埋もれがちな"見るべき映画"を知らせたい。年間約100本を鑑賞する映画ブロガー・CDBさんに聞く、読まれるTwitterとブログの工夫

内容の濃い映画レビューを書き、年間約100本の映画を見るというCDBさん(id:Cinema2D / @C4Dbeginner)のブログ「CDBのまんがdeシネマ日記」。はてなブックマークで話題になる記事も多く、2019年2月の開設から約1年で多くの方に読まれるブログとなっています。現在では、アクセスの50%以上がTwitterからの流入とのことです。

ブログではほぼ全ての記事にイラストを添え、Twitterでも活発に投稿するCDBさんに、ブログとTwitterの使い分け、Twitterからブログが読まれるための方法、1年前にブログを作ってみて寄稿の依頼が来たことなどについてお話を伺いました。

『セーラー服と機関銃 -卒業-』の感想をまとめたくて、はてなブログを始めた

――Twitterで映画について活発に投稿するようになったきっかけを教えてください。

もともとは、初心者としてCGを勉強するためにTwitterでアカウントを作りました。それが2010年くらいでしたが、その後はほとんどツイートをしていませんでした。

それがある時、橋本環奈さん主演の映画『セーラー服と機関銃 -卒業-』(2016年、以下『セーラー服と機関銃』)の感想を書いたところ、多くの人の目に触れました。それがきっかけとなって、その後も映画についてツイートするようになりました。

――現時点(2020年2月)でフォロワー数が4万7千を超えています。最初にTwitterを始めた時は、こんなに増えると思っていましたか?

全然思っていませんでした。

――1年前にブログを始めたきっかけは?

Twitterを始めた当初はTwitterのモーメント機能を使って見た映画の感想をまとめていたんですが、ブラウザでスクロールしても全部は表示されなくなり、検索にもうまく引っかからなくて。

例えば先ほどの『セーラー服と機関銃』の感想ツイートは6,000RT(リツイート)されているんですが、最近橋本環奈さんについて気になった人が過去の映画についてGoogle検索などで調べたいと思っても、僕のツイートを見つけることはほぼないんですよね。過去に書いたものをまとめる場所があった方がいいのかなと思って、ブログを始めました。

CDBさんの最初の記事(2019年2月)

――はてなブログを選んでくださったきっかけは何でしょう?

Twitterで「どんなブログを使えばいいか」と聞いてみたら、周りの映画ファンの人たちがはてなブログについて「簡単だしおすすめです」と教えてくれました。ブログを使っていて分からないことが出てきた時に、周囲の人に聞きやすいというのが強かったですね。

――大変ありがたいお話です! ブログの開設以降、ブログでもTwitterでもコンスタントに情報を発信しています。どう使い分けているのでしょうか?

Twitterには文字数がすごく短く書きやすくて、小さな時間の隙間にすっと入っていけるという利点があります。なので、見た作品に関するちょっとした感想をたいてい書いていますね。その中ですごく面白かったもの、残しておきたいものはブログにも書いて、Twitterで紹介します。

サラリーマンが電車の中でぱっと見たり、映画を見る前にちょっと感想を探してみたりするのはTwitter、「文章を読むのが好きな人が読むもの」「本が好きな人たちが読んでくれるもの」がブログ、というイメージがあるんです。学校の教室で例えると、Twitterは「隣の席の人としゃべっている」感じで、ブログは「みんなの前で何か発表する、作文を書く」という違いです。

Twitterの見せ方はキャッチコピー。ブログの内容をツイート3つ分に

――ブログとTwitter、それぞれの反応に違いはありますか?

全く違いますね。Twitterでは反応があると通知が来ますが、映画好きの方だけではなくタレントのファンの人や一般の人に届いた時には通知の数が増えるという体感があります。その瞬間瞬間でぱっと感想を見たいという方に届くのだと思います。

ブログの方は、文章を読む習慣がある方が読むためなのか、長めの記事でも読んでもらえます。まとまった文章は、Facebookやはてなブックマークなど、Twitter以外の場所にも広がっていくこともあります。

はてなブックマークでは議論の材料として話題になる場合がありますね。『CATS』の記事がまさにそうでした。前評判はよくなかったかもしれませんが、「『CATS』ってそこまでつまらないものでもないな」ということが分かっていただけたんじゃないかなと思います。

www.cinema2d.net

――Twitter以外にも、ブログのPVやコメントなど、記事に対するリアクションはさまざまです。そこは意識していますか?

「どれくらいの人が読んでくれているのか」は、やはり気になります。はてなブログの管理画面では、「どこから来た人がどの記事を読んでいるのか」が分かりますよね。

週刊はてなブログにおける、ある日のはてなブックマークからのアクセス先ページ

ブログへの流入の過半数はTwitter経由なんですが、GoogleやTwitterなど、メディアによって読まれ方が分かるのは面白いです。Twitterだけではおそらく読まれなかった方々にも読んでもらえているので、そういう点ではてなブログを使っていてよかったと思っています。

――Twitterの投稿とブログでの見せ方について意識されることはありますか?

