ブログを最後まで読んでもらい、さらに回遊してもらうための5つのTIPS【小川卓のブログ分析入門 最終回】

ブログ運営で大切なことは、公開した記事がきちんと読まれることです。ウェブアナリストの小川卓さんによるブログ分析の入門。最終回は、記事を最後まで読んでもらう「閲覧率」と、他の記事へ読者を誘導する「回遊率」の向上についてです。

前回の記事では、読了率やスクロール率を計測する方法を紹介いたしました。

15分で設定完了! Google Tag Managerで記事の「読了率」と「スクロール率」を取得しよう【小川卓のブログ分析入門 第2回】 - 週刊はてなブログ

筆者も長年、自分のブログや他メディアサイト等の分析でこうした計測を行ってきました。しかし大切なのは、計測結果を受けた上での「分析」と「改善」です。これを繰り返すことで「閲覧率」と「回遊率」を上げる重要なポイントが見えてきます。最終回ではこの2つをテーマに紹介いたします。

閲覧率
記事が最後まで読まれた割合。該当記事の滞在時間や、前回紹介した読了率を元に算出
回遊率
記事が読まれた後に、他の記事も読まれた割合。離脱率(該当記事を最後に閲覧した数÷該当記事のページビュー数)と直帰率(該当記事だけを見てサイトを離脱した回数÷該当記事への流入数)の低い方が、回遊率は高いと言えます

滞在時間・直帰率・離脱率は、Google アナリティクスの 「行動>サイト コンテンツ>すべてのページ」のレポートで確認可能です。

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さて、本題に入る前に1つ注意点を。ここで紹介する方法に関しては、まず「読まれる記事を書いていること」が前提です。どんな手法を使っても、記事そのものの内容を変えることはできません。

ただし、せっかく読んでもらいたい記事を書いたのに、意図せず読みにくい状態になっていたとしたら。

ここで触れているのは、そんなもったいない状態を解決するためのTIPS集です。どのブログ(あるいはメディア)でも使える手法ですので、ぜひ活用してみてください。

TIPS1: 画像は「セーブポイント」見出しは「ロードポイント」 適切に配置しよう

前回紹介したスクロール率やヒートマップのツール*1を利用すると、見出しや画像が表示されているタイミングではスクロール率が下がりにくく、記事から離脱されにくいということが分かります。

なので、文章だらけにするのではなく、画像や見出しを適切な場所へ追加して記事にメリハリをつけることが大切です。

画像は、文章を読んで少し疲れてきたときや、頭の中を整理するための休憩地点です。RPGでいうなら、一度「セーブ」をしておこうという感じです。そして見出しは、次に何が来るかを把握し、ここからまた読んでいくぞ! と意気込む「ロード」のようなものです。「画像はセーブポイント、見出しはロードポイント」と覚えておいてください。

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第1回で書いた記事でもそのあたりは意識しており、スマホでいえばスクロール1.5画面分につき1回は、画像あるいは見出しが目に入るようにしています。

皆さんもブログを書いて読み直すときは、文章が続き過ぎていないかをぜひ確認してみましょう*2

TIPS2:何分で読める? 記事の「読了時間」を提示する

読了時間を表示するメリットは、大きく分けて2つです。1つは、読み始める前に「これくらいの長さなのか」と心の準備をしてもらうというもの。「5分くらいの記事なら今から読めそう」といった感じですね。もう1つは、長すぎて今から読む時間があるかは分からないけど、気になるからはてなブックマークに登録して記事をストックしていただくというものです。

多くのブログにおいて、ここ5年くらいでスマホの閲覧比率が増えているのではないでしょうか。PCの場合はスクロールバーでなんとなく長さを把握できましたが、スマホに関しては逆に分かりにくくなっています。そこで、読者への親切という意味も込めて、予想読了時間を入れておくと良いでしょう。

