さまざまな数字を読み解き、自分なりにあれこれ考え仮説を立てるのは、なんとも奥深い世界です。この記事では、私がライフワークとして追求してきた「データ駆動野球観戦の面白さと奥深さ」をつづりたいと思います。

野球好きになったきっかけは「新庄剛志」「お笑い」「深夜ラジオ」

私が野球をエンターテインメント・趣味として意識したのは1995年頃のこと。元々野球を見るのが好きな母や弟に付き合い、テレビで観戦するようになってからでした。

そして、どっぷりと野球にはまるようになったきっかけは、阪神タイガースにありました。当時阪神タイガースに在籍していた新庄剛志選手のダイナミックな守備・強肩に驚き、藪恵壹選手が時折見せる、完封勝利へと至るすさまじいピッチングに圧倒されたのです。

加えて、桧山進次郎選手。桧山選手は新庄選手と双璧をなす強打者で、当時の阪神タイガースの主軸でしたが、この新庄、桧山両選手が二人してリーグ最多三振を競う(97年シーズン)といった、とほほなトピックも含め、阪神タイガースを中心に野球がどんどん好きになっていったのです。

また、当時は『松村邦洋のオールナイトニッポン(ニッポン放送)』や『伊集院光 深夜の馬鹿力(TBSラジオ)』など、大の野球好きで知られるお笑いタレントの深夜ラジオをよく聴いていたことも、私の野球好きに影響しました。

彼らのラジオではプロ野球の話題がよく出ますが、「阪神タイガースだけ、三角ベースでプレーさせてもらったら最下位脱出できるのでは?」など、野球ネタにはめちゃくちゃ笑わせてもらいました。90年代の阪神タイガースは優勝とはほど遠い、いわば暗黒期にあったチームで、それゆえ、阪神タイガースをいじるトークがすごく多かったのでしょう。こうしたネタトークをもっと理解して笑いたい、という一心で阪神タイガースの情報を追いかけるうち、いつしか私は阪神タイガースファンになっていたのです。

私の人生と野球観を変えた『マネー・ボール』

データ駆動野球観戦PCのイメージカット

新庄選手の大ファンだった私にとって、毎朝届くスポーツ新聞の成績欄を眺めるのも、大きな楽しみの一つでした。「新庄が今日5打数3安打ぐらい打ったら打率.250になる!」といった具合に、新庄選手の浮沈を予測していたことをよく覚えています。新庄選手だけでなく、気になる選手の打率や防御率を計算するのがシーズン中の日課でした。今にして思えば、この日課が「データ駆動野球観戦」のはじめの一歩だったのでしょう。

その後、2000年から私は社会人になり、一人暮らしをはじめてからも野球はよく見ていました。忙しくなり、テレビで野球を見る時間こそ減りましたが、『すぽると!(フジテレビ)』などの深夜に放送されるスポーツニュースで、日々の野球トピックを追いかけたり、iモードのプロ野球速報やニュースを通勤電車内で読みながら、文字で野球を楽しんだりしていました。

そして2001年、新庄選手(もちろんイチロー選手も)が米メジャーリーグに移籍することになり、私の興味も少しずつメジャーリーグに広がっていったのです。新庄、イチロー両選手の影響で、この頃はニューヨーク・メッツやシアトル・マリナーズの選手の名前ばっかり覚えてました(メッツの捕手だったマイク・ピアッツァとか、マリナーズの二塁手だったブレット・ブーンとか)。

とはいえ、まだまだメジャーリーグさっぱりわからん!という感じだったこの頃、私はあるテレビ番組に出会います。とんねるず・石橋貴明さんがホストを務めるトーク番組『MLB主義(TBS)』です。番組名のとおり、メジャーリーグにまつわるトピックを深掘るこの番組でメジャーリーグのあれこれや、貴さんならではの「マニアックで奥深いエピソード」を見ては興奮していたのです。

