法人にしかないコンテンツを「表現」してほしい - はてなブログが法人向けにサービスを拡大する理由

はてなブログBusinessプロモーション記事第1弾記事のメインカット

2011年のはてなブログサービス開始以降、多くの記事がブロガーの皆さんによって送り出され、その先にさらに多くの読者を生み出してきました。しかし、はてなブログを使い発信を行っているのは、個人のユーザーだけではありません。2014年にリリースされた法人向けオウンドメディアCMS「はてなブログMedia」をとおして、さまざまな法人が内にある思いを言葉にしてきたのです。そして2020年9月、新たな法人向けブログ利用プランである「はてなブログBusiness」をリリースしました。

はてな、スモールビジネス向けの新ブログプラン「はてなブログBusiness」の提供を開始 - プレスリリース - 株式会社はてな

個人ユーザーにとってのブログサービス、というイメージがあるはてなブログは、なぜ法人に向けサービスを拡大するのか。そして、法人の発信活動になにを期待するのか。はてなブログの開発・運営を取り仕切る、はてな大西康裕(id:onishi)に聞きました。聞き手は『週刊はてなブログ』編集部です。

はてなブログを法人が使えるようにした理由

── 「はてなブログ」は個人ユーザーの発信ツールという印象を持つ方が多いと思います。そもそも、はてなブログは法人がコミュニケーション活動に使えるものなのか、改めてお話してください。

大西 法人での利用もお勧めしています。「はてなブログ」をリリースした2011年当時は個人ユーザー向けのブログサービスだと意識してましたので、「はてなブログ=個人ユーザーのためのブログ」と認知されているのは、自然なことだと思います。しかし、その後、2014年には法人向けのサービス「はてなブログMedia」をリリースし、 2019年には、個人の営利利用を認めるなど、さまざまなユーザーや利用目的に対応できるよう、サービスを拡大してきました。

今回、新たにリリースした「はてなブログBusiness」は、法人向けオウンドメディアCMS「はてなブログMedia」の機能を絞り、より低コストに使っていただけるプランです。スタートアップ企業やスモールビジネスを手掛ける企業でも、気軽に自社のプロモーションやコミュニケーションのツールとして「はてなブログ」をご活用いただけます

株式会社はてな大西康裕の写真
大西康裕(おおにし・やすひろ):株式会社はてな 執行役員 サービス・システム開発本部長。2001年に創業メンバーの1人として有限会社はてな(当時)に入社。その後「はてなブログ」の立ち上げや事業化を指揮し、2014年8月より執行役員 サービス開発本部長を経て、2016年8月より現職。


── はてなブログとはどのような思いを持って作られたサービスなのか、改めて法人ユーザーの方に向けて教えて下さい。また、個人ユーザーがメインだったブログサービスが徐々に法人向けに解放されてきましたが、どのような経緯があったのでしょうか。

大西 はてなは元々「はてなダイアリー」というブログサービスを運営してきました。そして、はてなダイアリーの後継サービスとして「はてなブログ」を開発する際、一番意識したのは、「長文を書くブログ」というコンセプトでした。SNSやダイレクトメッセージングサービスが一般化し、たくさんの文章が書かれるようになりましたが、反面、短いつぶやきやメッセージのやりとりのなかで、文章は消費されていきます。はてなブログでは、しっかりと長文のブログを書いて楽しんでほしい、という気持ちを込めてサービスを作りました。

そして、こうしたはてなブログの思想と、良質なコンテンツを制作・発信したいというコンテンツマーケティング文脈における法人の需要がマッチしたというのはあります。それに、法人発の良質なコンテンツがはてなの世界に加わることにも意味があると感じたんです。

我々はブログ以外にもコンテンツのプラットフォームを運営しており、ウェブ上のコンテンツをとても大事にしています。ですから、法人・個人を問わず、価値あるコンテンツが多くの方に届く支援をしたい、という思いがあります。

── ブログ形式の情報発信を“気軽に”行いたいという法人からのニーズは多いのですか。

大西 法人がオウンドメディアを持つことはかなり一般化してきましたが、いまもニーズは増えていますし、多様化していると感じています。ブログ形式の発信をしたい、というニーズはもちろん、はてなブログMediaでコーポレートサイトを構築したいといった声もあります。法人や企業がなんらかの発信を行う場合、まずは気軽にSNSを活用することが多いでしょう。しかし、より多くの情報量を込めたいとか、より精緻な分析をしたいといった、SNSでは実現できない高度な活用を求める声も増えています。

また、SNSのようなフロー型の情報発信だけでなく、ストック型の情報発信でじっくりとユーザーとコミュニケーションをとりたいという声もあります。ブログ形式のツールは、コンテンツを増やし、ためていくということを得意としています。

企業の情報発信手段にはさまざまな選択肢がありますが、はてなブログは、気軽なコミュニケーションツールとして、あるいは本格的なメディア構築まで幅広いニーズに応えられると思います。

── ブログ型の情報発信ニーズの高まりには、どのような背景があると考えていますか。

大西 コンテンツマーケティングの文脈の中で「Googleが良質なコンテンツの順位を上げてきた」と語られることがありますが、これは少し違うと思っています。Googleが主ではなく、まず「ユーザーが良質なコンテンツを求めている」と。そしてユーザーに追従し検索エンジンも良質なコンテンツを上位に置こうとしているのだと見ています。

ユーザーが求める「良質な情報やコンテンツ」も変化してきています。この20年ほどで、インターネットはどんどん生活に根付き、当たり前のものになってきました。かつては単なる情報取得ツールとして捉えられていましたが、いまでは、周辺情報や背景まで、より深い情報がインターネットで求められるようになってきたと感じます。