Twitterは1ツイートずつキャッチコピーを連ねていく、ブログはパンフレットの推薦文を書く、というイメージです。

どんな映画にも良い点と悪い点があるのですが、Twitterで140文字に分断すると、悪い点を書いたツイートだけがRTされてバズってしまうので注意しています。そういう時にブログでは、ひとかたまりのものとして良い点と悪い点を並べて書くことができます。

Twitterは1つのツイート単位でRTされるので、なるべく短くまとめます。連続ツイートであっても必ずしも全部読んでもらえるとは限りませんから、文体もブログとは異なってきます。本格的に長く書きたいという内容であれば、ブログでまとまった文章として起承転結を意識して書くこともあります。

――Twitterからブログへのアクセスが多い中で、「こうすると読まれやすい」など、アイキャッチ画像やタイトル、クリックされるための工夫などがあれば教えてください。

ブログを書いた際にはTwitterに必ず載せるのですが、その際は、記事の内容を140字以内で3ツイートくらいに要約し直しています。多くの人に読んでもらうためには、まずは誰かの目に引っかかって広まるまでが大変ですよね。映画の作品名を含めているとTwitterで検索して拾ってくれる方がいるので、いろいろな人に見てもらえると感じます。

――ブログの内容を要約してツイートすると、「Twitterを見て終わり」ということにはならないのでしょうか?

ブログが読まれないかというと、実はそうでもありません。要約のツイートは、ブログの内容の目次になるよう意識しています。目次を見て中身を読んでみようと思った方がブログに飛んでくれるという感じですね。

ある程度書いてから1ツイートの140字にするためにどんどん切り詰めていくと、内容がぎゅっとまとまってきます。文をコンパクトにしていくうちに、今のようなスタイルになりました。

Twitterではまずは140字でいったん区切るというリズムがあるので、そのリズムが自分に合っていて、ブログで長文を書くのが苦にならなくなっているように思います。最初からブログで長い文章を書こうとしたら、途方に暮れていたかもしれません。

――ご自身で描いたイラストをアイキャッチに使っています。その理由とアイキャッチ画像のコツを教えてください。

イラストを付けてブログを書いているのは、読む方にとって親近感が湧くんじゃないかと思ったからです。

何かしら絵が描いてあると「量産するタイプの記事ではなさそう」「人がちゃんと書いた記事らしい」というイメージを持ってもらいやすいんじゃないかと思っています。

アイキャッチ画像では、1枚の中にブログの内容を収めるようにしています。ぱっと見て興味を持ってもらえる見取り図になるような。見た人にとって内容が分かるようにしているのは、Twitterと同じです。

映画『午前0時、キスしに来てよ』アニキャラ実写無双の橋本環奈ちゃんに「何の取り柄もない平凡なJK」の役 - CDBのまんがdeシネマ日記

Twitterで見てもらえなくても、ブログなら後から読まれるかも

――Twtterで拡散を狙うことは意識されますか?

いまだに「何がウケるのか」は全然分からないですね。たくさん読まれた橋本環奈さんに関するツイートは夜中に書いたので、そんなに広まるとは思っていませんでした。何が反響があるか、反応があるかは書いてみないと分かりません。

――ブログを書くタイミングはどんな時でしょう?

だいたい自宅や喫茶店にいる時にiPad Proを使って書いています。イラストも描けてアップロードできますしね。イラストに描き入れる文字はブログで読みやすくしたいので、大きめにしています。

手早くどんどんイラストを描き進めるCDBさん
手早くどんどんイラストを描き進めるCDBさん

――記事を書いてもリアクションがなかったり、思うように読まれなかったりするものもあるかと思います。その中で、映画について書き続けるモチベーションについてお聞きしたいです。

小規模な映画について書いた時は反応が少ないんです。ほぼ単館公演のような映画は、そもそも見た人自体が少ない。Twitterでは流れてしまってなかなか見てもらえないことはあります。そういう時にブログに書きためておくと、後から参照されることがありますね。別の話題で盛り上がったタイミングで、他の作品についても後から読まれるということもあると思います。

はてなブログは「書いたものを社会に運んでもらえる場所」

――CDBさんは外部の媒体への寄稿もされていますが、そのきっかけを教えてください。

『映画刀剣乱舞』の感想をTwitterで書いたらすごく広まって、最初の本格的な依頼はそこからだったと思います。あとは「ブログを見たので」という理由ですね。とある編集者さんに、「ブログはやってないんですか? ブログで読者がいると編集会議で企画を通しやすいんです」と聞かれたことがありました。Twitterだけだと140字分しかまとまっていないので、たぶん「長い文章を書けるかどうか」を見てくださっているんだと思います。

――複数のWebサービスを使われる中で、CDBさんにとってはてなブログはどういう位置付けですか?

