ときにバズり、多くのユーザーに出会う。あるいは、普遍的な情報で、長くユーザーに読みつがれる。ときに企業は、このようなユーザーとの幸福なコミュニケーションをオウンドメディアを通じて築きます。しかし一方で、オウンドメディア運用が企業のマーケティング活動の一環である以上、「ユーザーとの出会いには、どのような意味があったのか」を可視化することが求められます。
ユーザーが自社のサービスに好感を持ってくれた。ユーザーがメディアを通じてサービスやプロダクトの利用者になってくれた。こうしたコンテンツの先にある「メディアを運用する意味」を具体化すためには、メディアにどんなユーザーが来訪し、どのような行動をとったのか、などの要素を解析することが必須です。では、企業が見るべき、「オウンドメディアが生み出す数値」とは。
はてなブログの法人向け新プラン「はてなブログBusiness」のリリースに合わせて『週刊はてなブログ』がお届けする「連続企画:コンテンツと企業 2020」の第2弾となる本稿では、アクセス解析のスペシャリスト・小川 卓さんと、「はてなブログBusiness」のコンセプト設計に携わる、JADE社所属のコンサルタントであり、メディア運用やSEO、アナリティクスに深い知見を持つ村山佑介さんが、オウンドメディアなどの企業ブログ運用において、運用者が解析すべき数値について語り合います。
オウンドメディアを成功に導くポイントは目的設定を間違えないこと
村山 企業がオウンドメディアを通じて情報発信することは、いまやかなり一般的なコミュニケーション手段になってきた印象がありますね。
村山佑介(むらやま・ゆうすけ):企業内Web担当者としてSEOや広告、分析など、Webマーケティングに幅広く携わり、株式会社JADEに2019年10月に参画。Googleウェブマスターヘルプフォーラムおよび、Googleアナリティクス公式ヘルプフォーラムでのシルバーエキスパートとしての知見を生かし、アクセス解析とSEOの両面から、企業のオンライン施策をコンサルティングする。
小川 そうですね。自社で立ち上げから運営まで担うケースはもちろん、既存のオウンドメディアを買収する、といったケースも見聞きされます。村山さんの言うとおり、オウンドメディアを持つのはかなり一般化してきていますね。一方で、メディア運営していくうちに“中の人”が疲弊してしまう、というケースも目にします。
村山 たしかにオウンドメディア運営から撤退する企業も出てきています。ユーザーにとって有益な情報が記載された記事があるにもかかわらず、記事を維持することなく、メディア全体を閉鎖してしまう事例を目にすると、とても残念に思います。小川さんは企業がメディア運営に行き詰まる原因はどこにあると考えていますか。
小川 オウンドメディア運営でつまづく原因の多くは目標設定にあると感じています。たとえば最終的にオウンドメディアから資料請求や会員登録などのコンバージョンにつなげたい、とします。しかし、オウンドメディアはいきなりコンバージョンさせるのは難しい施策です。運営者が認識すべきは、コンバージョンはあくまでも将来的な目標であり、まずは集客し、良質なコンテンツを通じユーザーと信頼関係を築かねばならない、ということです。ところが、こうした認識が不十分のまま、最初からKPIをコンバージョンに置いてしまうケースが多いのです。ユーザーとのコミュニケーションが十分でない段階から、「月30件コンバージョンを取ろう」と考えてしまうと、どうしてもうまくいかなくなってしまう。
小川 卓(おがわ・たく):ウェブアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパン等で勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授として、また、多数の講演活動、書籍などを通じてウェブ解析の啓蒙・浸透に従事する。ウェブサイトやサービスの分析や改善提案などを提供する株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。
村山 すぐにオウンドメディアに人が集まるわけではないですからね。集客からコンバージョンまでのステップは何段階くらいだと考えていますか?
小川 大きく以下の3段階に分けられます。
- 【Step1】いかにして集客を生み出すか
- 【Step2】ユーザーがきちんと記事を読んでくれているかどうか
- 【Step3】コンバージョンの分析
1と2を飛ばし、最初からコンバージョンを求めても、そもそも分析すべきユーザーのデータがないわけですから対策しようがないですよね。村山さんの場合はマーケティングの観点からオウンドメディアの分析をどのようにされていますか?
