イラストエッセイを投稿しているジュリー下戸さんに、絵日記のコツを聞きました。歌舞伎の魅力や、ZINEへの思いも

手帳につづった絵日記をまとめた記事や、見に行った歌舞伎の感想、考えたことなど、日常をイラストとともに投稿しているブログ『ジュリー下戸の歌舞かれて東京』。週刊はてなブログでは今回、著者のジュリー下戸(id:jurigeko)さんにインタビューしました。ブログを書き始めたきっかけやイラストのコツ、歌舞伎への思い、そしてブログを続ける秘訣(ひけつ)を伺いました。

(取材・構成:はてなブログ編集部)

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きっかけは学級新聞

ーー今日はよろしくお願いします。まず、はてなブログを始めたきっかけについて教えてください。

私は1990年生まれなんですが、5歳の頃からPCに触れていました。父親が結構ミーハーで、Windows 95が出た当時から家にPCがあったんです。小学生の頃から、はてなダイアリーを使っていましたし、他にもあちこちのブログサービスを使って書いていたんです。everydiary、デコログ、前略プロフィールなんかも使ったことがあります。高校生の頃はmixiで書いていました。その中で一番はてなダイアリーが使いやすかったので、またブログを始めるにあたって、はてなブログを選びました。

ーー5歳からPCを! 子供の頃から文章を書くことが好きだったんですか?

小学3年生のとき、担任の先生が私の作文を気に入ってくれて、学級新聞に載せてくれたんです。学級新聞は基本的に学校から親ヘの連絡事項を載せるものだったんですけど、裏面に私の作文を印刷してくれたんです。友達のお母さんから「学級新聞、読んだよ」と言われて、すごくびっくりして。「あ、自分が書いたものが誰かに届くのって楽しいな」と思いました。それからはもう、どう書けば担任の先生が載せてくれるかなって考えながら書いてました(笑)。何度か載せてくれて、そのたびにクラスメイトの親から反響があって。とてもうれしかったのを覚えています。それがきっかけで、文章を書くのが好きになったんだと思います。

中学に入ってからは、エッセイコンクールに応募していました。本を読むのも好きになったんですが、エッセイばかり読んでいました。あまり小説は読まなかったです。日常や考えたことがつづられているものの方に惹(ひ)かれました。

ーー子供の頃からエッセイの方が好きだったんですね。ブログのネタはどういう基準で選びますか?

絵日記は毎日書いているんですけど、絵日記のネタがそもそも「その日にあったこと」じゃなくて「その日に考えたこと」を書いているんです。結構時系列もまちまちで。その中で、何度も同じことを書いているときがあって。そういうときはもうちょっと長文で、ブログにまとめることにしています。「思いが募ったらブログで書く」という感じです。15年かかってコンプレックスを克服した話とかはそうですね。中間被災者として考えたことも、3.11以後ずっと考えてきたことだったんです。重い話なので、ある程度私の日常の話が積み重なった後に書こうと思っていました。ブログが長く続いた中で書けば、私の考えの1つとして被災の話を書いても、ブログ全体がその内容に引っ張られすぎないかなと思って。やっと書けたという思いがあります。

アナログで描いたものをデジタルで着色

ーー絵を描くことも、子供の頃から好きだったんでしょうか?

2歳ぐらいの頃から大好きだったみたいです。すごくおしゃべりでうるさい子だったらしいんですが、絵を描いているときだけ静かだったらしくて。なので両親は、出掛けるときに私用のお絵描きセットを持ち歩いていたんです。何かしゃべり出したらさっとそれを与えて、黙らせてたって言っていました(笑)。小学生の頃は漫画家になりたかったんです。でもトーンの貼り方が難しくて挫折しました。小学4年生ぐらいからしばらくはイラストサイトを作っていて、同時進行でずっとブログもやっていました。日常をつづるのは、子供の頃から大好きでした。

ーーいつもかわいらしいイラストが添えられていますよね。イラストはどういうふうに描くんでしょうか?

