I'll be backとあなたは言った。あれは嘘じゃないんだろ。シュワルツェネッガーへの追憶とブログ

週刊はてなブログを運営する「週刊はてなブログ編集部」と、クライアントのオウンドメディア記事を制作する「はてな編集部」が合同でブログを紹介する連載企画「編集部が気になるブログ」。今回ははてな編集部の初瀬川が俳優、アーノルド・シュワルツェネッガーにまつわるブログを紹介します。

なあ、アーノルド。

1991年を覚えているかい?
忘れようったって、忘れられるもんじゃない。
『ターミネーター2』が公開された年さ。
僕はまだガキで、映画の楽しみ方なんてろくすっぽ知らなかった。それでも、これはとんでもない傑作だって思えたことを、はっきり覚えているよ。
あなたはというと、「マッチョ俳優」なんて枠を飛び越えて、史上最強のアクションスターとして、世界中でマシンガンをぶっ放していた頃だったよな。

なあ、アーノルド。

それじゃあ、2003年を覚えているかい?
こっちは忘れちまったかな?
あなたは低迷が続く俳優業に見切りをつけたかのように、カリフォルニア州知事になっちまった年さ。
僕はというと、「好きな俳優はシュワルツェネッガー」なんて、気恥ずかしくて人に言えなくなっちまった頃だ。

考えてみてくれよ。『セブン』を観て、『マトリックス』を観て、僕の映画の好みはまったく変わっちまったんだぜ。あなたが上腕二頭筋や大胸筋を見せびらかしてマシンガンをぶっ放せばそれでOK、なんて世界は完全に過去のものになってしまったんだ。

僕は間違いなくあなたから離れてしまったけれど、それでも、政界に打って出たあなたを見て、寂しくなっちまったんだ。ああ、“向こう側”に行ってしまったんだ、とね。
もちろん、知事の座を退いた後、いまにいたるまで映画に出続けているのは知っているよ。
ただね、それら作品を観ても正直、「無言」以上の感想が出てこないから、ますます寂しくなっちまうんだ。
あなたが繰り出す爆発と銃弾の雨に、僕が心躍らせることは、もうないのだろう。
僕もまた、“向こう側”に行っちまったんだ。

だからね、アーノルド。

僕はあなたへの追憶を、ブログの世界に探してみるよ。
きっとそこには、世界中を興奮させたあなたのアクション&ヴァイオレンスの断片が残されているはずだから。


こんにちは。はてな編集部の初瀬川です。
お付き合いいただいてすみませんね。シュワルツェネッガーを思うと、どうにもポエムが忍び寄ってきていけねえ。あるでしょ、そういうの。
ご存じかとは思いますが、アーノルド・シュワルツェネッガーといえば1980年代から1990年代前半にかけて、まさに映画界を席巻するかのようにヒット作を連発したアクションスターです。劇場のみならず、往時はテレビでも氏の作品がこれでもかと上映されていたので、きっとご覧になったことがある方も多いでしょう。

残念ながら、現在において氏の存在感は微妙といわざるを得ず、日本では劇場公開スルーされることも珍しくありません。それゆえ、シュワムーヴィーを人がどのように楽しんでいるのか、SNSなどを眺めてもなかなか伝ってきにくいのが現状なのです。だったらブログはどうだ、とばかりにはてなブログの世界を覗いてみると、そこかしこにシュワルツェネッガーを語るエントリーが見つかりました。

大傑作『ターミネーター2』の知られざる小ネタ集

シュワルツェネッガーの代表作といえば、1991年公開の『ターミネーター2』を挙げる方が多いでしょう。映画史に残る傑作ともいわれる同作だけに、ネットにはさまざまな評価や論考が散見されますが、興味深いのはタイプ・あ~る(id:type-r)さんによる「裏話」を切り口とした振り返りエントリーです。目を通してみると、「えっそうだったの!?」な『ターミネーター2』の撮影秘話がこれでもかと記されています。たとえば……

