「ミスタードーナツを救え」は“悔しさ”から生まれた。話題のブログを書いた大学生sora.Fさんに聞く、書くことへの熱いこだわり

2019年10月8日に公開されたブログの記事「ミスタードーナツを救え」。ミスタードーナツに対する深い愛が惜しげもなく詰め込まれたその内容は、公開わずか数日で1,700ブックマーク、Twitterのトレンド入りと、驚異の注目を集めました。

soraaoijin.hatenablog.com

記事を書いたのは、京都在住の大学生であるsora.F(id:soraaoijin)さん。

sora.Fさんは、ミスタードーナツへの激情をなぜブログに書こうと思ったのでしょう。詳しくお話を伺うため、執筆者のsora.Fさんにはてなオフィスへお越しいただきました!


sora.Fさん。京都市内の大学に通う2回生。
ミスタードーナツの商品で一番好きなのは「ハニーチュロ」。


この日、編集部が用意したミスタードーナツのドーナツに加え、なんとsora.Fさんからお土産にドーナツを頂き、合計20個以上のドーナツが会議室に集まりました。



たくさんのドーナツの良い香りに包まれながら、インタビューのスタートです。

全国のミスド好きが一斉に反応した記事「ミスタードーナツを救え」

―― 「ミスタードーナツを救え」を書いたきっかけについて教えてください。

大好きなミスタードーナツについて「2016年から年間80店舗のペースで大量閉店している」というニュース記事を見たことです。当時は自宅にいたのですが、比喩ではなく、リアルに膝から崩れ落ちました。

もともと自分は食に興味がない方で、毎食シリアルでも平気なくらいなんですが、ミスドだけは週に2~3回のペースで食べるほど大好きで。

―― そこまでお好きなんですね。

はい、大好きです。店内の気取らない雰囲気はもちろん、ショーケースからドーナツを選ぶ時の「楽しさ・夢・わくわく感」は唯一無二だと思います。この価格帯でこのクオリティのドーナツを販売し続けるのは並大抵の企業努力じゃない。

食べる箇所や、添える飲み物によってドーナツの表情もまったく変わってきます。おいしくて楽しいミスタードーナツには、もうずっととりこになっています。


「チョコファッションと牛乳の組み合わせは週一で摂取しないと気分がめいる」と語るsora.Fさん
「チョコファッションと牛乳の組み合わせは週一で摂取しないと気分がめいる」と語るsora.Fさん


そんなミスドが年間80店舗も閉店しているなんて、もうショックすぎて。今回の記事はその衝動で書きました。

―― 「ミスタードーナツを救え」を書き上げるのに、どのくらいの時間がかかりましたか。

ブログの記事は、だいたいいつも一週間くらいかけて書いていて、今回の記事も同様です。初めの1日で導入・中身・オチまでをガーッと書き上げて、その後の6日間で辞典などを使ってより良い表現を探り、行間なども細かく調整して完成させます。

最初はミスドへの情熱を込めすぎて5,000字以上あったんですが、「誰がそんなに読むねん」と気付いてからだいぶ削って、あの形になりました。

―― ものすごく丁寧に仕上げていらっしゃるんですね。大ヒット記事になったと思うのですが、どんな心境でしたか?

いつも通りブログに投稿して自分のTwitterで宣伝をしたら、みるみるうちにリツイートの数が5万件を突破して。普段は4リツイートくらいなので、とにかくびっくりしました。

sora.Fさんの記事は全国のミスタードーナツ好きの大きな共感を呼んで、7万件のいいね、5万件のリツイートを獲得し、「ミスタードーナツ」はTwitterのトレンドワード入りを果たしました。記事のPVは120万を突破したとのこと。


