映画『ドライブ・マイ・カー』は「過程と細部を堪能させる作品」。はてなブログに投稿された感想をピックアップ!

ドライブ・マイ・カー インターナショナル版 [Blu-ray]

2021年8月に公開された、映画『ドライブ・マイ・カー』。

カンヌ国際映画祭での4冠獲得をはじめ国内外で評価が集めるほか、各地で再上映が開始されるなど、公開から5ヶ月が経過した今なお、注目を集めています。

はてなブログにも、映像・言葉・自動車・演技など、様々な部分に着目した感想が投稿されました。

自動車から見る「過程と細部の描き込み」

dreamy-policeman.hatenablog.com

また車という観点でもう少し細かい点を書くと、家福を演出家として広島に招いた公的機関の公用車として登場するミニバンが、広島に本社を置くマツダのビアンテ(不人気につき17年に生産終了している)だったという芸の細かさも映画のリアリティを高めていた。おそらく誰も意識しないくらいのさりげなさだったとは思うが、同じくらいの細かさがそれ以外の部分、例えば衣装や音楽や録音などにも張り巡らされていたと思えば、あの映画の異常なまでの説得力にも納得がいく。

「この映画が結論や主題によって引っ張るものではなく、過程と細部を堪能させる作品だった」という ドリーミー刑事(id:dreamy_policeman)さん。「かつてこの車を本気で手に入れようと思った」というサーブ900をはじめ、本作に登場する自動車について詳しく語ります。

”どうして日本の男性監督は、男性の内面を描くのにあたって女性の姿を『借りる』のか。”

matsufusa.hatenablog.com

『ドライブ・マイ・カー』における2人の重要な女性は対照的で、渡利は寡黙、音は饒舌で神秘性を備えた女性として描かれる。それぞれを表象する生き物の提示のあと、最終的には忍従を能力として備える存在、犬がスクリーンに映される(犬は大きな声で吠えることができるが、しつけられ、鳴き声を抑制することによって人間と共生する)。

本作の主要人物・渡利みさきの性質が「本来備える声を抑制することで人間と共生する生き物」である犬を通じて表現されていることに「強い抵抗を感じる」という id:matsufusa さん。登場人物を表象する生き物の提示やカメラワークなどの「映像言語」を読み解くことで、男性の映画監督による女性の描き方について論じます。

利他と「信頼と安心」

yr00mt.hatenablog.com

原作において、男性である家福には致命的に理解不可能で、まるで理性の外にいるかのように不可解な「謎」であった「女の人」の音を、映画『ドライブ・マイ・カー』ではみさきを通して複雑で立体的な肉をそなえた人間として、描きなおしていた。他者は理解し難い側面を備え、ときに自らを傷つけるかもしれないけれども、それはけして「女の人」が理性の埒外にある「謎」だからではなく、他者とはそもそもが「自分のコントロール下」にある存在ではないのだ、と。

id:yr00mt さんは『「利他」とは何か』(集英社新書)を引きながら、登場人物の行動について考えます。原作や村上春樹の他の作品、そして今作の監督・濱口竜介の著作にも言及しながら、「まさに原作への『信頼』に満ちたものだと感じて、村上作品の映画化としても濱口監督の新作としても深く楽しんだ」と語ります。

「あの映画の中で成り立つユートピアの原点」

ecipslla.hatenablog.com

「言葉の身体性」ということについてぼんやりと思いをめぐらせていた。言葉のうちでも人が発する声というべきか。濱口竜介が大事にしているという本読みのシーンを咀嚼して、あれはあの映画の中で成り立つユートピアの原点を垣間見るシーンだったのかもしれない。言葉は身体を媒介としたメディアであるのだけれど、メディアである以前に身体と分かつことができない状態がある。そういったことをまざまざと考えざるを得ないユートピアがあの映画だった。

人が発する言葉について考える id:ecipslla さん。登場人物たちの言葉や目線が交わらないシーンからは、「人と人の思考はすべてが交わることなどあり得ない」という苦しみを見て取れたといいます。

はてなブロガーが語る『ドライブ・マイ・カー』

様々なポイントに注目して見ることができる映画だからこそ、たくさんの感想が集まりました。

以下には、詳しく取り上げることができなかったブログをご紹介します。

自分が気になった点や、逆に自分では気づかなかったことについて、ブログを読んで考えてみませんか?

