ティモンディ・前田裕太さんが保護猫の預かりボランティアを続けるワケ。「猫との生活が自分を成長させてくれる」

前田裕太さんトップ画像
楽天市場のお買い物を通じて動物保護団体を支援できる「動物保護団体支援プログラム」と、はてなブログが共同で、ペットとの絆や思い出を募集する特別お題キャンペーン #ペットを飼うこと を実施中。このお題に関連して、保護猫の預かりボランティアを始めたお笑いコンビ・ティモンディの前田裕太さんにお話を伺いました。

保護された動物たちには、保護団体をはじめさまざまな人の手が関わります。期間限定で動物を預かり、新たな家族との出会いに向けて「人馴れ」を進めるボランティアもその一つ。

今回は、お笑い芸人として活動する傍ら保護猫ボランティアにも携わり、テレビ番組などでその様子を発信している前田裕太さんにインタビューを行い、保護猫と過ごした日々のエピソードや自身の変化、さらに保護活動やサポートに対する思いについて伺いました。

※この記事は楽天グループ株式会社によるSponsoredContentです。

“エア猫”を飼ってイメトレ。初めて猫を迎えたときの話

── 前田さんは保護猫の預かりボランティアを始める前に、「ノエル」と「リオン」という2匹の子猫をすでに迎えていますね。そもそも、猫を飼い始めたきっかけは何だったのでしょうか?

前田裕太さん(以下、前田):昔から動物が好きで、いつか飼いたいなとは思っていました。ただ、お仕事がほとんどなかった時期には自分の生活だけで精一杯で、動物を飼う余裕なんてとてもなくて……。

前田裕太さんインタビューカット前田裕太さん:1992年生まれ、神奈川県出身。2015年1月、高岸宏行さんとともにお笑いコンビ「ティモンディ」を結成。

前田:2019年ごろから少しずつお仕事をいただけるようになって、これなら少し家賃を上げてもよさそうだと、2021年ごろにペット可の家に引っ越しました。飼う動物は、生活リズムみたいなところで波長が合いそうだと感じた猫に絞って、「年内に猫を飼う!」と決意の書き初めもしました(笑)。

── ノエル、リオンとのとの出会いはどのようなものだったのでしょうか?

前田:動物と触れ合うロケで親しくなったブリーダーさんに「猫を飼いたいと思っている」と話したら「高齢で引退を考えているブリーダーさんがいるんだけど……」と相談されて。そのブリーダーさんから引き取ったのが、ラグドールの「ノエル」でした。

スコティッシュフォールドの「リオン」は、ノエルを迎えて半月ほどした頃に、別のブリーダーさんから「なかなかもらい手がつかない子がいる」と紹介されました。ただ、家にはノエルがいる。猫同士の相性もあるので、テスト的に同居させてみる期間を設けました。結局、こちらの心配もなんのその、2匹ともすぐに打ち解けたようで、胸をなで下ろしましたね。

リオンちゃん前田さんに抱き抱えられてご満悦のリオン(提供:前田さん)

── 猫を飼うにあたり、ペットショップを見に行ったりは?

前田:していません。「保護猫がいい!」というこだわりもありませんでしたが、僕が当時住んでいた高円寺は保護猫カフェがあったり、野良猫をたまに見かけたりもして、ペットショップ以外で猫と出会う機会の多い街でした。それに、個人的にも、日本で暮らす猫をとりまく環境には課題があるなとは常々感じていて。できればそういった猫たちや、猫を保護する人たちを助けたいと思っていたんです。小さなことかもしれないけれど、自分の意思表示として、お店から購入するのではなく、保護団体やブリーダーさんから受け入れる形を考えていました。

── 実際に猫を迎えるまでは、どのような準備をされましたか?

前田:仕事柄、家を空けることも多いので、まずは「本当に猫を飼えるか」を考える必要がありました。そこで引っ越してからすぐに猫用のケージやキャットフード、トイレなどをそろえて、「猫がいるつもり」で生活することにしてみました

── “エア猫”を飼っていたんですね!

前田:そうなんです(笑)。準備期間が冬だったので名前は「ふゆ」として、実際にごはんを用意したり、ブラッシングはこんな感じかな……とイメージトレーニングをしたり、泊まりがけの仕事が入った時のお世話のシミュレーションをしたり、自分の生活に猫を溶け込ませる方法を考えていました。命を預かるわけなので、そのくらいの覚悟は必要かなって。余談ですが、イメトレの一環として当時「たまごっち」も頑張って育ててみたんですけど、やっぱりちょっと違うなとなりました(笑)。

── (笑)。実際にノエルとリオンを迎えて、想定よりも飼うのは大変だと感じましたか?

前田:あまり感じませんでした。爪を切りそびれていて、うっかりシーツに引っかけて破られてしまったり、といったトラブルはありますが、その程度のことです。

ペットを飼っていて大変だと感じる瞬間って、圧倒的に「トイレ」だと思うんです。食事は用意して、あとは食べてもらえればOKですが、トイレは定期的に猫砂を取り替えなければならないのでメンテナンスが大変です。でも、今は便利な全自動トイレ(猫がトイレを終えると自動で掃除してくれるトイレ)なんかも売られていて、ペットを飼う上での物理的な「大変さ」はどんどんなくなっていると思います。水も自動給水器があるし、食事も決まった時間に補充される機械がありますし。ちなみに僕は、食事の用意だけは飼い主として自分でやると決めています(笑)。

ノエルちゃん前田さんの腕枕で眠るノエル(提供:前田さん)

「ペットと飼い主」の関係を抜け出して向き合えば、絆が芽生える。保護猫むぅ、ぷりゅとの思い出

── その後、保護猫の預かりボランティアにも挑戦され、その様子を日本テレビの『嗚呼‼みんなの動物園』で発信されていますね。ボランティアをやってみようと思ったきっかけを教えてください。