村山 私はオウンドメディアの立ち上げから関わることよりも、すでに大規模なサイト内のコンテンツの有効活用に携わる、つまり、「集客」以降の段階から関わることが多いので、小川さんのステップ設定は新鮮です。コンテンツマーケティングにおいては、3の「分析」は重視される一方で、1の「集客」はあまり重点的に考慮されない印象もありますね。
小川 そうでしたか。オウンドメディアがコンテンツマーケティング施策の一環である以上、地道にやっていくしかないと思います。
村山 もう少し「集客」について教えてください。オウンドメディアで集客するにはどのような点を意識するべきなのでしょうか。
小川 集客できる記事は、大きく分けて2種類です。バズで短期的に大きく集客できる記事と、長期に渡って細く人を集めトータルで集客できている記事です。話題性を重視したアプローチと、普遍性を重視したアプローチと解釈してもいいでしょう。オウンドメディアではこの2つのアプローチを両輪として意識する必要があります。「バズればいい」と考えてしまうかもしれませんが、仮に記事がバズって一時的に集客できても、またすぐにPVは下がってしまいますからね。
村山 「フロー(話題性のあるコンテンツ)」と「ストック(普遍性のあるコンテンツ)」というコンテンツの分類軸がありますが、それと同じ観点ですね。SEOを考慮する場合、やはり重視されるのはストック型のコンテンツです。一方のフロー型のコンテンツですが、やはりバズを狙うのは難しいですよね……なかなか再現性もないですし、方法論も確立しきれていません。小川さんの専門は「アクセス解析」ですが、Google アナリティクス上ではフローとストックの違いをどのように分析されるのでしょうか。
小川 見るべきポイントはコンテンツ公開初日と2~7日目の訪問数比率です。メディア全体の訪問数のなかで、あるコンテンツの公開初日と2~7日目の訪問が何%を占めているのかを確認します。この割合が高いようであれば、その記事は「バズ」で伸びていることになります。逆であれば、その後もじわじわと継続して伸びる可能性があるストック型のコンテンツといえますね。いずれにしても最低限の訪問数は必要ですが。
村山 たしかにバズは瞬間風速、記事が公開されてから短期間でいかに人を集められるかが勝負です。バズにはSNSが強く影響すると思いますが、小川さんはどのようにお考えですか。
小川 もちろん、TwitterやFacebookなどSNSの力は大きいですね。SNSで話題になっているトレンドワードを上手く拾えればバズの可能性は増すでしょう。ただ、オウンドメディア運用企業の商材とトレンドワードが必ずしも相性がいいわけではないので、「バズを狙う」のはやはり難しいです。中長期的にはやはりしっかりとストック系コンテンツを積み上げていくのが常道になると考えています。
村山 なにごとにも近道はなく、ストック系コンテンツの積み上げや、既存コンテンツの更新・リライトといった運用を、地道にコツコツとやっていくのが重要ですよね。アクセス解析の観点から、ストック系コンテンツを制作するうえでのポイントはありますか。
小川 書ける本数にも限界がありますから、一つひとつの記事がどういう特徴を持っているのか分析することが大事です。たとえば、商品Aを訴求する記事があったとして「Aの使い方解説記事」と「Aを使ったユーザーのインタビュー記事」では読者の受け止められ方は違うでしょう。各記事が持つ特徴を分析し比較するうちに、良い記事の特徴が見えてきます。また、村山さんが指摘するように、新規記事をつくり続けるだけでなく、過去のヒット記事のPVを維持・向上させるために、リライトや情報更新をしていくことも重要です。
コンテンツの目的を整理し、記事の「貢献度」の測定する
村山 少し視点を変え、多くの運用者を悩ませる、「オウンドメディアのKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)」についてお聞きします。先程、オウンドメディア運営でつまづく原因の多くは目標設定にある、とお話されていました。目標をKPIという具体的な数値に落とし込むことが重要になりますが、小川さんはメディアやコンテンツのKPIをどのように設定するべきだと考えていますか。
小川 そのためには、まずはコンテンツの目的を整理することが大事です。私はコンテンツの目的は3種類あると考えています。不動産賃貸会社のオウンドメディアを例に考えてみましょう。まず必要なのは「集客のための記事」です。このタイプの記事の目的はユーザーを集めることであり、コンバージョンではありません。ですから、たとえば「一人暮らしにおすすめのレトルトカレー10選」のように幅広いユーザーの関心に応えられるテーマで記事を作ります。