―― あの時、全国のミスタードーナツ好きがTwitter上で団結したように感じました。

ですよね! 「立ち上がれ! 革命の狼煙(のろし)!」というようなノリで、ミスド好きが一斉に沸き立ちましたよね。本当に驚いたし光栄でした。僕は、大量閉店のニュースを聞いてから、「自分だけしかミスドを好きじゃないんじゃないか」なんて思っていたので。

記事が広まるにつれ、全国のミスド好きの方からもたくさんの暖かいコメントを頂きました。「私も好きでした」「寂しいですよね」などの共感の声から、「揚げたてのオールドファッションは衝撃のおいしさ」「今度復活するドーナツの予告」など、僕が全然知らなかったミスドの情報まで……。

「誰も興味ないやろ」と思っていた記事がきっかけで、多くの人とつながることができたんです。好きなことはもっと積極的に発信しても良いんだ、と気付けたし、もっとミスドについて語りたいなと思いましたね。

口下手な自分でも面白さを発揮できる、ブログは自分の「居場所」

―― sora.Fさんは、どうして文章を書き始めたんですか?

もともと、ライターの熊谷真士さん(id:manato-kumagai)やヨッピーさん(id:yoppymodel)、ARuFaさん(id:Arufa)が好きで、文章に興味がありました。本格的に書き始めたのは2年前、浪人生だった時ですね。

浪人中の息抜きとして、週に一度Instagramへふざけた長文を投稿していました。友達によくそれを褒めてもらえたので、ブログへ進出しました。浪人中って、遊びに行ったり買い物したりするのは後ろめたいんですけど、ブログを書くのは国語の勉強といえるので胸を張ってできるんですよ。

あと、実はもうひとつ「文章を書き始めた大きな理由」があって。僕、こうして人と対面でしゃべっている時、全然面白くないじゃないですか。

―― そんなことはないと思いますが、そうお思いなんですか?

はい。本当に思っています。


sora.Fさん


僕、子供の頃からアニメや漫画、スポーツ、ドラマのような「みんながハマるもの」にほとんど興味が湧かないまま過ごしたので、本当に友達がいなかったんです。ただただ部活・塾・読書・睡眠のみで暮らしてきたので、当然コミュニケーション能力はずっと習得できないまま、こうして大人になってしまって。

そんなに面白いことも言えないし、アドリブ力もないし、頭の回転も遅い自分が、ずっと悔しかったんです。だから、「俺はもっと面白いんやぞ」ということを世界に表現したくて文章を書き始めました。

しゃべるというコミュニケーションが苦手な自分でも、文章を書けば面白い自分を表現できる。僕が書いているブログの根底には、常にその気持ちがあるんです。

自分を表現できる「書く」ことへの強いこだわり

―― sora.Fさんは表現する場として、どうして「ブログ」を選んだのでしょうか。

長文で思いの丈をぶつけるのなら、やっぱりブログかなと。それに、いろいろ文章を書くサービスを試してみたんですが、はてなブログが一番使いやすかったんです。シンプルで削ぎ落とされた最低限の機能が好きですね。憧れているライターの熊谷真士さんが使っているというのもあります。

―― 「1週間かけて記事を書く」とのことですが、その間の作業の流れについて具体的に教えてください。

僕は何か衝動があった時にブログを書くんですが、初日はその勢いに任せて、導入からオチまでの構成を一気に書き上げます。そして、いったん時間を置いて冷静になってから、6日間ほどかけて言い回しを工夫するなどの表現を乗せるようにしているんです。

ミスドの記事も、初日の時点では砂漠も輪状に凝縮されてませんし、ミスド人(ミスドんちゅ)も誕生していなかったんですよ。


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「ドーナツ表面の凸凹は人生の起伏を表現してるんですよ絶対」などの言葉が飛び出す


情熱的に書いた記事を、いったん冷静になってから改めてじっくりと客観的に読み返すのは、毎回絶対にやります。ドーナツと同様に、しっかりとプレーンな記事(生地)を作るからこそトッピングが生きてくるわけですね。