前田:ノエルやリオンを迎えたときに「ブリーダーさんの高齢化」という課題を知ったことは、その一つかもしれません。ブリーダーを引退、廃業する方がいるとして、そのときそこで飼われていた猫たちはもらい手がいない。自然の環境下で生きてきた猫でもないし、そもそもブリーダーさんのもとで猫が子どもを産むのは人の都合でもあります。それをまた、人の都合で「もう飼えないから」と手放してしまうのは、猫があまりに不幸だし、人間側としてもお世話の責任をまっとうしないと、と感じていました。

預かりボランティア企画の撮影は、すごくハードでもあるんですよ。24時間、トイレとお風呂のタイミング以外はカメラが回っている状態で……。

それでもこの企画に継続して出させていただいている理由は、保護猫という存在をもっとたくさんの方に知ってほしいから。猫を飼いたいとペットショップへ足を運ぶ方のなかには、保護猫という選択肢があることをまだ知らない方もいるかもしれない。そういった方に「保護猫も新しい家族を探しているんだ」と伝えたいです。

前田裕太さんインタビューカット

── 番組では「むぅ」と「ぷりゅ」の2匹を預かり、譲渡会で新たな家族と出会うまでの様子が放送されていました。保護猫は心を開くまでにも時間がかかる印象ですが、実際にいかがでしたか?

前田:むぅは初めて預かる保護猫ということもあって、大変だと感じるところも多かったです。むぅもぷりゅも「エキゾチックショートヘア」という種類の猫で、顔が平面的なため、涙や目やにをためて病気にかかることがないよう「顔拭き」が必須なんです。でも猫は顔を触られるのが苦手で、どうしても嫌がるのを押さえて手入れしないといけないこともあって。

近づくだけで逃げてしまうようになるとお世話もできないので、僕が危険な人間ではなく、むぅと親しくなりたいと思っていることをいかに伝えるかは、ノエルやリオンのとき以上に気を使いました。3カ月の預かり期間のうち、2カ月くらいは距離を詰めるための期間に費やしました

ぷりゅちゃんソファの上でまどろむぷりゅ(提供:前田さん)

ぷりゅは、むぅの預かりを経験していたこともあり、仲良くなるのに時間はかかりませんでした。ただ、むぅと同じくぷりゅも人と接する機会が少ないまま育ってきたので、できるだけ人と過ごす時間を心地よく感じてもらえるように心がけました。そのおかげもあって、ぷりゅは僕のそばで過ごしてくれることも多かったですね。

人間もずっと一人でいると、他の人がいる前でどう振る舞えばいいか分からなくなりますよね。僕も2015年や16年の、ずっと家でネタを書いて、公園で高岸(宏行さん、相方)とキャッチボールだけして帰るみたいな日々が続いていたとき、他の人との絡み方を忘れちゃいましたから。「当たり前から外れたときにどう振る舞っていいか分かんない」というのは、保護猫も人も一緒だな、と。

── おっしゃる通りですね。自宅にいた「先住猫」の2匹と保護猫は、どのように関わっていましたか?

前田:猫同士の「社会」のようなものはやっぱりあって、それは僕ら人間が関知できるところではなく、ノエルやリオンが保護猫の社会性を育ててくれた面が大きいと思います。

元々いる2匹はある日突然現れた新入りに対して警戒もするし、自分のテリトリーに入ってこられたら「シャーッ!」と威嚇もします。僕も警戒心の強いタイプなので、2匹の振る舞いにはシンパシーを感じましたが(笑)、猫たちは猫たちで僕を介することなく関係を築いていってくれました。テンションが上がり過ぎて手が出てしまった保護猫に対して「その力加減はダメ」と教えてあげたり、保護猫と先住猫の1匹が仲良くなったら、もう1匹も心を許し始めたり。相性ももちろんあるとは思いますが、猫同士で育んでいた関係性もあるのかなと感じますね。

そして、預かりボランティアを経験して感じたのは、保護猫に限らず仲良くなるためには相手と真摯に向き合うことが必要だということ。ノエルやリオンとはすぐに仲良くなれたので意識することがあまりなかったのですが、むぅやぷりゅと過ごして初めて猫との距離の取り方や詰め方をつかめたように感じます。

それから、猫を飼う上で「ペット」という認識を取り払った方がいいと思うようにもなりました。ペットと聞くと甘えてきていつまでもかわいくて……というイメージがあるし、もちろん関係を育めばそんな存在になってくれるかもしれませんが、逆にそのイメージが強過ぎると、実際の行動とのギャップに打ちのめされてしまうというか。でも、「ペットと飼い主」の関係を抜け出して向き合えば、どんな子とでも絆は芽生えるなって。

むぅちゃんカメラ目線のむぅ(提供:前田さん)

── 前田さんの猫に対する愛情がうかがえます。でも、預かった猫が馴れてくるなかで、そのまま引き取って飼おうと思ったことはありませんか?

前田:預かった子みんなを僕が引き受けることもできなくはないと思うんです。でも、僕が預かりボランティアをしていてすごくよかったなと思うのは、番組でむぅやぷりゅを見て「こんなにかわいい子がいるんだ」と、譲渡会に足を運んでくれる人が増えたこと。

ファンの方からいただくお手紙にも「テレビで観て譲渡会に足を運んでみたくなった」というものがあって。保護猫たちと、新しい家族やサポーターになるかもしれない人をつなぐ役割になれているのは純粋にうれしいですね。ただ、そうはいっても、猫を送り出したあとは寂しいので、しばらく気持ちの整理をする時間が必要なんですけど……(笑)。

前田裕太さんインタビューカット

飼えなくても猫と関わる方法はたくさんある。保護猫たちのために、今できること

── 先ほど「ブリーダーさんの高齢化」という話も出ましたが、預かりボランティアをしているとブリーダーさんや保護団体と関わる機会も増えてくると思います。皆さん、どのような悩みを抱えていることが多いと感じますか?