「自己という呪い」
『 ようやく、ドライブ・マイ・カー。』 - will

”ゴミは、単なる廃棄物ではありません。”
ゴミから読む映画「ドライブ・マイ・カー」 - 日比嘉高研究室

「邦画をLAのムービーゴーワーたちと一緒に見たい」
映画 Drive My Car を見た。濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』 - 英語あそびなら天使の街

「ほとんど一緒に車に乗っている感覚にさせられて」
開我的車 - あることないこと

”小説を没頭して読んでいるときのあの緊張感や集中がずっと続く。”
映画『ドライブ・マイ・カー』鑑賞記録 - ひととび〜人と美の表現活動研究室

「なんだか霊的な空気を感じる映画」
すごいたいけんだ - しんぱちのブログ

「あ、多摩ナンバー」
2021年に1杯のアイスコーヒー - &

”身ぐるみ剥がされたような気持ちになった。”
20210820 - 沢渡日記

最高の空間・自動車
自動車という親密空間であり人生「ドライブ・マイ・カー」感想 - 抹茶飲んでからマラカス鳴らす

「この作品ですっかり三浦透子にはまってしまった」
「ドライブ・マイ・カー」を観た - Like a notebook

「西島秀俊は、え、こんな顔するんだ?」
■ - 液体か、涙は または水とゆめ

”この俳優役の岡田将生が素晴らしくハマっていた。”
映画『ドライブ・マイ・カー』を見た - 生存記録

「こういうの全部『コミットメント』で説明がつくか……」
8月後半〜9月前半 本と映画の記録 - my lips are sealed

「テクストに心を開く」
やさしいどらやき 🐇 - p a c a p a k o t o p a r i s

"映像に余計なものがないのだと思った。足し算ではなく、引き算のやり方。"
「ドライブ・マイ・カー」をめぐる断片 - 街角モノローグ

”そしてロケーションもいい。”
『ドライブ・マイ・カー』 - つれづれぶらぶら

"エコリウムという名前が付けられている。/ ここを西島とドライバーが歩いて行った。"
ドライブ・マイ・カーのロケ地に行ってきた - けいじいの徒然雑記

「手話ほど映画向きの表現方法はないのではないか」
映画「ドライブ・マイ・カー(2021)」感想|サーブ900、舞台演劇、チェーホフ、手話、どの話をしようか。 - 353log

”成り代わりの物語である。”
『ドライブ・マイ・カー』のこと(ネタばれあり) - 無言の口約束

「トンネルを抜けると無音でキーン」
暑いですな、晴れ - ザッソー

「これほどテキストの物語を描き切った作品もないのではないか」
『ドライブ・マイ・カー』を観た - 映画と映像とテクストと

映画を観て思い出した、ドライブの記憶
人生最高のドライブ - 私は文章が書けない

記憶とスクリーンの景色が反応を起こす
2021/9/2 - 日記 2020〜

フランス語の「自動車」
La Voiture - にっき

「ひとつのやり取りを最初から最後まですべて映しきってしまうような、そんな場面の連続」
ドライブ・マイ・カー - at-oyr

”父親は2015年に死んじまったが、最近、「お父さんのクルマに乗りたいなあ」と思ってたりする。”
ドライブ・マイ・カー - 國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

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語りたくなる作品を観たあとは

思わず語りたくなるような映画、音楽、文学作品。

そんな作品を受け取ったときに感じた思いは、ブログに残しておきませんか?

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