はてなブログは、書きためておける倉庫、書いたものを保存して後から簡単に参照できる場所であり、Twitterとは全然違う方法で社会のいろいろなところへ書いたものを運んでもらえる場所だと強く感じますね。Googleの検索結果にも運んでもらえますし、ブログがきっかけで複数の媒体から寄稿の依頼もいただきました。

――ブログを書いていて楽しい時はどんな時ですか?

自分の感想を描いていて、自分の気持ちをうまくまとめられた時、整理できた時はとてもすっきりした気持ちになりますね。自分の中で納得し、再整理できたといいますか。楽しい趣味でよかったなと思います。

――はてなブログでは映画のほか、本やアニメ、漫画、ゲームなど趣味の感想や考察を書かれる方がたくさんいらっしゃいます。好きなことを書き続けているブロガーさんに対して、自分はこうだったというコメントをいただけるとうれしいです。

Twitterでもそうなんですが、同じようなことを書いていてもあまり話題にならなかったり、いいと思ったものを書いても読まれないことも多いので、難しいですよね。「伝わりやすく、分かりやすく」というのは考えますが、いわゆる「バズるかバズらないか」は、どんな人にRTされるかによっても大きく変わります。

木村拓哉さん主演の映画について書いた時は、糸井重里さんなど木村さんの周辺の方にRTされてすごく読まれました。自分の発信する内容には限らず、「誰が拾ってくれるか」が要因となるんじゃないかと。はてなブログに関して言えば、その内容を拾って広げてくれる人がいて、いろいろな読者さんの目に留まりやすくなると思います。


CDBさんがインタビューの間の短い時間を使ってさらさらと書いた絵

あまり話題にならない「見るべき映画」について書いていきたい

――CDBさんは年間どのくらいの映画を見ていますか?

だいたい100本くらいです。6本見ると1本無料で見られるTOHOシネマズの仕組みを使ったり、安く見られる映画館で見たりしています。

――見た映画は全部ブログに書いているのでしょうか。

見た範囲で印象に残った作品についてTwitterやブログに書き残すという感じです。基本的には、せっかく見た映画なんだから全部きちんと書きたいと思っています。でも「あれはよかったな」と思っても、忙しかったり、タイミングが合わなかったりして、書けずにそのままになっている作品もたくさんあります。

最初にお話しした橋本環奈さんの『セーラー服と機関銃』がまさにそうでしたが、「あまり知られていないものについて『面白かったよ』と知らせたい、見るべきものがここにあるよ」と感じた作品は書く優先順位がすごく高くなります。世の中で既に評判になっている映画というのは多くの人も見て勧めているので。

――少しニッチな映画を取り上げるんですね。

「実はこうなんだ」という作品を紹介すると、読んでもらえる確率が高くなると思っています。フックとして議論の土台になりやすいのかもしれません。

――ブログで取り上げている映画は邦画が多いですね。外国の映画も観ますか?

洋画ももちろん面白いですし、韓国映画もすごくクオリティが高いです。でも、埋もれがちなのは邦画だと思っているんです。映画評論家でも感想を書かなかったり、あまり話題にならなかったりする作品が多いと感じます。「ランキングで何位だった」「興行収入がいくらだった」とだけ言われて内容にはあまり触れられないタイプのものを選んでいる気はしますね。

――ちなみに、一番好きな映画はなんですか?

ランキングをつけるのが得意ではないので……難しいですね、うーん……。一番たくさん感想を書いたのは『ちはやふる』シリーズ(全3作)*1だと思います。『ちはやふる』の感想で50くらい連続ツイートしたんです。あまりに大量になったのでブログでまとめました。

『ちはやふる』も公開前は期待する声が少なく、主演の広瀬すずさんも「イメージと違う」と言われていました。「少女漫画が原作」「若い売れっ子の俳優を集める」という、邦画によくある“ヒットしない映画”の要素が多かったんですが、監督はそれを全部プラスの要素に変えているんです。やはり『ちはやふる』シリーズはすごかったと思います。

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――ご自身の趣味や発信について、「今後こうしていこう」ということがあれば教えてください。

人物にクローズアップして書くことが自分としては好きで、向いていると思っているので、好きな作品、好きだけどあまり知られていない作品について引き続き掘り下げて書いていきたいです。例えば、はてなブログでは今のような1枚のイラストだけではなく、「何枚かイラストを入れたらいいのかな」「漫画っぽいシーンがあってもいいのかな」などいろいろ考えています。

*1:小泉徳宏監督。当初2部作として『ちはやふる -上の句-』『ちはやふる -下の句-』が2016年に公開され、完結編『ちはやふる -結び-』が2018年に公開された。