中でも苦労したのは、「T-1000が炎の中から現れて歩き出すシーン」である。当初はモーション・コントロール・カメラで撮影し、ロバート・パトリックと背景を後で合成する予定だったが、何度やってもうまくいかない。

そこで、実際にロバートを現場に立たせて撮影することになった。

『ターミネーター2』をもっと楽しく観るための制作裏話 - ひたすら映画を観まくるブログ

マジすか。
『ターミネーター2』といえば、コンピューター・グラフィックスの大きな可能性を提示した作品として知られています。が、あの危険なシーンの撮影は「生身の演技だったんかい」と突っ込まずにはいられません。映画公開から30年以上経過していても、自分の大好きな作品に関する情報がアップデートされるというのは、なんとも愉快な体験です。タイプ・あ~るさんのブログ『ひたすら映画を観まくるブログ』では、これ以外にもさまざまな映画の裏話が記されていて、なかなかの時間泥棒ぶりなので、映画好きの方はぜひご一読を。

type-r.hatenablog.com

往時のシュワルツェネッガーがいかに「すげー存在」だったかを感じる

『ターミネーター(1984年)』、『コマンドー(1985年)』、『プレデター(1987年)』など、数々の名作を連発した1980年代は、まさにシュワルツェネッガーの大躍進期……なのですが、当時の僕はあまりに幼く、「なんか筋肉すごい人」くらいの認識でしかありませんでした。しかし、氏が日本でどのような存在感を放っていたかを推量できる資料が、KONMA08(id:konma08)さんのエントリーに存在します。

KONMA08さんのブログ『08映画缶』は、新旧さまざま(とはいえ、1980〜1990年代が手厚め)な映画のパンフレット、フライヤーを蒐集 / 記録するというなかなかにマニアックなものですが、そのなかに『バトルランナー(1987年)』に関するエントリーを発見したのです。当時の同作のフライヤー、そして前売り券に刻まれた言葉は……

’88正月最強最大

正月は俺に任せろ!

No.427 【バトルランナー】(1987年日本公開作品) - 08映画缶

そう、シュワルツェネッガーは任されていたのである。日本の正月を。
とんでもない力感にあふれる……、というか煽りまくった宣伝文句ですが、ここまで大見得を切っても許される俳優だったのだ、と、当時の日本市場におけるシュワルツェネッガーの存在感の大きさがうかがい知れます。と、同時に、こんなに古い映画のパンフレットやらを2022年に開陳してくれたKONMA08さんに感謝しかありません。どこで手に入れたのだろうか……。

なお、「逃走中」と「SASUKE」を足して2を掛けたような殺人リアリティ番組に無理矢理出演させられた主人公(シュワルツェネッガー)が、オラオラオラオラとパワープレイで難敵をぶっ飛ばしていく『バトルランナー』は、実にシュワナイズドされた快作なので、機会があればご覧下さいませ。

08eigakan.hatenablog.jp

『ラスト・アクション・ヒーロー』を君はどう観る?!

まさか仕事で『ラスト・アクション・ヒーロー』という文字列を打つ日が来るとは。なにしろ、同作はシュワルツェネッガーのポートフォリオのなかで、ひときわ鈍い光を放つ異色作。膨大な製作予算を投じ、とんでもないスケールのプロモーションを打ったにもかかわらず、興収、批評の両面で激しくずっこけてしまった作品なのですから。公開は1993年。同時期に公開された『ジュラシック・パーク』のメガヒットとの対比から、「シュワルツェネッガー、恐竜に踏み潰される」という辛辣な評価まで飛び出す始末です。

シュワ好きの間ですらその是非(主に“非”が)が議論される作品ですが、勇気を出して告白します。『ラスト・アクション・ヒーロー』こそが、僕のいっっっっっちばん好きなシュワムーヴィーなのです。2018年の再上映イベントにも行っちゃいましたよ。もちろん。あらすじはというと、