村山 物件とはあまり関係ないのでコンバージョン(賃貸物件の問い合わせや契約など)は難しそうですが、たしかに多くの人が読みたくなるテーマなので集客は期待できますね。
小川 次に必要なのが「コンバージョンをアシストすることを目的とした記事」です。たとえば「一人暮らしのポイント」のようなテーマでつくられた記事ですね。先ほどのカレー記事よりターゲットユーザーは狭まりますが、テーマが不動産賃貸、つまりコンバージョンに近づきました。そして最後に必要なのが物件紹介など「コンバージョンへの誘導を目的とした記事」です。
村山 集客系の記事で人を集め、コンバージョンに誘導する記事でコンバージョンをとる。その間をアシスト系の記事でつなぐという流れですね。3つの目的をひとつの記事で満たすのは、やはり難しいと思いますか。
小川 不可能ではありませんが、メディアが取り扱うテーマや商材が限定されているなかでは、せいぜい数記事しかつくれないと思います。だからこそ、大半の記事は役割に基づいたKPIを設定する必要があります。
村山 そうなると、分析する際は記事のタイプごとにフラグをつけて管理したいところですね。Google アナリティクスであればカスタムディメンション(解析対象となるデータをユーザーが任意で設定できる機能)を利用することで、「どの著者の記事がどれくらい閲覧されているのか」、「記事の公開日からどのくらいの日数が経過したのか」など、ページビューにとどまらない豊富なデータを、分析者の意向に応じて追加できます。記事の公開時には、後に分析することを考えてデータを整えておきたいですね。
小川 記事のタイプが増えていくと、それぞれの記事が果たした役割を評価するために、記事ごとのアトリビューション(コンバージョンへの貢献度)の設計が大事になってきます。アトリビューションについて、過去、以下のようなブログを書いたことがあります。
アクセス解析業界でアトリビューションというと主に、「間接効果」といった意味を持ちます。ある効果が発生する事になった間接的な理由を示します。
もう少し分かりやすくしてみましょう。例えばあるサイトで商品を購入してくれた人がいます。その人はメールマガジン経由で商品を購入しました。つまり、メールマガジンの効果によって商品が購入されたという事です。
例えば、この人が初めてサイトに訪れたのはリスティング経由だったとします。その時にサイトに訪れ、メールマガジンを登録してくれて、商品の購入に至った。このようなケースの場合、「リスティング」も成果に何かしらの貢献をしたと言えるのではないでしょうか?
「アトリビューション分析」連載 その1:アトリビューションとは?
小川卓さんのブログ「Real Analytics」より引用
これは「集客」におけるアトリビューションの考え方ですが、コンテンツ設計においても「間接的にコンバージョンに寄与している」記事をきちんと評価すべきだと考えています。村山さんはいかがですか。
村山 コンテンツの分析をする際にアトリビューションを考慮することはもちろんあります。ある記事からコンバージョンが発生せずに直帰してしまったとしても、同じユーザーが次のセッションでコンバージョンしていることもあるからです。また、同じユーザーが異なるセッションで記事からメディアのトップページに繰り返し遷移しているのであれば、定期的にメディアトップページで、なんらかの情報を確認しにいきたいというユーザー行動です。それはコンバージョンではありませんが、サイトそのもののファンになってくれたことを示唆する動き、つまり潜在的なコンバージョンへの可能性を生み出したとも考えられます。こうした数字は重視したいと思っています。
小川 おっしゃるとおり、ユーザーの動きは重要ですね。私もGoogle アナリティクスの機能「ユーザーエクスプローラー」で一人ひとりの動きを解析しています。その結果をもとに、たとえば「カレーの記事から物件検索ページに進んでくれたユーザーがn人いました」とクライアントに報告します。アトリビューションをきちんと設計しておくことで、直接的なコンバージョンを生み出していなくとも、記事がきちんと“貢献”していることがわかりやすいです。
村山 ユーザーエクスプローラーは時間を忘れて閲覧してしまうほど、興味深いデータがたくさん取得できますね。ただ、メディアを訪れたすべてのユーザーの行動を確認していては、いくら時間があっても足りませんので、小川さんの言うとおりアトリビューションの設計などで確認するべきユーザーを絞り込むことが重要だと思います。メディア内のユーザー行動に関して、記事と記事の間の移動は確認できますが、記事ページ内におけるユーザーの動きは、どうのように観測していますか。