筆者も以下のように、記事に読了時間を入れております。

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実装方法などは、以下の記事を参考にしてみてください。

コピペでOK!はてなブログで記事の読了時間の目安を表示させてみた! - すずろぐ

TIPS3:回遊促進のために、過去記事のリライトあるいは新規記事へ誘導する

第1回の記事で書いた通り、皆さんのブログにも、データを見てみると意外とアクセス数がある過去の記事が存在するかと思います。

しかし、多くの人に参考にされているにもかかわらず、記事に書いた情報が古くなっている可能性もあるかもしれません。その際にオススメしたいことが2つあります。

1つは「記事の内容自体に加筆をする、あるいは一部書き換える」ということです。検索流入の減少を気にされる方もいるかもしれませんが、元の内容に対する補強であれば悪い影響が出ることはまずないでしょう。また、もう1つの方法としては、「アップデートした記事を書き、元の記事からリンクを貼る」ということです。

例えば、以下は筆者が書いた2008年の記事ですが、最近までアクセス流入で常にベスト10に入っていた記事でした。

アクセス解析:訪問回数(セッション数) - Real Analytics (リアルアナリティクス)

しかし、ここで書いてある定義は現在正しくありません。そこで2015年に新しい記事を書き、元の記事からリンクをしました。

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これにより、3つのメリットがありました。

1つは、「最初に書いていた情報が古くなり、現在では誤った情報として読者に伝わっていたが、新しい記事を書くことで解決できる」という重要なことです。古い情報が載っている記事を読み、それを参考に業務などで誤った判断をしてしまっては、意図せず他の人に迷惑をかけてしまうことになります。

次に「元記事の離脱率・直帰率を減らせた」ということです。より良い記事に誘導することで、回遊を促すことができます。上記の例の場合、離脱率は90%近くから60%台に下がっています。

そして3つ目は「新しい記事への流入元になる」ということです。新しい記事を書いた最初の1カ月の一番の流入元は、元記事でした。

これにより、最初に読んでいただける読者数を増やすことができ、結果的にはてなブックマークの増加にも繋がっています。

TIPS4: 記事の最初に関連記事へのリンクを入れる

記事の最初に関連記事へのリンクを入れることも大切です。特に「前編」「後編」で記事が分かれる場合や、連載のように何度かシリーズが続くパターンの場合は、最初に関連記事へのリンクを入れておくと、そちらもあわせて読んでもらえる可能性が高まります。

筆者のブログですと、以下の記事が分かりやすいかと思います。

ソシャゲ分析講座 基本編(その3):「継続率」を理解する - Real Analytics (リアルアナリティクス)

こちらの記事の冒頭では、以下のように記事の最初に他の連載記事へのリンクも入れています。

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リンクを入れることで、「せっかく読むなら、シリーズの途中からではなく最初から読んでみたい」という読者のニーズに応えられると同時に、複数記事を読んでもらうきっかけにもなります。

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データから見ても分かる通り、この「ソシャゲ分析講座」シリーズは直帰率が65.24%と、ブログ全体の81.27%より低いことが分かります。

特にこの施策は、PCでより顕著に効果が出ます。PCの場合、多くのブラウザは「タブブラウザ」のため、とりあえず別タブで開いていこうということができます。それによって、開いて後で読んでもらうという行動が促進されやすいのです。スマートフォンのタブブラウザは非常に限られており、(筆者だけだとは思わないのですが)わざわざ別ウィンドウで開いておくという行動をとる方は少ないのではないでしょうか?

先ほどのデータをデバイスごとに分けてみると、しっかりその傾向が出ていました。

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直帰率は、タブレットとPCの場合は62.82%、モバイルの場合は75.35%となっています。

TIPS5: 記事の最後に最も重要なリンクを1つだけ入れる

一番効果が高いのはどのTIPSか? と聞かれたら、筆者は今から紹介するこのTIPS5を挙げます。テーマは「関連記事」について。ここで大切なポイントは2つあります。1つは「記事の直後」であるということ、そしてもう1つが「1つだけ入れる」ということです。

それぞれの意味を確認していきましょう。「記事の直後」というのは、関連記事へのリンクは「記事の最後」ではなく、「記事の本文が終わった直後」に入れてくださいということです。

はてなブログの場合は、記事の終わりの方は以下のような形式になっていることが多いのではないでしょうか?