そして2004年のある放送回で「盗塁はしなくていい、送りバントなんて、もってのほか」という「新しい時代の野球」と銘打たれた特集が組まれました。当時の私は送りバントや細かい走塁で守り勝つ、いわゆる「スモールベースボール」が大好きだったので「そんな野球絶対面白くない、無理やろ!」と憤慨しつつ、チャンネルを合わせました。しかし放送をすべて見終わった後、「なんだこの野球!面白いじゃん!!」と全身に稲妻が落ちるような衝撃を受け、番組で紹介されたある本を放送翌日に買ってすぐに読んだのです。

番組で紹介された本の名前は『マネー・ボール』。後にブラッド・ピット主演で映画化もされたのでご存じの方も多いと思いますが、「統計・データ分析がいかに重要で、ゲームの勝敗に影響するか」をこれでもかと描いた同書は、野球のみならずスポーツ全般に大きな影響を与えました。そして、当時25歳だった私の人生も決定づけることになったのです。

マネー・ボールを自分ではじめる

『マネー・ボール』は貧乏球団だったオークランド・アスレチックスのGM、ビリー・ビーンがデータ分析を駆使し実現させた快進撃を描いたノンフィクション作品です。そして、ビリー・ビーンがデータ分析の指針としたのが、野球データ分析の基本的な考え方・概念である「セイバーメトリクス」でした。この概念の信奉者となった私は、

  • 打率や防御率だけでなく、「出塁率」「長打率」といった「地味だが統計的に意味ある数字」を見たり計算したりするようになった
  • 試合を見ながら、「今の盗塁は有効か」「そもそも、バントではなく打たせることが有効な戦術では?」など、プレーの一つ一つを考えるようになった
  • オンライン野球ゲームに勝つため、『マネー・ボール』のようなやり方でチーム選びや選手起用を決めたりするようになった

など、野球の楽しみ方もだいぶ変わりました。

なお、その後、球場に観戦に行く際も、必ず電卓を持っていくようになりました。データを見て電卓を叩くことで、「この投手とこの打線ならば、おそらく凡退が続くな。今のうちにビール買ってこよう」など、データによる意思決定ができるようになったのは、うれしい副産物でした(笑)。

こうした野球とデータに向き合う日々は、私のキャリアにも影響を与えました。野球を見ては電卓を叩き、オンラインゲームに勝つために分析を続けるうちに、「いつの日か野球データ分析を仕事にできるといいな」という夢を持つようになっていったのです。

自分なりに分析と研究を行い、その結果をブログに書き、エンジニアやデータサイエンティスト向けのイベントで登壇発表を繰り返すうちに、ある企業から連絡をもらいました。スポーツデータを解析・提供し、選手育成やチーム運営サポートなどをビジネスとするその会社に、CTO(最高技術責任者)として加わらないか、というものでした。断る理由のないオファーです。ブログで野球やデータサイエンスにまつわる情報を発信するようになってから、3年。野球エンジニアになりたい、という私の夢は、正夢になったのです。

プロ野球をはじめ、本物の野球でデータ解析や分析をした経験は、私にとって非常に貴重なものでした。

今すぐ楽しめる「データ駆動野球観戦」

データ駆動野球観戦電卓のイメージカット

野球を見ながらブラウザの電卓を使って選手を見ています

さて、私がどっぷりとはまった「データ駆動野球観戦」ですが、この楽しさをぜひ皆さんにも味わってもらいたいです。日米のプロ野球チームで実践されるレベルのデータ解析・分析を(主にデータの入手という観点で)一般の方がするのはなかなか難しいのですが、「新聞やインターネットで入手できる数字」を使った分析でも、野球はもっと面白く見られます。

例えば、私は野球をデータで見るとき、以下のように数字を眺めます。

  • 基本的には投手も野手も「三振」「四球」「本塁打(被本塁打)」にまつわる数字を追いかける
  • 上記の数字を「投球回数」「打数」などで割り、解析対象の選手が「どんな選手か?」を知る
  • 「三振数÷四球数」「四球数÷三振数」といった計算をすると、選手の安定感がわかる

試しに、今とんでもない活躍を見せている、オオタニサンこと大谷翔平選手の数字を眺めてみます。大谷選手は(この記事を執筆した)2021年7月4日現在、 273打数で「打率.278、30本塁打、66打点」という記録を残しています。なお、三振は87個、それに、36個の四球を選んでいます。このデータを簡単に分析してみると……