小川 定番ですが、どれだけスクロールされたのかや読了率などはチェックしますね。ただスクロール数は記事の長さの影響を受けるので分析指標として扱いが難しいですが。
村山 たしかに「スクロール量÷記事ページの天地サイズ」で取得されたデータには振れ幅ができしまいますね。小川さんの言うとおり、記事の長さによっても影響されますし、レスポンシブウェブデザインに起因する影響も考えられます。レスポンシブウェブデザインを採用しているサイトをモバイル環境で閲覧すると、デスクトップ環境ではメインコンテンツ(記事表示部部など)の横に位置していた「おすすめ記事」などのサイドナビコンテンツが、メインコンテンツの下に移動することがあります。つまり、モバイル環境では記事ページの天地サイズが長くなってしまう。この場合、スクロールが60%くらいでも実はメインコンテンツは読了されていた、という事象もありえます。
小川 そのとおりですね。より正確にユーザーの行動を観測すべく、いま実施しているのはH2タグ(記事内の見出しなど)が表示されたらログを取得する方法です。これなら記事のどの見出しまで読んでくれたのかがわかります。それに加えて補完的に滞在時間も見ています。
村山 H2タグで見る方法は良いですね。記事のどこにアクションボタンを設置するべきなのかもわかりやすくなりそうです。
小川 外部リンクのクリック数も見れば、良い離脱なのか悪い離脱なのかもわかりますね。
ユーザーの動きを分析することで経験則に過ぎなかった仮説を実証できる
村山 コンバージョンしたユーザーの動きについてはどう分析されているのでしょうか。
小川 弊社ではそうしたユーザーの一連の動きを分析できる環境を整えています。詳細をお話すると複雑になってしまうのですが、簡単に説明すると以下のようになります。
↓
2. お問い合わせ時の情報をPardotで取得し、その後の商談情報をCRMツール(Salesforce)と紐付ける。↓
3. SalesforceとPardotの属性情報をGoogle アナリティクスと紐付け、サイトやブログ上のどのような動きや行動が商談に繋がりやすいかを分析。
こうすると、成約までいったユーザーがどの記事をどんな順番で何分間、何回見たのかなどがすべて把握できます。連携した各データはGoogle スプレッドシート で一覧化しています。クライアントからはコンバージョンしたユーザーデータを他のデータと合わせて見てみたいという声もあるので、スプレッドシートでは各項目で並び替えができるようにしています。
各種データが複合されたHAPPY ANALYTICS社のアクセス解析レポート。「メディアへのアクセス」というシンプルなデータを出発点に、ここまで精緻なマーケティングデータを導き出す技術は圧巻だ。なお、この解析手法に関しては小川さんのブログ『Google データポータル作成例:弊社(HAPPY ANALYTICS)の場合』に詳しい。
村山 これはすごい方法ですね! ここまでできればコンバージョンの要因が可視化できますね。
小川 どんなユーザーのコンバージョン率が高いのかは、ウェブ担当者も感覚としては持っていることが多いんです。たとえば、リアルな店舗でのコミュニケーションが発生する業態であれば、「来店前に事例ページを見たユーザーは成約率が高い」のように。ただ、分析しなければこうした感覚は仮説のままです。弊社のユーザーログ解析の例のように、実際にユーザーの動きを追ってみると、仮説が実証されることが多い。極端な言い方をすれば、自社サイトへの流入元を調べるだけでも、検証材料が手に入ります。「リスティング広告から来たユーザーとオーガニック検索で来たユーザーでは成約率がぜんぜん違う。オーガニックの方が3倍も成約率が高い」といった事実が浮かび上がることもあるんです。
村山 そうなると「1クリックの価値」も数値化・可視化できそうですね。
小川 そのとおりです。本当のCPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)がわかりますね。また、仮説が実証されてくれば「オーガニック検索で訪問したユーザーには、成約プレゼントを打ち出してみよう」など、よりコンバージョンにつながりやすい施策につなげていけるようになります。
村山 なるほど。ここまでのお話は「成約」や「問い合わせ」など、明確なコンバージョンが設定できる場合の戦略でした。一方で、「認知拡大」や「ブランディング」といった、コンバージョンを設定しにくいテーマを、オウンドメディアの目的としているケースも多いと思います。この場合はどんなふうに分析されますか?