前田:ブリーダーさんも保護団体の方も、みんな動物が好きで、その幸せのために活動をされているんですよね。でも、リソースにはどうしても限界があって。

保護施設も増えているけれど、お世話が行き届かなかったり、保護の手からこぼれ落ちてしまっていたりする子もまだいるのが現実です。それから、その子たちを全て救えたとしても、全部の子にもらい手が見つかるわけではありません。私財を投げ打って施設を営まれている方もいますが、その善意に頼りきるシステムはあまり健全じゃないというか……。きっとどこも何かが「足りない」状態のなか、動物たちの命と幸せを守るため懸命に運営されているんですよね。

だからこそ、寄付やお手伝いの仕組みができればいいのにな、と思います。キャットフードやペットシーツ、猫砂のような消耗品も、あれば皆さん助かるはずですから。

※ 楽天市場「動物保護団体支援プログラム」では、楽天市場でのお買い物を通じて動物保護団体を支援することができます。楽天市場の利用者は、団体が必要とするペット用品やペットフードなど物資を購入し、選択した動物保護団体に届けることができます。

詳しくは、記事末の紹介や上記の支援プログラムのWebページでご確認ください。

── 前田さんが、保護猫たちのために起こしたいアクションはありますか?

前田:今の僕にできるのは、メディアを通して保護猫のことを知ってもらい、「こんなにかわいい子がいるよ」と伝え続けることだと考えています。

ただ、保護猫たちと引き取り手の橋渡しとなる「譲渡会」も、場所の確保や人手不足といった課題があり、限られた日程と場所でしか実施できていないのが現状です。本当なら毎日やりたいし、アクセスの良い場所で譲渡会ができたら、保護動物に触れられる機会ももっと増えるだろうな……と思います。

そもそも「譲渡会」って表現がちょっとハードルを高くしていますよね。譲り受ける気がある人しか行ってはいけない、みたいに捉えられている気もして。もちろん猫たちのストレスや体調面への配慮は必要ですが、もっと気軽に「かわいい猫に会いたいから」というモチベーションで行けて、お子さんも楽しめるようなイベント的な譲渡会ができたらいいなと思っているんです。たくさんの人が訪れれば、それだけ保護猫が新しい家族と出会える可能性も高まるのかなって。

前田裕太さんインタビューカット

── メディアで保護猫の存在を伝え続けることも、譲渡会のハードルを下げることも、芸人というお仕事をされている前田さんならではのアクションだと感じます。改めて、今回2匹の保護猫を迎えてみて、いかがでしたか?

前田:猫との生活は本当に自分を成長させてくれたと感じます。先ほどむぅやぷりゅとの暮らしぶりをお話ししましたが、関係を築くための工夫など、おそらく2匹を飼っていなければ経験することのなかった試行錯誤をたくさんしてきました。だからこそ、2匹を迎えてよかったな、と心から思います。

── 最後に、保護猫を迎えたいと考えている、あるいは迎えられないけれど保護活動を支援したいと思っている人に向けてメッセージをお願いします。

前田:僕は高校時代、それまで人生をかけて取り組んできた野球で大きな挫折を経験して、精神的に、一度「死んだ」と思うほどのどん底に突き落とされました。そんな僕がここまで来られたのは、周囲にいた人たちが僕と向き合ってくれたから。保護猫のなかにも、過去の経験から心を閉ざしている子がたくさんいます。でもそんな子たちも、僕らが正面から向き合って関係を築こうとすれば必ず応えてくれるんです。

保護施設で一生を終えるよりも、一対一で向き合ってくれる人間と過ごせる方が、きっと猫にとっても幸せなことだと思います。だから、保護猫に関心があるなら一歩踏み出して、ぜひ譲渡会に足を運んでみてほしいですね。

それから、お家の都合やアレルギーなどで動物を飼うのが難しい方にも、猫と関わる方法はたくさんあることを知ってもらいたいです。先ほども少し触れましたが、保護施設ではつねに何らかのモノやリソースが不足しているので、寄付などは本当に助けになります。譲渡会のお手伝いや、会場の設営などの力仕事も歓迎されると思います。ご自身にできることから、始めてみてもらえたらうれしいです。

前田裕太さんインタビューカット

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楽天市場 動物保護団体支援プログラムとは?

動物愛護管理法により都道府県に引き取られた犬・猫のうち、現在でも日本では年間で1万匹以上が殺処分されています*1。この状況に対して、全国の動物保護団体が犬・猫などの保護や譲渡、啓発活動に取り組んでいます。

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[タイアップ広告] 企画・制作:はてな
取材・文:藤堂真衣
撮影:関口佳代
編集:はてな編集部

*1:環境省の統計資料「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」より。

日記の「オンリーイベント」で面白さをもっと広めたい。日記屋 月日・内沼晋太郎さんインタビュー

日記屋 月日の店舗

はてなブログは、日記の専門店「日記屋 月日」(東京・下北沢)が主催する「第2回 日記祭」(2022年12月11日(日)開催)に協賛します。「日記祭」の主催者であり「日記屋 月日」の店主でもある内沼晋太郎さんに、日記の楽しみ方や日記に対する考え方、そして日記祭に込める思いなどについてインタビューしました! 聞き手は週刊はてなブログ編集部の藤沢智子です。


日記の魅力は「書く」「読む」どちらにもある

──内沼さんは「日記」をテーマに日記屋 月日という店舗を作ったり、日記祭というイベントを開催したりと、日記に対して非常に多くの熱量を持っていると感じます。内沼さんの目を通した「日記の魅力」を教えてください。

内沼さん(以下、内沼) 大きく「書く」と「読む」の2つに分けられます。

「書く」ことについては、僕は手帳と日記の違いの話をよくします。手帳は予定を記すものですが、同時に「自分の成長」のような、未来に向かっていく要素がありますよね。将来に向けて何かを準備する、自分をスキルアップするなど、「未来への期待」が、手帳にはあるわけです。

けれどそれは「未来への不安」から来ているともいえます。コロナ禍以降は特にその傾向が強いですが、世の中にはこれからどうなるか分からない、あらゆることがいつまで続くか分からない、見えない焦りがあると思っています。そして、書店の店頭に行ってみると、新しいものに乗り遅れるな!と煽る本が並んでいます。

最近、そのせいで心がやられてしまっている人が多いと感じます。でもよく考えてみたら、今生きていることそのものを、もっとかみしめて、喜んだっていいわけじゃないですか。今のこの時点も、過去から見たら将来です。永遠に未来の準備をし続けて、不安になって焦っているだけでは、せっかく生きているのに、もったいない。