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スマホでもだいたい同じで、以下のようなレイアウトになっています。

  • 「記事本文」
  • 「ソーシャルボタン」
  • 「はてなブックマークのコメント」
  • 「関連記事」

しかし、前回紹介したスクロール率やGoogle アナリティクスのデータを見ると分かるのですが、「関連記事」のリンクはほとんどクリックされません。

それはなぜか? 多くの方が、ソーシャルボタンが表示されると、それより下にスクロールしてくれないためです。ここでスクロール率ががくっと下がります。

皆さんも無意識にしているかもしれませんが、「ソーシャルボタンが出てくる ⇒ 本文の終わり ⇒ それ以上スクロールする必要がない」という図式が成り立つためだと筆者は理解しています。そのため、他の記事へのリンクは、記事本文の直後である必要があります。これにより、関連記事が目に入る可能性もぐっと高まって、ブログからの離脱を減らすことができます。

今回の連載で第2回目の記事を書いたときに、第1回目の記事からリンクを貼りました。以下のような形です。

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見ての通り、記事の本文内にリンクを入れています(次回予告の部分ですね)。その結果どうなったか? 数値を確認してみましょう。

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青い線が「第2回への記事のリンクがなかった期間」、オレンジ色の線が「第2回への記事のリンクがあった期間」になります。見ての通り、直帰率が下がっています。平均では85.14%から72.22%と改善しています*3

13%の減少なので、こう見ると大したことはないと思われるかもしれません。しかし、本文内にリンクを入れることで、同じテーマに対する興味感心が高いユーザーを新しい記事へ数百も誘導することができました。また単純に、「続きを読みたい!」と思った読者にとっても、リンクを探す手間を削減させることができます。

さて、もう1つの観点「1つのみ入れる」にも触れておきましょう。名前の通りですが、記事の下部に複数の関連記事を貼ることはオススメしません。

たしかに、複数載せることで次に読む記事を選んでもらえるというメリットもあります。しかし筆者の分析の経験上、読者がかえって迷ってしまい、クリック率を下げてしまうというケースを見掛けます。読者にとって最も関連性が高い記事を1つだけ厳選してあげると良いでしょう。

筆者が昨年手掛けた、あるニュースメディアにおける分析・改善の事例を紹介します。こちらのサイトでは、記事の最後にあるソーシャルボタンのさらに下で、オススメ記事をテキストリンクで5つ紹介していました。しかし、ほとんどクリックされていない状態だったのです。そこで、最も重要なリンクを1つだけ記事本文の下に持ってきて、画像付きのリンクにしたところ、クリック率が8倍も増えました。

まとめ

記事を作る際は、ページビュー数を増やす、最後まで読んでもらう、直帰率や離脱率を下げる、ということだけが目的になってしまってはいけません。大切なのは、読者に不便をかけないということです。

記事が読みづらい、興味はあるのにどこにリンクがあるか分からない、最新の正しい情報を知りたいのに内容が古くなっている……といった問題を解決するためにも、ぜひ今回紹介した方法を皆さんのブログにも取り入れてみてください。読者も筆者もハッピーな関係を作れる1つのきっかけになれば幸いです。

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執筆者プロフィール

小川 卓(おがわ・たく) @ryuka01

Taku Ogawa

ウェブアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパン等で勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてウェブ解析の啓蒙・浸透に従事。株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。
主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Googleアナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。

*1:筆者はヒートマップツールを提供している会社のChief Analytics Officerでもあります

*2:もちろん文章だけというスタイルもありですが、一般的にはということで

*3:リンクを追加する以外は第1回の記事は修正していません