―― 「行間も細かく調整する」とのことでしたが。

行間にはかなりこだわります。なぜかというと、行間を工夫すると圧倒的にテンポがよくなって、どんな人でも読みやすい文章になるからです。

今のネットユーザーさんは、短文化したネットニュースや文字数の少ないSNSなどが身近にあるので、長文に慣れていない場合が多い。だから長文が基本の「ブログ」って、いわば「時代錯誤なメディア」だと考えているんです。

でも僕は文章が好きだし、短文が主流となっている時代でも「読んでもらえるブログ」を書きたい。そのため、テンポよく読み進められるよう、行間を細かく取る工夫は欠かさないようにしています。

そうやって柔軟に行間や文章形式を変更できるのは、ブログの強みだと思いますね。特に、行間を確認する際には、はてなブログの「プレビュー機能」にかなりお世話になっています。21世紀最高の機能ですよ!


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はてなブログの機能。編集中の記事が実際にどのように表示されるかをプレビューできます。


―― 記事のタイトルについても伺いたいです。Twitterでは、記事を読んでない人もハッシュタグ「#ミスタードーナツを救え」を使用するくらい大流行しましたね。

タイトルもかなり考えました。最初は、「ミスド救ってあげてー」みたいな感じのタイトルだったんです。「ちょっと男子〜」って掃除を促してくる女子みたいなイメージで。

でも、それだとインパクトに欠ける。「SNSで共有されやすいタイトルって何だろう?」と自分なりに考えた結果、「ミスタードーナツを救え」に変更しました。

戦争や革命の歴史にも通じる話だと思うんですが、スローガンに近い強く呼びかけるタイトルは、共有されやすく、人々を団結させやすいんです。強く言い切ることによって、掃除を促す美化委員から民衆を率いるジャンヌ・ダルクに化けたわけですね。今回の“ミスド革命”において、このタイトルの役割はかなり大きかったと思います。

ブログは自分の居場所。だからこそ、自己満足で終わらせない

ゴールデンチョコレートを手にうれしそうなsora.Fさん
ゴールデンチョコレートを手にうれしそうなsora.Fさん

―― ブログ「タイトル未定」を続けて1年。現在、ブログはご自身にとってどんな存在ですか。

居場所です。現実でスベっても、「俺にはブログがあるんやぞ」という居場所になっています。ブログでいつでも自分を表現できるのは、すごくありがたいですね。

また、ブログを書くことで「殻に閉じこもったままでもいいのかな」と思えるようになりました。しんどいのに、無理やり人前で面白いことしようとしたりして、自分の殻を破ろうとあがいていた時期もあったんです。

でも今は、殻に閉じこもったからこそ情熱的に書くことができて、それが認められた時に本当にうれしい、と思えていますね。

……何語ってるんやろ。カットしますか、これ?

―― しないです、しないです! では、sora.Fさんがブログを続けるに当たって、考えていることはありますか。

ブログって基本、自己満足じゃないですか。でも「自己満足で終わらせたくない」とは思います。

ブログで長文を書けるようになって、自分を表現する幅も広がりました。だから、せっかくならいろいろな人に読んでほしいし、なんなら面白いと感じてほしいので、常に読者に向けて楽しみを持たせるひと工夫をいつも入れるよう意識していきたいと思っています。

あんな記事を書いたやつがめっちゃ語ってしまった……これも、カットしますか?

―― いえ! カットしません! 最後に、sora.Fさんのこれからについて教えてください。

将来は「書く仕事」がしたいと思っています。ぼんやりですが、ライターか、Webメディアの編集長になりたいです。

なんにせよ、仕事にしても趣味にしても、今後もずっと書くことは続けていきたいですね。何より、楽しいですから。

お話を伺った人:sora.Fid:soraaoijin

大学生ブロガー。将来の夢はWebライター、もしくはケーキ屋さん。
ブログ:タイトル未定
Twitter:@13237sora