  • 30本塁打はメジャーリーグ全体1位で、87三振は全体19位と、いずれの数字もリーグ上位にランクイン
  • 36四球はメジャーリーグ全体27位
  • 「打数÷三振」で「三振のしにくさ(AB / Kといわれる比率で、数字が大きいほど、三振しにくい選手と評価できる)」を見ると「3.13(273÷87)」、本塁打王争いのライバル、ブラディミール・ゲレーロJr.選手は「4.90(294÷60)」で、「大谷はゲレーロJr.より三振しやすい」とわかる
  • 「三振÷四球」で「一つ四球を選ぶたびに何回三振するか」を見ると、大谷選手は「2.41(87÷36)」、ゲレーロJr.選手は「1.05(60÷57)」で「大谷は一度歩くと2三振、ゲレーロJr.は1三振する」とわかる
  • 総じて、オオタニサンは「ホームランめっちゃ打つけど他の選手より三振がしやすい」ことがわかる

こんな情報が読み取れます。「三振が多い」という事実はわかりやすいですが、ポイントになるのは、四球の少なさです。「三振が多くて四球が少ない」とは、よくバットを振るタイプの選手であると解釈できます。つまり、大谷選手はどんなボールでもバットを振っていく積極性がある、言い換えると、ちょっとした“粗さ”もあると読み解けます。このように、データを読み解くと破竹の勢いを見せる大谷選手にも意外な一面がある、と見えてきます

私は野球を見ながら、PCや手元のスマホで成績を調べて電卓を使うことがよくあります。今回の大谷選手は日本中が注目している選手なので、“意外な一面”がわかりやすいのですが、「めったに見ないチームの、聞いたことのない選手が突然出てくる」といった場合、こうした分析を行うと、その選手の特徴が大まかにつかめるので便利だったりします(AB / Kが大きいと、わりと雑な選手なのかな、四球をよく選ぶけど、慎重な選手なのかな、など)。

データ分析と野球で感動とお笑いを

私は今、データ駆動野球観戦を楽しみながら、

  • 機械学習・データサイエンスの力を使って「野球AI」を開発
  • 野球AIで実現できることを、ブログや登壇を通してアウトプット

といった活動をしています。最近では「もしもTOKYO 2020侍JAPAN24名をAIが選出したら」というテーマでブログを書いた結果、多くの反響と笑いをいただきました。予想だにしなかった突然のT-岡田選手代表選出は、結果を見たとき自分でも驚いてしまいました(誤解のないようお伝えしておくと、データサイエンス的観点でもT-岡田選手は優れた選手なので、真面目な結果でもあります)。

こういった活動を通じていつの日か、石橋貴明さんのYouTubeチャンネル『貴ちゃんねるず』の『貴ちゃんスポーツ』や、『S-PARKチャンネル』内の『MONDAY BASEBALL』など「よく見ているYouTubeチャンネルに野球データ分析者枠で登場する」という野望を抱いています。

私の野球ブログや登壇発表には、必ずと言っていいほど「選手・野球へのリスペクト」と「ちょっとしたお笑い」を落とし込んでいます。前者は野球の素晴らしさを教えてくれた選手や球界への恩返しで、後者は野球の楽しみ方を教えてくれた深夜ラジオやテレビ番組、インターネットへのオマージュであり感謝です。そしてなにより、「野球とデータって、こんなに面白い!」と、皆さんにどんどんお伝えしていきたいのです。

今後ももちろん、「データ駆動野球観戦」をテーマに発信を続けていきます。その結果、皆さんが「野球って面白い!」と感じてくださったら、これ以上の喜びはありません。

著者:shinyorkeid:shinyorke

shinyorke

報道ベンチャーのシニアエンジニアとして、Webサービス開発・企画およびAI・データサイエンスの仕事をする傍ら、ブログ『Lean Baseball』でエンジニアな話題からキャリアそして人生を変えた野球データサイエンスのことをつづっています。普段着はUK RockのバンドTシャツで、idである「shinyorke」という名前はRADIOHEADのトム・ヨークが由来になっています。
ブログ:Lean Baseball
Twitter:@shinyorke


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