小川 ブランディングを計測するのは非常に難しいです。間接的な指標ですが、記事がTwitterやFacebookなどでシェアされた際の、「シェアしてくれたユーザーのフォロワー数」や、記事に付いた「いいね」数、はてなブックマーク上でのコメントのような、記事への公開言及数などは見ますね。また、メディアへのユーザーの再訪率も重要です。リピーターが増えているということは、間接的にブランド認知が増えているとも考えられるからです。
ただ、こうした数値よりも重要なのは「ブランド認知が上がった結果、どうしたいのか?」という点です。ブランド認知そのものは目的ではなく手段のはずです。ユーザーからに認知を得て「公式サイトの訪問ユーザー数を増やしたい」「オフィシャルSNSのファンを増やしたい」など、認知拡大のその先にどのような状態を期待するかで、より詳細な分析ができるようになってきます。
村山 Google アナリティクスなどの自社サイトにおけるデータを確認できるツールだけでなく、各SNSが用意しているプラットフォーム上における定量データ、定性データも複合して確認するということですね。分析していくと「いままであのブランドや会社に興味がなかったけど、少し興味がわいた」といったユーザーの感情の変化、いわゆる態度変容の発生も観測できる場合があります。小川さんはGoogle アナリティクスでどのように態度変容を分析されていますか。
小川 「ブランディングのその先」と同じように、態度変容も仮説を立てて検証することが必要です。ECサイトなら、「ユーザーが最終的に商品を購入してブランドのファンになってくれるとしたら、どんな行動をとるだろうか」ということを考えます。たとえば、ある商品の紹介記事を読んでくれたユーザーが、その後「ブランドストーリー」のような、ブランドの想いが書かれたページに遷移してくれたら、態度変容が発生した、と仮説してみる。こうした仮説をもとにユーザーをセグメントして分析を行います。カスタマージャーニーを活用するのも良いでしょう。
スモールビジネスにおける企業ブログとデータの活用法
村山 いきなり小川さんのようなアクセス解析を設計し実施するのは難しいですが、Google アナリティクスは設置も簡単ですから、必ず入れてほしいツールですね。基礎的な使い方でも、集客からコンテンツの改善など、オウンドメディア運用のさまざまなステップで有用なデータが取得できると思っています。
小川 ええ。まずは集客が必要です。分析するにしても集客がなければデータが集まりませんから。SEOやメディア運用の専門家である村山さんにお聞きしたいのですが、集客という点で見ると、メディアページは本体サイトのサブディレクトリに配置することが重要なんですよね。
村山 そうですね。詳細は、弊社の辻が語っている記事に譲りますが、企業の本体サイトとオウンドメディアでドメインが分断されていると、本来の価値を発揮できません。
小川 弊社のメインサイトとブログがまさにそうで、それぞれのドメインが違う、いわゆるクロスドメイン状態です。ブログははてなブログを使っていて、メインサイトとはクロスドメイントラッキングしているのでデータとしては繋がりが保たれていますが、この状態にはデメリットも感じています。
村山 クロスドメイントラッキングの設定は初心者の方にはちょっと難しいですし、正しく設定しないと、意図したとおりのデータが取得できないケースもあります。運営者の意図と異なるデータで、マーケティング上の大事な意思決定を行うのはリスクですよね。こうしたリスクをできるだけ避けるのであれば、オウンドメディアとメインサイトのドメインを共通化するサブディレクトリ運用で、データを取得しやすい環境をつくるのがベストです。
小川 新たなプランの「はてなブログBusiness」では、ブログをサブディレクトリに置けるようになったので、弊社でもようやくドメインを統合することができます。待ちに待った機能だったので、実はすでに弊社では申し込みしています。「はてなブログBusiness」のプロモーション記事だからこう言ってるわけではないですよ(笑)。
村山 サブディレクトリはメリットが多いので、広く普及するといいですね。はてな社さんが低価格でサブディレクトリ運用可能な新プランを提示したことで、ローカルビジネスやスモールビジネスを展開されている企業にも、ブログを活用したコミュニケーションのための選択肢が提示されたと思っています。こうした企業はブログをどのように活用し、どのようなアクセス解析をしていけばいいでしょうか。
小川 リアルな経験を生かした記事など、その企業でしか書けないことを書くことをおすすめしたいですね。「自社の身近な情報なんてユーザーに読んでもらえないのでは」と思うかもしれませんが、なにがユーザーの興味を惹くかはわかりません。だからこそ、Google アナリティクスを活用して分析してみてほしいですね。勘は外れることもありますが、データは正直です。簡単な解析でも、「意外とこういう記事がヒットするんだな」ということがわかってくるでしょう。
村山 再訪率などSNSでは取得できないブログならではのデータが得られることもありますからね。メディア運用のためのリソースは限られているかもしれませんが、SNSとブログをそれぞれ更新できれば、リーチできるユーザーも広がっていきますからね。
小川 そうですね。加えて、ブログはストック型記事を集積できるメディアで、それは企業にとっての資産になります。私のブログもアクセスが多い10記事中5つは5年以上前に書いたものですが、いまだにその記事をきっかけに問い合わせをいただきます。大規模な営業活動が難しい企業こそ、コンテンツを営業リソースとして活用してくといいですね。
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オプションを見る取材・文/山田井ユウキ
撮影・編集/はてな編集部