※キャンペーンは終了しました。たくさんのご応募、ありがとうございました。
自意識と他人の目の間で揺れ、悩む自分の思いを言葉にし、多くの女性から共感を得ているライターの雨宮まみ(id:mamiamamiya)さん。『女子をこじらせて』(ポット出版、2011年)から約2年半。流行語大賞の候補語にも選ばれ、テレビ番組「久保みねヒャダ こじらせナイト」のヒットで広く知られるようになった「こじらせ女子」に対する心境、映画「アナと雪の女王」から考える女性の屈折など、雨宮さんの“今の思い”を語っていただきました。5月下旬に発売されたばかりの新刊『女の子よ銃を取れ』についてもうかがいました(記事の最後にサイン本プレゼントのお知らせもあります)。
「こじらせ女子」という言葉が、おもちゃにされていた
――2013年には「こじらせ女子」がユーキャン新語・流行語大賞の候補語にノミネートされましたが、当時はどういう心境でしたか?
雨宮 発売から2年も経っていたので、「今更かよ」と(笑)。嬉しい反面、「こじらせ女子」という言葉が“おもちゃ”にされていると感じていた時期でした。
ノミネート以来、「こじらせ女子を分類してください」「こじらせ女子の定義とは?」「こじらせ女子の口説き方を教えてください」という断りたい三大話が増えたり。こじらせについて真剣に考えてもなければ、私の本を読んでもない人たちが「こじらせ女子」について、「劣等感でひねくれてる性格の悪い人たちのことでしょ?」と偏見だけで言っているのを目にすることも増えたし、取材の依頼があっても、「こじらせ女子」という言葉を弄ぶだけの企画じゃないか、と警戒するようになりました。
――疑心暗鬼になっていたんですね。
雨宮 もちろん、「こじらせ女子」を広く知ってもらう方がいいのですが、誤解される機会も増えて。『女子をこじらせて』は自分のことを書いた本ですが、「こじらせ女子」を定義した本だと思っている方が多く、せっかく買ってくださったのに「思っていた本と違った」と言われたこともありました。
そもそも、ノミネートのきっかけは、「久保みねヒャダ こじらせナイト」(フジテレビ)の浸透が大きかったと思っていて。
――レギュラー化も果たして、すっかり人気番組ですよね。
雨宮 ありがたいですね。「こじらせナイト」のスタッフさんは、最初にお会いしたとき「うちの番組は、こじらせ女子を絶対定義しないと決めています」と言ってくださって。こんなに素晴らしい世界もあったんだなと。
久保ミツロウさん、能町みね子さんは「こじらせる」ということをすごく分かってくださっているし、いいさじ加減で進めてくださっている。ヒャダインさんも、なんでこんなに分かってくださっているんだろうと、いつも不思議に思っています。私、ヒャダインさんのお話に違和感を感じたこと、一度もないですもん。愉快に見られる、楽しい番組です。
――雨宮さんは今でも「私、こじらせているな」と思っていますか?
雨宮 「私、こじらせてるかな?」という自問自答を、まずしないですよね(笑)。コミュニケーションが下手だとか、苦手なこと、“乗り越えるべき壁”があるというのは感じます。
――そういうときは、どうやって乗り越えるんでしょう。
雨宮 逆説的なんですけど、乗り越えるべき壁に集中していると、自意識にあまり目が向かなくなるんです。自分の内面の問題じゃなく、外側を見なきゃいけなくなるので。そうすると、乗り越えられるかどうかより、乗り越えようとしている自分のことは好きになれるんですよ。だから、『女子をこじらせて』を書いた2011年よりは、気持ちの面ではずっと楽になったと感じてますね。
“アナ雪”に衝撃「ディズニーまでこじらせているとは」
――最近の「こじらせ」で気になるものはありますか?