内沼 一方、日記には「その日あったことを振り返る」性質があります。いつも同じようなことばかりやっていて成長がないと焦っている人だって、実際は少なくとも毎日何か違うことをしているはずなんです。天気が違ったり、食べたものが違ったりしますし。

単純にそれらを書いていくだけで、文字という形で「存在するもの」になるから、自分の人生が違って見えてくる。ちょっと大げさですけど、生きている実感が生まれる、と僕は思っています。生きるということは日記を書くことなんじゃないかとさえ思います。

日記を書いてみると、少し心が落ち着いて「自分はこのように生きている」ということに気付き、自分で自分を「癒やす」効果みたいなものがある。それが、「書く」ことが持つ一番大きい力だと思っています。

日記屋 月日の中にある日記帳のコーナー

──内沼さんご自身の体験からそう思われたのでしょうか?

内沼 はい。僕も日記を書くと落ち着きます。日記を書けていない時は調子が悪い、日記を書けている時は調子がいい、とさえ感じますね。

例えば、何かもやもやした時は、紙に書いてみたりすることってありますよね。アイデアを考えなきゃいけない時も、何か悩みがある時も、漠然とした悩みも、いったん書き出してみる。そうすると「目に見える、形のあるもの」に変わります。そして自分を客観視できる。頭で考えている時に不安になるのは、自分でもよく全貌が分かっていないからそうなるのであって、書いてみれば最悪の場合にどんなことが起こりそうかが分かる。すると心の準備もできて、少し楽になります。

──確かに、日記には「日々を書き残す」以上の力がありそうです。

内沼 ここまでは、完全にクローズドな、誰にも公開しない日記のことを念頭に置いてお話をしました。もう1つ僕が「書く」ということで考えるのは、文章にすることで生まれる「読まれる」という可能性についてです。

気持ちのいい公開範囲は、人によってかなり違うと思います。絶対誰にも読まれない方がいいという人もいれば、せっかく書いているんだから誰かに読まれたいという気持ちを持つ人もいる。読まれたい相手にもいろいろあって、なるべく多くの人の目に留まりたいと考える人もいますし、友達や家族にだけ読まれたい人もいれば、近しい人たちにだけは読まれたくない、自分のことを知らない人にであればぜひ読まれたいという人もいます。

そこで僕は、読まれたいと思う人に向けて「日記が読まれる場」を用意したいと考えました。望ましい日記の公開範囲は、人によってかなり細かいグラデーションで違っているのだから、その人その人に向けていろいろな場があればいいなと思ったんです。それが、日記屋 月日や日記祭です。

日記を紙の本にするということには、不思議なオープン性とクローズド性があります。インターネットがこんなに発達するよりも前は、出版することが一番世の中に広がる手段だったと思いますが、いまやネットに書く方が広がる可能性が高く、誰に読まれるかも分かりません。

逆に、紙の本にして日記屋 月日で100部売るということはかなりクローズドに近くて、自分の知り合いに直接届く可能性はほぼないけど、ちょっとだけある。そういう面白さもあると思っています。

ZINEやリトルプレスのコーナー

──100部作るということは、100人にだけ届くということですよね。形を持つことでクローズド性が上がるのは面白いですね。

内沼 書く手段はさまざまで、紙の日記帳に書く人もいれば、はてなブログや各種SNS、ツールを使ってネットで発信する人もいる。そういういろいろな「書く」を、みんなが本にしたら面白いと思っています。

ここからは「読む」方の話に移っていくんですが、書かれた日記を読むとなぜ面白いと感じるのか。1つには、リアルだから面白いという要素があると思います。どこかで生きている誰かが等身大で書いていることを読んだ後に、僕は「少し人に優しくなれるんじゃないか」と思うんですよね。

街ですれ違う人、電車の中で乗り合わせた人など、自分の人生の中に直接関わっているわけではない人たちがいる。特に都会で生きていると、すれ違う無数の人はどうしても風景に同化してしまう。

でも、例えば「コンビニで働いている人の日記」を読むと、読み終えた後にコンビニに行った時の気持ちは、すごく変わると思うんですよ。

たった1つのサンプルでしかないけれど、コンビニで働いてレジを打っている人が、その制服を脱いだら、家に帰ってご飯を食べて、こういうことを思ってるんだな……みたいなことに想像力を巡らせることができるようになる。それぞれの人たちがこの世の中で、いろいろなことを考えて生きているというその1つ1つの事実に触れると、みんなが優しい気持ちになれるんじゃないかなと。

日記は「その時を思い出す」ための道具になる

──日記を読むことで、想像力が豊かになるんですね。

内沼 そうですね。「この映画館で、この映画を観た人は、こういう仕事をしているこのくらいの年齢の人で、映画の後にこういうものを食べた」という事実に、誰かの日記で触れることができます。

「今日の入場者数は何人です」というような、数字で人をカウントする状態が一番粗く、解像度が低い理解だとすると、日記を読むというのは、映画館に入場したその人がどんな人生を送っているというところまで分かる、他人に対する解像度の高い状態。マーケティングでいえばユーザーインタビューみたいなもので、定期的にやらないと、相手が誰なのか、何を考えているのかよく分からなくなる。日記本を定期的に読み続けていると、他人に対する解像度の高い状態が保たれて、心に見知らぬ誰かを受け入れる余白が生まれるというか、優しい気持ちを保っていられる気がするんです。

内沼 歴史学では、日記は重要な史料として扱われます。その時代を生きていた人の生活が分かる。歴史の観点で重要な出来事だけでなく、その他の教科書に載らない何でもないこと、普段の生活のことなども書かれています。こういう人はこんなものを食べていたとか、こういうところで暮らしてるとこういうことを思うんだとか、この時代の人はこういう価値観なんだよなとか、そういうことが分かると単純に面白いですよね。