下描きはせずに、一発描きしています。下描きをすると、どの線にするか迷ってしまうので……。輪郭を描いて、頭を描いて、目を描いて、体を描いて、という順番です。失敗したらまた一から描き直すんです。ブログのイラストは、専用の手帳を用意しています。それに描いたものをスマートフォンでスキャンして、アプリで着色しています。塗りやすいように、できるだけ線の数を少なくしたいと思っているんです。

ーー絵はどういったペンで描かれているんですか?

基本的に万年筆で描いています。万年筆のにじみ方が好きで。線だけしか描かないのはもったいないので、ベタ塗りも万年筆でしています。インクだけはケチらないぞって決めているんです。絵日記の場合は、赤と青と緑の3色だけ、ボールペンで軽く色を付けています。

ーーイラストは家で描くんですか?

絵日記は家で書いたり、近所の喫茶店で書いたりしています。外で書いている方が集中できます。昔は時間がなくて通勤電車の中でも書いたりしていたんですけど、さすがに集中できなくてやめました。

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花道で体感した歌舞伎の衣装へのこだわりを、丁寧に描く

ーー今のブログ名が「歌舞かれて東京」になっていますが、やはり歌舞伎の感想が印象的です。歌舞伎の魅力とはどういった部分でしょうか?

もともとライブエンターテインメントが好きだったんです。その中でも歌舞伎は、ほかの舞台にはない力強さがあって、圧倒的な非日常感に、ものすごく感動して。最初に見に行ったのは「スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース」だったんですけど、そこでゾロを演じていた坂東巳之助さんに惚(ほ)れ込みました。今は月一くらいで見に行っています。

坂東巳之助公式ホームページ

ーージュリーさんのイラストの中でも、歌舞伎の衣装の描き込みがすごいと思うんですが、何か参考にして描かれるんですか?

舞台写真や雑誌『演劇界』(演劇出版社)を参考にするときもあります。歌舞伎って、幕府からあれこれ制約を受ける中で試行錯誤しながら発展していった芸能なんです。衣装も、限られた枠組みの中でもより華やかに見えるよう工夫して作られているんですよ。それに影響を受けて、庶民も裏地だけ派手にしてみたりとか。庶民の熱が入っていた部分なんだと感じています。

花道の横の席に座ったことがあるんですが、役者さんが通り過ぎた後に、すごい古めかしい匂いがしたんです。その時にあらためて、昔からの衣装を大事に着続けているんだって気付かされました。そういう事柄に触れるたびに、衣装を描く手に力が入るんです。もともと服は好きだったんですけど、イヤホンガイドを聞いていたら「この登場人物が着ているこの着物の柄が、これからの未来を暗示しています」とかそういう情報も教えてくれて、どんどん衣装に興味が湧いてきました。

ーー「イヤホンガイド解説員になりたい」とも書かれていましたね。鑑賞する際にイヤホンガイドはあった方がいいと思いますか?

私はあった方がいいと思いますね。一度見たことがある演目でも私はつけます。あとイヤホンガイドって、本編が始まる前にもその演目の舞台背景を教えてくれるんですよ。「この時代にはこういう病気がはやっていて〜」みたいな、知っておくとより楽しめる情報を教えてもらえるんです。おすすめですよ。

ただ、基本的に役者のせりふと被らないようにしゃべってくれるんですが、音声が重なったときに混乱しちゃう方もいるみたいで。私は大丈夫なんですけど、友人は混乱しちゃうからつけないと言っていました。

ーージュリーさんのエントリーを読んでいると歌舞伎に行きたくなります! 他にも見に行く前に知っておいた方がいいことはありますか?