雨宮 「アナと雪の女王」*1です。長女の屈折や、長女が感じる抑圧が描かれていて、「ディズニーまでこじらせているんだ……!」と。まさかディズニー映画を見て、自分と同じだと思う日が来るとは思っていなくて、これまでで一番「こじらせ女子」が市民権を得た気がしました。
だって、「人に迷惑をかけるから外に出ては行けない」と言われ続けて、やっと自由になれる場所が自分しかいない氷の城なんですよ!? ひとりきりの場所で自由を手に入れることが、希望として描かれているのは衝撃的でした。歌もエモーショナルだし、すごく感動して映画館で号泣したんですが、冷静に考えたらひとりっきりの氷の城で自分らしくなれてもなあ、とも思って。
――きらびやかなシンデレラ城じゃなく。
雨宮 上京して、やっとひとりの部屋を持ったときの自分に重なりました。「今思えばあれ、レリゴーだったな」と。
あれを「こじらせ女子」と言ってしまうのは、映画の意味をすごく狭めてしまうので憚られるのですが、ああいう表現が生まれるということは、どの世界にも同じような苦しみを持って生きている人はいるんだなと。
「アナと雪の女王」とはまた全然違いますが、2013年に公開された「かぐや姫の物語」も現代の女性の苦しみをここまで描くのかというくらいはっきり描いていて、すごく驚きました。衝撃的な作品でしたね。つらい作品ですが、あんな作品が出てくるというのは、私にとってはすごく大きな希望になりました。
――“ギーク母”の堀越英美さんが「女の子が好きな女の子──『アナと雪の女王』と『リーン・イン』」というコラムで、「アナと雪の女王」とシェリル・サンドバーグの『リーン・イン』*2との共通点を上げていましたね。社会的に、女性の仕事や生き方について考える風潮があるのでしょうか。
雨宮 堀越さんのコラムを読んで、まんまと『リーン・イン』を買ったんですけど、まだ読んでないんです(笑)。でも、社会的にそういう風潮があるというよりは、単に女性が生きづらい世の中なので、それとどう戦っているか、どう乗り越えているか、という話が出てきやすいだけじゃないでしょうか。
社会的な関心も高まっているのかもしれませんが、それと同時に「また女がうっとおしい主張をしている」というような、悪意のある視線も強まっているように感じます。「アナと雪の女王」のブームにも、純粋に作品としてどうこうではなく、ブーム自体にすごく反発を感じている人も多いですよね。
こじらせてもいいけれど、ねじれてはいけない
――さて、5月下旬に発売された『女の子よ銃を取れ』ですが、タイトルが衝撃的ですよね。この「銃」はどこに向けて放つ銃なんですか?
雨宮 “壁”です。自分で作っている壁、世間から勝手に押し付けられている壁を打ち壊してほしいという気持ちで付けました。もともと「Juliette Has A Gun」*3という香水ブランドの名前が好きで。マッチョな女戦士になれなくても、ジュリエットだって銃を持てるんだ、持っていいんだと感じて、たとえ力がなくても、弱くても、強い意志で戦うイメージを作りたかったんです。
――全編を通して、さまざまな視点から女性の「美」について書かれています。雨宮さんが考える“美しい女性”とは。
雨宮 “美しい女性”が何なのかという疑問には、ずっと直面していて。考えながら書き進めていました。
「きれいな人が美しい」だと、自分にも他の人にも希望がないじゃないですか。私は、小さいころテレビをあまり見なかった影響もあってか、“きれい”を認識したのがすごく遅くて。なので、外見の美しさよりは、雰囲気や表情のほうが気になります。派手な人には派手な人の、控えめな人には控えめな人の魅力があるので、その人がその人らしくしている感じが、私はすごく好きです。
――どんな人に読んでもらいたいですか?
雨宮 「本当の自分ってなんだろう」「世間にどう振る舞えばいいのか分からない」という人です。特に、見た目に対して「できない」悩みを持っている人や、「どんな服を着たら安心できるんだろう」と人の目をずっと怖がっている人に読んでもらいたいです。
――他人の目も気になるし、自意識も強いこじらせ女子たちはどう生きていけばいいのでしょう。
雨宮 自分の道を塞いでいるものがすごく大きく見えても、傍から見ていると意外と小さいことが多いから、ちょっとずつ壊してほしいと思います。楽しい時間を過ごせなくなっているくらいなら、壊したほうがいい。ためらいも分かりますが、壊したからといって自分の像が破壊されることはないんじゃないかな。ありふれた言葉になりますが、壊さないと変わらないし、変われない。
――「こじらせ女子」の中にはきっと、変わりたいという気持ちはあるんですよね。
雨宮 それってとっても健全ですよね。「変わりたいけど変われない」だと、欲望がどんどん抑圧されて、どっかでねじれちゃう。こじれてもいいですけど、ねじれちゃだめですよね。つらさを溜め込む前に、行動に移したほうがいいのかなと思いますね。毎回、怖いですけど、思い切って。失敗をしても「あのときよりはマシだな」と思えますし。
ダークネットウォッチを絶っています
――せっかくなので、最後にはてなに関する話も聞かせてください。雨宮さんははてなダイアリー時代から文章を書いてくださっていますよね。
雨宮 はい。実は、ブログがお仕事のきっかけになることがたくさんあって。はてなダイアリーで「弟よ!」を書いていたときに、読んでくださっている編集の方がすごく多かったんですよ。「弟よ!」の文章は、文体や内容が散らばっていたこともあって、ピンポイントで「あの記事っぽいもの」「ああいうテーマでお願いします」と提案されやすかったですね。「女の子よ銃を取れ」も、「弟よ!」の「着る快感」というエントリーがベースになっています。
――ある意味、ポートフォリオのような存在ですよね。ブログ(ダイアリー)がそういう形で役に立っているのはとても嬉しいです。ところで最近、はてなでは「はてな女子」というカテゴライズがありまして……。
雨宮 何やら物議をかもしているやつですね!(笑)
――よく読んでいる女性ブロガーのブログはありますか?