最近の話でいえば、特に2020年の2月ぐらいから8月ぐらいまでの、新型コロナウイルスというものが本当に何なのか全く分からなかった時代のあの不安感って、2年たってみんな忘れつつあると思うんですよ。

出来事は残っても、気持ちはみんなすぐに忘れてしまう。でも幸い、あの時はコロナ禍を書いた日記の本がたくさん出版されました。今はまだ生々しすぎるかもしれませんが、あと何年かたった時に読み返せば、確かに世の中こういう感じだった、みんなつらい気持ちになっていた、自分も同じような気持ちになったなぁ……ということを思い出せる道具になります。さらに何十年も経てば、立派な史料になると思っています。

──2年前の生活や気持ちをはっきり思い出すのは難しいですよね。

内沼 100年後の未来から、この時代のことを知りたいと思ったら、そのディテールは、人々の日記がないと分からないかもしれない。マスメディアの記録に残るのは出来事と、その描写として使われるほんのわずかな断片だけですから。その時代の人がどう感じたか、どんな気持ちだったか。それが日記を通じて残っていくことの価値は非常に高いと感じます。

はてなブログのようなブログサービスにアーカイブされた内容も、何十年も後から見た時に違う価値を持ちますよね。もし200年前のブログがあったら、すごく読みたいじゃないですか。200年前の人ってこういう感じだったんだ!ということが、その時のブログをたくさん読めば、どんどん解像度が高く分かってきて、まるでその時代を生きているような気分になれますよね。

インターネットはまだ歴史が浅いから、遡っても20年くらいが限界になると思いますが、今もたまに「Internet Archive」に残ってる何かが話題になって「20年前ってこういう感じだったよね」と感想が集まることがあったりします。この感じが100年続いたら、ネットサーフィンがもっと面白くなるだろうと思いますね。

「文章が面白い人」を発掘するきっかけを作れたら

──内沼さんは、著名な人や有名人が書く日記についてはそんなに重きを置いてないように感じます。「普通の人の日記」に着目する理由を教えていただけますか?

内沼 本として出版されている日記には、ざっくり分けて2種類あります。「書いた人が有名であるという理由で世に出た」日記と、「面白いという理由で世に出た」日記。

前者の例は芸能人の日記ですね。読者には、文章の面白さよりも手前に「その人について知りたい」という欲求がある。それらの価値は既にはっきりしていますから、店としてはどちらかといえば、無理に扱わなくてもいいじゃない、とは思っています。

一方で後者は、例えば武田百合子の『富士日記』です。本来は夫である小説家の武田泰淳の方が有名だったはずなのに、今では、妻である百合子が夫と一緒に富士の山麓で暮らした時のことを書いた日記が長く読まれている。それは、その人が誰であるかということより、まず日記として、文章として面白いからです。

僕らが、どちらかといえば後者を中心に扱うのは、「書く人が有名でなくても日記は面白い」ということを言いたいからなんです。

無名の人の中にも当然、文章がとても面白い人がいます。僕らが日記屋 月日や日記祭をやっている理由の 1つには、文章が面白い人たちを発掘するきっかけの場になれたらいいという考えがあります。

写真家の植本一子さんによる『かなわない』(タパブックス)は、この10年で出版された日記本の中で代表的な一冊と言えると思いますが、これは最初、植本さんが自費出版したリトルプレスでした。それを出版社の人が見つけたのがきっかけで、出版流通に乗り、広く読まれる本になったんです。

内沼 植本さんが日記をリトルプレスとして出さなかったら、その本を出版社の人が手に取らなかったら、植本さんは書き手としては認知されなかったかもしれない。

日記専門店である日記屋 月日は、そういうことが起こりやすい、きっかけをたくさん生み出す場にしていきたいと思っています。そのために、僕らは無名の人の日記本を売りますよ、日記を書いている人はよかったら本にしてみませんか、というメッセージを強く打ち出しています。

日記屋としては何でもない日記に「グッと」くる

──「日付入りの本」を日記本として取り扱っていると日記祭のお知らせに書かれていました。そのこだわりについて教えてください。

内沼 「何か線引きがないと日記屋として扱う範囲を決められない」というのが一番大きいですね。なので大前提のルールは「日付で始まること」。なぜ日付かというと、「〇月〇日」というのが日記のスタンダードな始まり方であり、そしてその日記というフォーマットの自由度を担保してくれている記号でもあると思っているからです。

──日付の後であれば、小説やエッセイを書いたとしても「その日に考えたこと」になり、自由度は高くなりますね。

内沼 そうなんです。とにかく日付でさえ始まりさえすれば、その先に書いてあるものが小説であろうが、誰かに宛てたものであろうが、写真1枚であろうが絵1枚だろうが、食べたものの記録であろうが、何でも成立するのが、日記という形式の素晴らしいところです。その上で日記屋 月日としては、より個人的なものや日常的なものなど、私たちが「日記的」だと思うものを中心に扱っています。「日記的」だと思えるなら、たまに日付で始まらないものを例外的に扱うこともあります。

──日記本として人気のある内容はどんなものでしょうか?

内沼 一概には言えないのですが、変わった職業や境遇が表に出ている日記は、手に取りやすいですよね。「出会って0日で結婚した人と3ヶ月で離婚したイカ漁師の日記」みたいなタイトルだったら気になりますよね。その人に起こった出来事の特殊性みたいなものもあるかもしれません。

内沼 でも、必ずしも派手なものが人気があるとも限りません。「経理3年目の日記」だったら、経理に配属されたばかりの人が「3年目の人って一体どういうこと考えてるんだろう」と思って手に取るかもしれないし、「阿佐ヶ谷に住んでいる30代女性の日記」という本があったら、学生時代に阿佐ヶ谷に住んでいた人から、東京に引っ越すけれど住む街に悩んでいる30代の女性まで、いろいろな人が買うかもしれない。

──「私の日記」のようなタイトルだと中身の想像はしにくいですね。

内沼 ただ、売れる・売れないの観点で言えばそうかもしれないんですけど、日記屋 月日がグッとくるのは、どちらかといえば「何でもない日記」の方なんですよ。派手な要素はないのに、なぜか「何でもなさ」にぐいぐい読まされる……というような日記の方が、日記屋としては「そう、こういう何でもない日記が売りたいんだよ……!」と思えるんです。僕らがマニアックすぎるのかもしれないですが。