映画好きの孤独な少年、ダニーはひょんなことから手に入れた「魔術師フーディーニの魔法のチケット」の力で、大好きなアクション映画『ジャック・スレイター』の世界に飛び込むことに。映画の主人公ジャック(シュワルツェネッガー)とバディを組み、映画の中と外をいったり来たりしながら、悪党、ベネディクトを追いかける。ベネディクトはダニーから奪った魔法のチケットの力を悪用し、映画の中の悪役を現実世界に呼び寄せ、ジャックを始末しようと画策するが……

ああ、ややこしい。このややこしさこそが興収面で失敗した要因な気もしますが、「映画を描いた映画」らしく、随所に名作映画にまつわる小ネタ(映画の中の世界では「ターミネーター2」を演じたのは、シュワルツェネッガーのライバル、シルベスター・スタローンということになっている、みたいな)がちりばめられた、実に楽しい作品なのです。

どこかに、この作品を愛する人がいないものか、と探してみると、映画の感想をコンスタントに記したブログ『★気ままに自宅で映画観賞★』のちびゴリ(id:chibigori)さんは

ところどころに登場する仕掛けは映画好きにはたまらないわね。他にもいろいろあるみたいだから映画オタクを自負する人は見ながら1人で薀蓄を垂れるのも良いんじゃないかしら。

ラスト・アクション・ヒーロー - ★気ままに自宅で映画観賞★

と同作の感想を記しています。
そう。『ラスト・アクション・ヒーロー』の楽しさは、まさに映画の中で映画をいじる「メタネタ」にあり、僕にとっては初めて「メタ」の面白さを感じさせてくれた作品だったのです。

ちびゴリさんがなぜ1993年の問題作を2020年に観ようと思ったのかはまったくわかりませんが、こうして肯定的な感想を記してくれたことで、まるで「同志に出会った」かのような気持ちになります。ちびゴリさんのブログにはその他、たくさんの映画の感想が記されているので、みなさんのお気に入りの映画を探し、ご自身の感想と照らし合わせてみるのも一興ですよ。

chibigori.hatenablog.com

「I'll be back」を待ちわびて

「I'll be back」とは『ターミネーター』シリーズでのシュワルツェネッガーの決め台詞です。冒頭のポエムのとおり、僕自身の映画の好みが変わってしまい、もはや素直にシュワムーヴィーを楽しむことはできないかもしれません。それでも、心のどこかに氏の大暴れをスクリーンで観たい、という気持ちが残っています。いつだって、僕はシュワルツェネッガーが「戻ってくる」のを待っているような気がします。

と、エモーショナルな感じでいかにも締めのような文章を書いていますが、世の中、シュワへの思いにかけては、上には上がいます。著著『シュワルツェネッガー主義』を持つterasawa_hawk(id:terasawa_hawk)さんの情念のエントリーをご覧あれ。

何かあの人も昔はよかったけど……ねえ……ジジイになっちゃって……と言われるかもしれないのに。というか誰がどう見たってそう言うしかないのに。この勇気はどうだ。結局ターミネーターかよ、と言われることをあの人は怖れていない。むしろ俺しかできないと思っている。そうは言ったってもう完全にジジイですよ。ねえ。それでもやった。やってみせた。ポンコツのジジイが。手作りのメリケンサックを手に最新最強の殺人マシーンに挑んでみせた。そういう姿に俺は感動しましたよ。と考えれば『ターミネーター : 新起動』のどこを笑えようか。みんなそういうことをですね。もうちょっとよく考えてほしい。いいですか!

Maggie (2015) - ホークのヤケクソ日記

terasawa_hawkさんの、「現在進行形のシュワルツェネッガーを観よ」という力強い主張を目にすると、“待っている”なんて、生ぬるい態度ではいけない。すぐにでもシュワムーヴィー観なきゃ、という気持ちがかき立てられます。とりあえず、未見のまま放置していた『ターミネーター3』から観てみようかな。

terasawahawk.hatenablog.com

こんな具合に、「シュワルツェネッガー」というトピックだけでも、さまざまな情報と思いが記されたはてなブログ。シュワ好きのみなさんも、どうかこのアクション&ヴァイオレンスなブログ世界の旅を楽しむ&あなたのシュワ愛をブログに記してみてください!

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