当世大規模ソフトウェア技術カンファレンス事情

当世大規模ソフトウェア技術カンファレンス事情
2023年になってオープンソースコミュニティでも会場開催されるセミナーやカンファレンスが増えてきました。テック系オウンドメディアを中心に記事制作を手掛ける毛利勝久(はてな編集部)が、Perlなどいくつかのプログラミング言語系カンファレンスの参加エントリーから当世会議事情をピックアップします。

アフターコロナ(Post COVID-19)で耳にする言葉に「インパーソン(In-Person)」があります。英語で「対面」を意味するこのワード、コロナ禍でことごとくオンラインに移行していたイベントやセミナーが再び実会場で開催されるようになったことと関係しています。

コロナ前はそれが普通だったのでわざわざ「対面で」とか言ってなかったわけですが、オンラインセミナーも引き続き開催される現状では「対面のときにわざわざ対面という」文化になったということでしょう。ちょっとしたレトロニムといえるかもしれません。

そんなインパーソンのカンファレンスが、プログラミング言語の世界でも数年ぶりにこの春先からこのように開催されてきています。

今回はそういった技術カンファレンスに参加した、登壇した、運営した方々の記事を、はてなブログからいくつかピックアップしてみました。人と人が直接に語り合うことがこれほど熱量高く語られることもないんじゃないか。そんなエントリーがそろっています。

実会場のセミナーは廊下が大切

2023年のカンファレンスが以前と少し違うのは、コロナ禍でオンライン配信のハードルがぐぐっと下がったことから、会場とのハイブリッド開催が多くなっていること。そうなると参加者側にも都合がよく、現地には途中からしか参加できないから初日はオンラインで視聴するなど、時間の使い分けができるようになりました。

とはいえ会場でしか体験できないこともあります。セッション後に登壇者と会話したり、ほかの参加者とロビーや廊下で立ち話をしたり。ツールを活用して「アスク・ザ・スピーカー」をオンラインで実現するイベントもありますが、会話のコストが低いのが対面のよいところ。

RubyKaigi 2023より(まつもと市民芸術館 主ホール ホワイエ)

2009年のRuby会議で運営委員長を務めた角谷信太郎さんのインタビューでは「セッションが始まると、ロビーや廊下に誰もいない」と語られていましたが、それから10年後のコロナ直前には日本でも技術カンファレンスの価値は廊下にありとなっています。

RubyKaigi 2023でも廊下で大切な打ち合わせが実際に発生していたことを、アンドパッドのフェローでRubyコミッターである hsbt (id:h-sbt) さんが紹介されています。関係者が対面でそろうからこそこういう活動ができるのだなと実感しました。

tech.andpad.co.jp

また、その場で内容とタイムテーブルが決まるアンカンファレンスのように、事前にアナウンスされていないトークもまた魅力のひとつ。PHPerKaigiでもアンカンファレンスのほか、スポンサーブースが並ぶルームDでトークを実施した id:koriym さんのエントリーに様子が詳しく紹介されています。立ち見も入りきれないほどの人で、インパーソンなカンファレンスらしい熱気がありました。

koriym.hatenablog.com

また、JJUG CCCでは谷本心@cero_tさんが司会でアンカンファレンスを回されていました。こちらはZoomでも配信されていたようです。

初参加だからこそ感じることを今後のキャリアに

実会場での開催が4年ぶりとなると、コロナ禍で就職されたエンジニアや学生の方々は、オンラインではないカンファレンスに初めて参加する方も大勢いたようです。

Speeeの技術ブログでは、RubyKaigiへの参加を通してオープンソース活動とプロダクト開発が「トレードオフな関係ではない。そもそも独立していない、共存している」という気付きを得て「Rubyコミュニティにさらに深く飛び込めた」という気持ちを、オンラインではないイベントに初めて参加したという id:naoki_takashima さんが語っています。

tech.speee.jp

一方で、YAPCでベストトーク賞を獲得した ar_tama (id:ar_tama) さんのセッションも、学生のときに初めて参加したYAPC::Asia Tokyo 2011における木村秀夫@hidekさんのキーノートに衝撃を受けたことに始まるソフトウェアエンジニアとしてのストーリーでした。

tamamemo.hatenablog.com

おそらく今年初めて実会場のカンファレンスに参加した方の中から、やがてキーノートに登壇したりベストトークを受賞したりことになるのでしょう。コロナ禍に駆け出したエンジニアがコミュニティによるエンパワーメントを実感できる場になったことと思います。

そして技術イベントは続いていく

長野県松本市で開催されたRubyKaigiと、京都で開催されたYAPCは、ともに当初は2020年の予定だったはずが延期になっていました。

YAPCで実行委員会長を務めた azumakuniyuki (id:azumakuniyuki) さんは「新型コロナ以降の世界におけるYAPCの始発駅となり、ずっとYAPCが続いていけば」という思いを語っています。

azumakuniyuki.hatenablog.com

またRubyKaigiのローカルオーガナイザーを務めた cobachie (id:co_bachie) さんも2017年に始まる「なんと足かけ7年の道のり」を無事に乗り切った思いを「RubyKaigi 2024で再会できるのをたのしみに、362日のRubyistとしてすごしていきましょう」と締めくくられています。

cobachie.hateblo.jp

ところでカンファレンスは主催や登壇者、参加者だけではなくスポンサー企業も重要な存在です。いくつかの実会場を訪れた参加者としても、公式グッズなどだけでなくスポンサーブースあってのカンファレンスだなと感じました。

techlife.cookpad.com

ということでRubyKaigiにあったこの冷蔵庫、とても気になっていたのですが飲み物を自由にもらってよかったのでしょうか? そういうことに気づかないまま松本をあとにしてしまいました。国宝に浮かれている場合ではなかった!

最後になりますが、YAPCでトートバッグをスポンサードした弊社の読み解きエントリーもあわせてお読みください。肩掛けと手提げの2WAYできるのすっごい便利! となって個人的に普段使いしております。

YAPC::Kyoto 2023 Scrapboxホール by Helpfeel (アトリウム)

大規模な技術イベントはこの秋にもいくつか開催されます。ブログを書くまでがカンファレンス! みなさんの感想エントリーをお待ちしています。

今回紹介したブログ

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Profile

毛利勝久

はてなスタッフ。IT系の書籍編集者やフリーライターを経て2012年から現職。かつて制作した書籍に『MySQL徹底入門』『へんな会社のつくり方』など。現在はテック系企業のオウンドメディアや記事広告の制作を主に手掛ける。個人ブログは「in between days」。