雨宮 ずっと読んでいるのは、北沢かえる(id:kaerudayo)さんの「北沢かえるの働けば自由になる日記」です。自分とは全然共通点のない方なんですけど、子供を持っている人の視点は、自分にはないものなので気付かされることが多い。政治の話なども、感じたことをわかりやすく書かれているので考えやすいんです。平和な気持ちで読める、抑えた文章も好きですね。
――平和なブログがお好きですか?
雨宮 ……前は刺激的なブログの方が好きだったんですよ。Hagex(id:hagex)さん*4とか。実は、今年から“ダークネットウォッチ”を断っていて。3年くらい、発言小町やHagex-day infoとか2ちゃんねるのまとめサイトを読み続けたので、一周してパターンがだいたい分かってきて。タイトルを見ると、オチが分かったり……。
――それは、かなり修行を積んだダークネットウォッチャーですね。
雨宮 私がTwitterで炎上せずに済んでいるのは、小町やHagexさんや2ちゃんねるまとめを3年ROMったおかげだと思っているんですけど、ネットの正義感と世間の正義感にはだいぶズレがあって、影響されすぎちゃうと息苦しいなぁと感じることも多くて。試しに、ちょっと離れてみたら「小町を見ない生活ってイライラしなくて幸せだなあ」と……。もちろん、HagexさんはHagexさんですごく素晴らしいと思っています!
――たまに“黒いもの”欲しくなったりしませんか?
雨宮 “黒いもの”は、見たくなくても目に入ってくるじゃないですか。ホッテントリ入りした増田とか……。
――なるほど。
雨宮 そういえば余談なんですが、『女子をこじらせて』を発売したとき、「こじらせガール」「こじらせ女子」といった言葉を使って「みなさん、本のイベントに来てくださいね」とネット上で告知していたんです。そうしたら、加野瀬(id:kanose)さんが「今、Googleで『こじらせ女子』と検索すると雨宮さんのサイトがトップに来るから、それ積極的に宣伝に使ったほうがいいですよ」とアドバイスをくださって(笑)
――なんと「こじらせ女子」はSEOから始まったんですね……! 驚きの真実でした。雨宮さん、今日はありがとうございました。
聞き手:タニグチナオミ(はてなニュース ライター)
雨宮まみ(あまみや・まみ)
ライター。エロ本編集者を経てフリーライターとして独立。著書『女子をこじらせて』『だって、女子だもん!!』(共にポット出版)で、女子の自意識問題にメスを入れる。
その他の著書に『ずっと独身でいるつもり?』(KKベストセラーズ、2013年)。Webメディアで「東京」「穴の底でお待ちしています」など連載中。
関連記事: 【寄稿】ブログを始めるときに大切なのは、気軽に更新できて、思い出をたくさん引き出せること。そして…… ―― 雨宮まみさんから、2014年を“空白”にしたくないあなたに素敵なアドバイス - 週刊はてなブログ
取材協力:一保堂茶舗 京都本店
- 住所:京都市中京区寺町通二条上ル
- 営業時間:午前9時~午後7時
(日祝は午後6時まで) - 喫茶室の営業時間:午前11時~午後5時30分
(ラストオーダー午後5時) - 一保堂茶舗
雨宮まみさん新刊『女の子よ銃を取れ』サイン本プレゼントのお知らせ
インタビューでもお話をおうかがいした新刊『女の子よ銃を取れ』(平凡社)のサイン本を1名様にプレゼントいたします。応募方法は、この記事をブックマークするだけ。よろしければTwitter連携をオンにして、記事のご感想などをコメントしてください。
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応募期間 | 2014年6月13日(金)~2014年6月26日(木) |
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賞品・当選者数 | 雨宮まみ『女の子よ銃を取れ』(サイン本) を1名様 |
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抽選と発表 | 応募期間終了後に厳正な抽選を行い、当選ユーザー様の登録メールアドレス宛に送付先情報等を確認するメールをお送りします(取得した情報は本賞品送付用途以外には使用いたしません)。なお、送付先は国内に限らせていただきます。 発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。 |
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*1:ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオズ製作のアニメ映画。 日本では2014年3月に公開。興行収入200億円&観客動員数1,574万人突破と大ヒットしている。(5月26日時点)
*2:FacebookのCOO、シェリル・サンドバーグが女性と仕事について執筆。全米で大ヒットした。
*3:ニナ・リッチのひ孫、ロマノ・リッチによる香水ブランド。ウィリアム・シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」のジュリエットからインスピレーションを受けている。
*4:日本を代表するメディアコンテクストデザイナーストラテジスト。著書に『ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い』(アスキー新書、2014年)。