『富士日記』というタイトルの中には、「小説家の妻」とは書かれていないですよね。けれど今も読み継がれている。作る側の工夫としては、確かに書き手の属性が分かりやすいタイトルの方が手に取りやすくなるかもしれません。でも僕らは「書いた人の属性」よりも、やっぱり「書かれた日記の文章」に注目したい。第二の『富士日記』が読みたいし、第二の『かなわない』が生まれる場を作りたい。外側がどうであれ、中身が面白いことが一番です。

「もっと読まれたい」と思っている人は日記を本にしてみては

──ここまでお話を伺って、ブログを紙の本にする、本を作ってイベントに出るなど、日記の楽しみ方にもバリエーションがあると感じました。

内沼 はてなブログで日記を書いていて、「もっと読まれたい」「せっかく書いているから書いたものを楽しんでもらいたい」「自分も日記を楽しみたい」と思っている方は、ぜひそれを本にして、日記屋 月日に持ってきていただきたいし、日記祭にも出展してみていただきたいです。

日記を本にして売ると、きっと、ブログで日記を書いている時とは違う人に読まれると思いますし、読まれ方も変わると思います。

内沼 買って帰った本って、必ず全部最初から最後まで読むわけじゃないですよね。買っただけで満足することもある。自分が本の形にしたものが「何だか面白そうだ」と思って買われたっていう事実は、「読まれた」ということとはまた全然違ううれしさがあると思います。自分が書いたものを本の形にして売ってみる、ということは、とてもいい体験になると思います。

日記屋 月日は、書いたものが本になることをもっと促していきたい。その本が、ひょっとしたらどこかの出版社の目に留まるかもしれない。

とはいえ「あなたも出版デビュー!」というノリとは、ちょっと違いますね。その期待をされても正直困ってしまいますし、必ずしも出版社から出版されることを上位に置いているわけではありません。たった1冊でも、誰かが日記屋 月日に来て、ふと手に取った日記本を買って帰るというシーンを、たくさん生み出したい。日記屋 月日の店舗や日記祭などのイベントが日記を書く人の世界を広げるきっかけになっていくといいなと心から思っています。

また、日記を書きたいけどなかなか書き続けられないという人には、いろいろなアプローチがあると思うんですが、その中の1つに「はてなブログなどのブログサービスでブログを立ち上げる」という手段もあると思うんですよ。

──ブログを「続けるために使う」んですね。

内沼 本にするという目的がある時に、自分で書き下ろし切れる人もいれば、ペースをつかめないと書けない人もいます。小説家だって、書き下ろしで1冊書ける人もいれば、雑誌連載が存在しないと書けない人がいる。

「連載スペースとしてのブログ」を作ることで、日記が書き続けられるようになる人もいるでしょうね。たまに誰かがコメントしてくれたり、はてなスターを押してくれたりする人がいるから書き続けられるというケースもあると思います。自分1人で書いていてもなかなか続かないという人は、ブログにして書いてみることで、続くようになる人もいるんじゃないかなと思いますね。


日記を広めることで「優しい世界」ができればいい

──第2回の日記祭でははてなブログもご一緒させていただきますが、日記祭の活動を通じて、どのようなことを目指しているかお聞かせください。

内沼 日記祭を開催する一番大きな目的は、日記を書く人・読む人を増やしたいということです。なぜそうしたいかというと、「コンビニで働いている人」の例でも挙げたように、それが「優しい世界を作る」ことにつながるんじゃないかと思っているんですね。

僕も、みんなも、1人の人間だし、それぞれいろいろな角度から物事を考えている。例えば、「駅前に大きなビルが建った」という出来事があった時にそれについてどう考えるか、100人いれば100通りの考え方がありますよね。いろいろなお店ができて楽しくなったと思う人もいれば、風景が壊されたと思う人もいるかもしれないし、建物に感動してその建築家のことが好きになった人もいるかもしれない。でも、そのすべての視点がまとまって世の中に出てくることはなかなかないので、そういう想像をする機会はあまりありません。

もちろん、他人と完全に分かり合えることなんてあり得ません。むしろ誰かの日記を読めば読むほど、自分は多くの人とは分かり合えないと気づき、そのことに絶望する人もいるかもしれない。そういう意味では、日記を読むことが向いていないという人も、もちろんいるでしょう。けれどやっぱり、他人が何を考えているかさっぱり分からないという状態よりは、少し他人に対する解像度を上げることができた方が、まだ安心できるんじゃないかとも思います。「こんなことを考えていたんだ」「こんなふうに生きているのか」と日記の書き手に思いを馳せられることは、きっと少なくない人たちを、この世界に向き合いやすい状態にするんじゃないか、と思うんです。

日記を書くことで、心の余裕が生まれ、日記を読むことで、他人を受け入れる心の余白が生まれてくる。人の心を豊かにする、と言うと壮大な話ですが、日記が広がっていくことはそういうことだなと、僕は思っています。

日記祭でも、日記屋 月日でも、僕らが日記を広めるためのいろいろな活動をしていくことで、優しい世界ができるといいなと考えています。

──内沼さん、ありがとうございました!

編集後記

はてなブログでは、ユーザーさんがブログに書き残す生活に密着した内容の日記を「純日記」と呼称し、たびたび記事でご紹介しています。今回、内沼さんの「日記に対する考え方」をお伺いして、はてなブログが純日記に着目する際の視点と近しいものを感じました。日記祭でご一緒するのがとても楽しみです!

第2回「日記祭」の詳細については、こちらをご覧ください。

https://tsukihi.stores.jp/news/62a04b38c359a86ffbbe4c6etsukihi.stores.jp

blog.hatenablog.com

【2022/10/4 追記】「はてなブログの日記本」にあなたの日記を掲載しませんか?