テレビに出ている歌舞伎俳優さんとか「この人を見に行こう」といった目的はあった方が見やすいと思います。私も基本的には推しの坂東巳之助さんを見に行っていますね。その中で傾城反魂香という演目自体が好きになったので、今度違う方が演じる、その演目を見に行くつもりです。

歌舞伎俳優の方はブログをやっている方も多いので、ブログを読んで、好きな歌舞伎俳優を見つけるのも楽しいと思います。歌舞伎俳優の方がブログに投稿する「歌舞伎の衣装を着た自撮り写真」が大好きなんですよ!(笑) 2017年って感じがします。

昔、サッカー日本代表を追いかけていたことがあるんですね。吉田麻也さんのファンだったんですけど、ブログがとても面白かったんです。チームメイトのこともたくさん紹介してくれて、そこでどんどん詳しくなりました。そういった「人に興味を持つ」入り方も、歌舞伎に親しみやすくなると思います。

srdk.rakuten.jp

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更新ペースを決めない、暗い内容でも気にしない

ーーブログを更新する頻度は決めていますか?

「週に◯回更新しよう」とか更新ペースを決めていると、それが果たせなくなったときに愛着がなくなってしまうので、そういう制約はしないことにしています。以前やっていたブログで、決めていた更新頻度で書けなかったことがあって、そこでパッと冷めてやめてしまったんです。それで今は、すごく更新している月があろうと、全然更新しない月があろうとそれでいいやって。その方が続けるのが楽になると思うし、変な義務感がなくなって書きやすいです。自分でルールを決めて、それを守ることは好きなんですけど、更新ペースだけは決めないことにしています。

ーー絵日記で決めていることはありますか?

絵日記は何年か前から書いているんですが、「振り返ったときに暗い気持ちにならないように、明るいことだけ書く」っていうのをやったときに、全然書けない日があって(笑)。今は暗い気持ちの日はそのまま暗い内容を書いています。振り返ったときに明るい気持ちにならなくてもよくて、読み返したときにその当時の気持ちがよみがえってきたら面白いだろうなって思って書いています。

ーーブログを続けていて良かったことはありますか?

子供の頃の作文と一緒で、書いたものに反応が返ってくるのはうれしいし、楽しいです。はてなブックマークやSNSで、私の記事をもとに会話が始まっているのを見たりすると、もううれしくてうれしくて(笑)。

歌舞伎に関する記事はほぼ自分のためだけに書いています。何十年か経って、自分で読み返したらとても面白いんだろうなって。最初の頃書いたワンピース歌舞伎の感想を読むと、既にものすごく面白いんです(笑)。「私、何にも分かってなかったんだな! 」って。それも含めて、書き残しておくと楽しいなあと感じています。

ーーブログを書く上で、気を付けていることはありますか?

「あくまで一個人の意見です」というのが伝わるように気を付けています。例えば中間被災者の話だと、同じ立場でも違う意見の人はいると思うんです。読者として読んでいてストレスが無いように気を付けています。「女性は」「北国の女性は」といった書き方ではなく、あくまで「隣に住んでいる」岩手県育ちの20代のジュリー下戸はこう考えていますっていう文章を心がけています。

ーー現在、月1回ネットプリントでフリーペーパーを配布されていますよね。さまざまなことに挑戦されていますが、今やってみたいことはありますか?

ZINE*1を作ってみたいんです。ブログやサイトなど、ずっとインターネットでやってきたので、触れるものを作ってみたいなと。昔フリーペーパーの専門店があって、そこでいろんなものに触れてとても面白くて。毎月フリーペーパーを書いていって、それをまとめてZINEにして、文学フリマに出すのが今の夢です。それからネットラジオもやってみたいんです! 手帳クラスタの間で見かけた「やりたいことを100個書いてみる」というのもまだまだ100個に達していないので、それも見つけていきたいですね。

ーー本日はありがとうございました。これからも投稿楽しみにしています。

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ジュリー下戸id:jurigeko

ジュリー下戸

2016年、はてなブログを開始。歌舞伎ファン2年生。イヤホンガイド解説員になるのが夢。都内某百貨店でこっそり働く派遣社員。文房具とラジオも好き。

ブログ:ジュリー下戸の歌舞かれて東京 Twitter:@jurigeko

*1:同人誌