昨今のコロナ禍において、こうした傾向はより顕著になっていると感じます。ユーザーが求める、「周辺情報や背景」まで踏み込んだ情報を提供するために、言葉を尽くしてプロダクトの魅力や自社の空気感まで伝える手段として、ブログ形式の情報発信が求められていると考えています。

── ただ、“深いコンテンツ”をつくり続けるにはかなりのエネルギーが必要ですよね。

大西 確かにコンテンツづくりにはある程度のパワーが必要になってきます。しかし、ブログというメディアは硬軟併せ持つというか、作り込んだ情報発信から、日々の暮らしの書き連ねまで、多様な発信のあり方を許容してくれるのも面白いところです。肩の力を抜いたコンテンツで、「企業の裏にも人間がいる」とユーザーが実感できるような情報を届けるのも、また意味があるでしょう。

いま法人がユーザーに届けるべき情報とは

── はてなにはさまざまなコミュニティがありますが、はてなのコミュニティとはどのようなもので、法人はコミュニティとどのように接点を築くべきだと考えていますか。

大西 はてなには、「はてなダイアリー」時代から、レビュー、ファンコミュニティ、日々の暮らしの記録など、今につながるいろんなブログのかたちがあり、批評家、文筆家、エンジニアなど多様なブロガーが存在しました。「はてなダイアリーって文筆業のユーザーが多いよね」「エンジニアが多いよね」「ハロプロ好きな人が〜」「オーディオマニアが〜」「図書館員が〜」など、嬉しいことに見る方によっていろんな感想が生まれます。

「はてな」という場所は単一のコミュニティではなく、多様なコミュニティが生まれ育っていった場所であり、我々はこうした場所を提供してきたのだ、という自負があります。しかし、法人もまた、「法人とそのユーザー」といったコミュニティをすでに持っているはずです。ブログを既存のコミュニティとのコミュニケーションに活かしていただいてもいいですし、はてなという場所・コミュニティとの接点づくりに活かしていただくのも、どちらもよい活用の仕方だと思います。

はてな大西康裕の写真2

── では、きちんとユーザーに届く法人ブログとはどのようなものだと思いますか。

大西 はてなブログには「思いは言葉に。」というキャッチコピーがあります。これはユーザーに向けても法人に向けても同じです。思いをもってはてなブログを選んで書いてもらいたいです。そういう使い方をしてもらえると、運営している我々も嬉しいですし、「企業の思い」がつまったブログこそが、ユーザーに読まれるメディアとして成長し、存在感を出していくのではないでしょうか。

── 個人ユーザーであっても、法人であっても、思いを言葉にすることの重要性は変わらない、と。

大西 ブログの読者が求めているのは、単なる情報だけではありません。コンテンツに触れたとき、それを読んだ自分がどう思うか、共感するのか、「いや、自分の意見はこうだ」などと考えさせられるコンテンツが深く読まれるようになってきた印象があります。発信主体が個人ユーザーであっても法人であっても、書き手の思いが重要であることは変わりません。

法人として取り組むからこその熱の入れ方や、法人ならではの苦しみ、顧客の知らないちょっとしたテクニックなど、法人だからこそ語りえる独自性の高いコンテンツの種はたくさんあります。そういった独自性のある記事こそ、情報感度の高いインターネットユーザーに受け入れられ、ユーザーを考えさせる余地や示唆を与え、SNSにシェアするといった、次なる行動を喚起するのだと考えています。

法人には「表現」してほしい。ユーザーには「知り」「つながって」ほしい

── ブログサービス運用者の視点では、法人にはどのような情報発信を期待していますか。

大西 その法人ならではの専門性を活かしたぐっと読ませる深みのあるコンテンツを発信してくれると嬉しいです。なにより、読み手にとっても価値があるでしょう。私自身、技術的な調べ物をしていて、ある企業の技術ブログにたどり着き、「この企業の書く記事ならしっかりとした内容だろう」という期待を持つことも多いです。こうした読み手から信頼を得られる発信を意識していただくと、運用者としては非常に嬉しいです。

もうひとつ、先にお話したように、ブログというメディアは硬軟併せ持ちます。ユーザーから見えにくい企業の一面が垣間見えるような柔らかいコンテンツも面白いと思います。

どこかしらの企業に興味を持ちインタビュー記事を探して読む、といった経験があるのは、きっと私だけではないでしょう。会社のサービスや製品の情報を伝えるだけでなく、それを作っている人の顔がユーザーから見えるような記事を発信することで、企業の姿がより深く理解してもらえるのではないでしょうか。

はてな大西康裕の写真3

── 「良いコンテンツ」の作り方は法人によってさまざま、ということですね。

大西 その法人にあったコンテンツ発信のやり方があるでしょう。はてなは長く企業のコンテンツマーケティング支援を行ってきました。EC、人材などお客さまの業態はさまざまです。その中で、「あの企業だからこそ出せるコンテンツ」を発信することで、強い共感や深いエンゲージメントを生み出すのだと身を持って感じてきました。

── CMSとコンテンツを通じて、法人とユーザーの良好なつながりが生まれれば、私たちも嬉しいですからね。

大西 はてなは『「知る」「つながる」「表現する」で新しい体験を提供し、人の生活を豊かにする』というコーポレートミッションを掲げています。これは法人向けのサービスでも変わりません。法人にしかない独自の魅力を「表現」して欲しい。それがユーザーの「知る」「つながる」に結びつき、インターネットにより多くの有益なコンテンツが増えることを願っています。

良質なコンテンツを発信する価値は個人ユーザーでも法人でも変わりません。法人ならではの良質なコンテンツを発信していただきたいですし、はてなは今後もそれを応援していきたいのです。