日記祭のはてなブログブースにて、はてなブロガーの皆さんの日記を集めた「はてなブログの日記本」を配布いたします。
こちらの「はてなブログの日記本」に掲載する日記を募集します。みなさんの2022年の「これは!」と思う日記1記事をお送りください。詳細は以下の記事をご確認ください。皆様のご応募お待ちしております!

blog.hatenablog.com

情報発信すると新しいことにつながってワクワクする。からあげさんがブログを書き続ける理由【エンジニアのブログ探訪】

エンジニアのブログ探訪第7回 からあげさん

はてなブログで技術に関するブログを書いている方に、“ブログを書き続けること”について教えてもらう企画「エンジニアのブログ探訪」。第7回は、日常生活からハードウェアの話題まで幅広くブログを書くからあげさんid:karaageに登場いただきました。

からあげさんのブログのカテゴリを見ると、Raspberry Pi(イギリスのラズベリーパイ財団が学校教育用に開発した小型コンピュータ。通称ラズパイ)やJetson Nano(NVIDIAが提供する小型コンピュータ)などの電子工作、カメラ・写真、本・漫画、人工知能、珍スポット、グルメなど、多種多様な内容が書かれていることが分かります。また、ブログをきっかけとした書籍の出版やイベント登壇など、活動の幅が広がっていることも伺えます。

2006年12月から続くブログで、からあげさんはどのようにブログと向き合ってきたのか、何が継続のモチベーションとなっているのかについて伺いました。

※取材はメールインタビューで実施しました

──ブログを始めたきっかけについて教えてください。

私がインターネットで文章を書き始めたのは、20年以上前の、まだブログという言葉が生まれる前のインターネット黎明期だったと記憶しています。

当時、自分は学生だったのですが、その時はインターネットで何か情報を公開するということ自体が、かなり難しいことでした。具体的にはHTMLのタグを打って、FTPでファイルを1つずつアップロードしたりしていました。多分、今のはてなブログのシステムに慣れている人には、到底耐えられない手間だと思います。私も今はもう無理ですね(笑)。

ただ、あの頃はネットで自分が作ったものを公開するということが、とにかく楽しく刺激的でした。なので、きっかけがあってブログ(当時はホームページ)を始めたというより、ネットで遊ぶことに夢中になっていたら、いつの間にか始めたという方が近いと思います。あの頃にホームページを始めた人は、同じような人が多かったのではないかなと思っています。

──ブログにはどのようなことを書いていますか?

エンジニアのブログというと、はてなブログでは、仕事でコードをガリガリ書いている人が多いと思うのですが、私は仕事を始めるずっと前からブログを書いています。会社もIT系ではなく製造業で、コードを書くこともほとんどなく、コードを書くのはほぼ趣味です。なので、他のエンジニアさんのブログとはかなり毛色が違うかもしれません。

ブログのカテゴリーも「電子工作」「カメラ・写真」「本・漫画」「人工知能」「プログラミング」「日記」など多数のジャンルが雑多に並んでいます。無秩序に見えますが、自分の中では「オリジナリティある楽しいモノづくりをする」という点ではかろうじて一貫しているつもりです。技術的には、Raspberry Pi、Jetson Nano等のマイコンや電子回路などのハードウェア情報が多めなのが、珍しい点かもしれませんね。

からあげさんのブログ「karaage. [からあげ]

参考にしている……というか尊敬しているブログは、ブログ友達であるろんすたさんの「変デジ研究所」です。ろんすたさんは、エンジニアではないのですけど、ブログに取り組む姿勢に大いに影響と刺激を受けています。

あとは、モノづくり系のメディアでは「デイリーポータルZ」(DPZ)ですね。特に、斎藤公輔(NEKOPLA)さんの記事は技術的にもエンターテイメント的にもレベルが高く、しっかり記事を書かれているので、読むたびに「自分はもっと丁寧に記事を書かないとだめだな」と一人で反省しています(笑)。

昔は、密かにDPZをライバル視していて敵意をむき出しにしていたのですが、あるイベントでなんとDPZのライターさんたちから挨拶していただいて、自分の小ささを恥じました。今ではすっかりただのファンになっています(笑)。

──ブログを書き続けてきた中で苦労したことはありますか?

私は20年以上ネットで文章を書き続けているのですが、実は書くことがなくて困ったという経験は、ほとんどないです。この点に関しては、ひょっとしたら自分は才能があるのかもしれません。20年近くかかって気づきました。

なので、自分の体験からアドバイスできず申し訳ないのですが、基本は「自分が困ったことを書くこと」が大切だと思います。自分が困っているということは、たいてい他の誰かも困っているはずです。すなわち、そこに需要があるはず、と私は考えています。

──「ブログを書き続けたいが続かない」という人へのアドバイスがあれば教えてください。

とにかく書くハードルを下げることですね。

特に、なまじ自分の得意分野だと、中途半端にプライドができてしまうため、低いレベルのものを見せるのが恥ずかしい。「ばかにされるのが嫌だ」という気持ちが強くなりがちです。ただ、700年以上前に書かれた「徒然草」という有名なエッセイで作者の兼好法師は、

「下手くそなうちは、人に見られたら恥だ。人知れず猛特訓して上達してから芸を披露するのが格好良い」などと、よく勘違いしがちだ。こんな事を言う人が芸を身につけた例しは何一つとしてない。

徒然草」(吉田兼好著・吾妻利秋訳)より引用

と書いています。例えば私自身、ソフトウェアはそれほど得意じゃないのですが、下手なときから(今でも下手ですが)、ためらわずコードをネットに公開していました。

その結果、「PyCon mini Shizuoka 2020」というプログラミング言語Pythonのカンファレンスで、初回のキーノートスピーカーとして登壇させていただくことができました。正直、私より良いコードを書ける人はたくさんいると思います。その中で、私がこのような機会をいただけたのは、日頃からブログを中心とした情報発信をしていた結果だと思っています。

──ブログを書いていて良かったことは何ですか?

一つはやはりブログを通じて友人ができたことですね。「大人になると、新しい友人はできなくなる」とよく言われますし、実際に仕事だと、どうしても利害関係が影響してしまうので、純粋な友人はなかなかできないと思います。

でもネットを通じてなら、年齢や立場関係なく仲良くなれるんですよね。その中でもブログの果たす役割は大きいと思います。長年ブログをやっている人だとブログにその人の人生が詰まっているようなものなので、ブログの読者としてつながっている人は、初めて会っても、お互いずっと前からの知り合いだったような感覚で接することができるんです。これは長い間ブログをやっている人なら分かり合えるのではないかと思います。

ネットでのつながりをきっかけに、いろいろな可能性が広がったのも良い変化の一つです。具体的には、ブログを読んでくださったGoogleの社員の方から連絡をもらい、Google本社で200人以上が参加する勉強会に登壇させていただきました。「Jetson Nano超入門」「人気ブロガーからあげ先生のとにかく楽しいAI自作教室」といった書籍を出版できたのも、ブログから生まれたつながりがきっかけです。これらは、ブログを書いていなければ、絶対自分には起こらなかったことです。

Jetson Nano超入門人気ブロガーからあげ先生のとにかく楽しいAI自作教室(日経BP)
Jetson Nano超入門(ソーテック社)/人気ブロガーからあげ先生のとにかく楽しいAI自作教室(日経BP)

──ブログを書くために工夫していることがあれば教えてください。

一つは、自分のペースを守ることです。今は週に3本のペースでブログを書くようにしています。あらかじめ、前の週にはブログを書いておいて、次週の月曜・水曜・金曜の朝7時30分に公開されるように予約投稿しています。

私は、ブログは書く人によって、それぞれ最適なペースが違うと思っています。自分なりの最適なペースを見つけるのが重要だと思います。私が今のペースに落ち着いたのは、ここ数年のことです。試行錯誤しながら自分のペースをつかむのが良いと思います。

もう一つは、ブログを書いた後、ブログが公開されるまでに日をおいて最低1回は見直すようにしていることです。これは文章のミスを減らしたり、クオリティを上げたりすることはもちろん、不要な炎上を避けるためでもあります。

一時の感情に任せて一気に書き上げた文章は、書いた直後は満足しても、後で見ると「なんじゃこりゃ?」ってものであることはよくあります。客観的な視点で自分の文章をみる一番手軽な方法は、日をおいて自分の文章を読むことです。

──執筆時の様子について教えてください。

ブログを書くことが多いのは、自分の部屋です。

特に私の場合、技術的な内容の記事を書くのに、多くの機材と作業スペースが必要となるので、L字机に必要な機材を置いています。

狭い机に我慢できなくなってL字机を購入して超快適になったので使い方など紹介 - karaage. [からあげ]

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最近は、PC環境はiMac・MacBook Air・サブディスプレイ。サブディスプレイの下にはSeeed StudioのODYSSEYというミニPCがあって、OSはUbuntu(Linux)を入れています。

左側に見えるのは、ラズパイやJetson Nanoといったマイコン、myCobotという格安の小型6軸ロボットアーム、3Dプリンタ、はんだごてといった感じです。このあたりの機材はそのときどきに応じて入れ替わります。写真には写っていませんが、いすはGTRACINGのゲーミングチェアです。

電子工作に必要な機材の収納は、写真左の壁側に見える有孔ボードを活用して、収納を増やしています。その他は、無印良品のユニットシェルフやポリプロピレンのケースを活用した収納システムを構築しています。部屋に関しては、Webメディア「fabcross」さんでも取り上げられていたりしますので、よろしければそちらも合わせて参考にしてみてください。

文章を書くだけなら、場所はそれほどこだわりがなくて、ノートPCさえあればどこでも書けます。時間は、家族が寝静まった夜に書くときが多いので、大体夜中の1時とか2時とかですね(今も夜中の1時半に書いてます)。

──これまでブログを続けられたのはなぜでしょうか?

ブログを書く楽しさとして、最近はブログでの情報発信が新しいことにつながるようになってきたので、それがポジティブなフィードバックになっていることを実感しています。

大きなイベントでの登壇、書籍執筆……次はどんなことが起こるのだろうと、ワクワクしています。今回の「エンジニアのブログ探訪」への記事投稿も、もちろんそのうちの1つです。

ブログなどを通じた情報発信に関しては、全くの偶然なのですが、つい先日KDP(Kindle Direct Publishing)で「ゼロから始める情報発信」という書籍を個人出版しています

「ネットでの情報発信で、自分の人生の可能性が少し広がるといいな」と漠然とした思いを持っている人に向けて書いた本です。私の20年以上の経験が詰まった書籍で、今回の記事では書ききれなかったこともたくさん書いてあります。記事に共感いただけた方に読んでいただけるとうれしく思います。

最後にですが、ブログは後から読み返すと、思いがけない過去の自分の姿と向き合うことができるものです。たまに10年以上前に書いたブログ記事を読み返すと、自分でもこっ恥ずかしかったりしますが、同時に懐かしい気持ち、今の自分には書けないなという気持ちが沸き起こってきます。こういう体験は、長年ブログを書いていたからこそできる経験です。

ブログを書くというのは、人のためという気持ちもあるのですが、私の場合は、結局自分のために書いているのだろうなと思っています。

お話を伺った人:id:karaage

papix

愛知県のモノづくり系企業で働くエンジニア。趣味はカメラと電子工作。インターネットで20年近く情報発信を継続中。「ラズパイマガジン」「日経Linux」など多数の商業誌・Webメディアへ記事を寄稿。2019年、Google Japan本社でのTensorFlow User Group Tokyo主催の勉強会で登壇。2020年、Python関係で著名なカンファレンスPyConの地方版となる「PyCan mini Shizuoka」にキーノートスピーカーとして登壇。個人としてモノづくりを楽しむメイカーとしても「Ogaki Mini Maker Faire」をはじめとした複数のメイカー系イベントに出展。著書に『Jetson Nano 超入門』(共著、ソーテック社)、『人気ブロガーからあげ先生のとにかく楽しいAI自作教室』(日経BP)がある。好きな食べ物は、からあげ。

Twitter:@karaage0703
ブログ:karaage. [からあげ]

◆ エンジニアのブログ探訪