【ゆかいインタビュー】くらふとさんに聞いてみた 後編「いろいろな活動を続けてきたから、自分のことを知ってくれている人がいた」

取材メモに描かれたキャラ
インタビュー中にさらさらと取材ノートに描かれたキャラたち

前回までのあらすじ 「ゆかい食堂 みんなのごはん出張所」も好評な、ギャラリークラフト の くらふと (id:craft_kim) さんが大阪からやってきた機会をとらえて、ニコニコ動画での活動や、長編まんが「ゆかいな魔王と勇者」の話をお聞きしました。

この後編では、ブログと商用メディアの違いや、よりスモールなコミュニティとの使い分けなど、ネット活動の重点を変えながら長く続けることについてお聞きします。

取材構成:はてなブログ編集部(id:mohritaroh

※できれば「【ゆかいインタビュー】 「ゆかい食堂」のくらふとさんが東京にいらっしゃったので杉浦茂風のまんがや動画のことをいろいろと聞いてみたぞ!(前編)」を先にお読みください。

日記として書くことと記事として書くことは違う

―― その後、ブログで「ゆかい食堂」を掲載するようになったわけですが、どういった経緯だったんでしょう?

くらふと杉浦茂風の日記まんがは、2012年の夏ごろには描きはじめてました。最初のころはアイマスライブに行ったとか、ドラクエ10を買ったってまんがを描いてますね。

―― なるほど。たしかに「レポまんが」カテゴリーを見ると、森下(東京都江東区)まで杉浦茂展を見に行かれたりしてるんですね。

くらふとはい。「のらくろ」の街ですね*1

森下文化センター 夏の特別展『杉浦茂のとと?展』 - 杉浦茂記念祭公式サイト

―― はじまりは日常レポートまんがだったんですね。

くらふと最初はそんな感じでしたね。食べ物屋を描いたのは、たぶん「夥汲(くわぐみ)」が最初です。これがかなりウケて、当時としては1、2を競う数のはてなブックマークがついたんですね。

―― 食のレポートが増えるようになったのは……。

それから少し間が空きますけど「ほっこり」がブレイクだったとおもってます。この記事のウケが良かったっていうのも、ありますかね。

―― ブックマーク数は3桁に届いてますね。

くらふとそうですね。いきなり跳ね上がってました。

―― このころはまだ、はてなブログではなくダイアリーだったんですね。

くらふとはてなブログに移行したんが、2013年11月です。

―― 移行前の日記はあまり残されてないんですね。

くらふと2010年より前は見せないようにしています。心機一転という意味もあったし、過去のおもしろくない記事をさかのぼられてもあまりおもしろくないですし、やっぱり黒歴史的なもんもありますから、不特定多数の方に見せてもいいものを選びました。

日記として書くのと、記事として書くのでは、心がまえとしても違うとおもうんです。最初(2004年ごろ)は、ほんとに10人くらいを想定した日記だったし、当時ははてなダイアリーも始まったばっかりじゃなかったかな。

いまだったらTwitterがありますけど、ネット活動のどこに重点を置くかは、9年、10年やってると、やはり変わってきます。

自分のブログは商売っ気を抜きにした遊び場

―― 「ゆかい食堂」には、まんがらしいキャラがいろいろ登場していますね。

くらふといちおうカエルが主役というか、自分のキャラにしているんですけど、カエルに付いてきてる“これ”はとくに意味はなくて、これとカエルだけがいるときは自分だけで食べに行ってます。まんがとしても、絵的にも、誰かいっしょにいたほうが美味しそうなので。

カエルと“これ”
カエルと“これ”

―― もっと大勢が出演される回もありますね。

くらふとほかに誰かいるときは友達と食べに行ったということで、一緒に行った友達をキャラクター風に描いていたりしてます。それぞれにモデルがいて、わかる人にはわかるくらいの似顔絵にはなっています。実は、Twitterで相互フォローしている何十人かだけ大笑いしてるような内輪ネタも紛れてるんですよ。

―― どこかで見たようなキャラもいますね。

どこかで見たような犬とカエルと“これ”
どこかで見たような犬とカエルと“これ”

くらふとこういうキャラクターはぐるなびの方には入れませんけど、自分のはてなブログではお遊び的な要素も入れていこうかなというかんじですね。たまにほんとうにアイマスっぽいキャラが紛れたりもしてますし。

―― そのあたりが仕事で描いているものと、自分のブログの違いでしょうか?

くらふとどっちかっていうたら仕事では説明的なものが多かったりとかもあるんで、ブログのほうは仕事とは別に自分の好きに描いてるかんじですね。好きなところに行って、好きにまんがを書いてる。読んでる方には、たぶん変わりないかとおもうんですけど。

―― ブログと商用媒体の区別は、読者からはわかりにくいですね。

くらふとそうですね。ブログのほうはほんとうにまったく仕事の要素はないんで、そこだけは強調しておきたいですね。

ブログよりもっと内輪なコミュニティとの使い分け

―― 食以外のレポートまんがはもう描かれないんですか?

くらふと上手くイベントがあったり、機会があれば描きたいとおもっています。実は、冬のコミケ(C85)に行ったときにも「ひえるのう2013」というレポートをpixivに上げてるんです。

―― あ、pixivにも描かれてるんですね。

くらふとはい。はてなブログのサイドバーにもpixivのブログパーツを貼ってますよ。

「くらふと」のプロフィール - pixiv

―― この冬コミレポートは、pixivでしか公開されてないんですね。

くらふとはてなブログに上げるかどうか迷ったんですけど、内輪の要素が強いというのがあったので。これは食レポとは違って、もうわかる人にしかわからない記号が散りばめられているまんがですね。

例えば、このまんがにもさっきのキャラがいますけど、このひとにはモデルがいるんです。はてなブログだけを見ているひとは「この犬はもしかしてアレじゃないか」とおもうだけでしょうけど、pixivとかTwitterとかを見てるひとやったら「あの人やないか」ってわかる。

どこかで見たような犬
どこかで見たような犬

この「また別の回」が、さっきのはてなブログの記事なんです。

【ゆかい食堂東京編】新鮮!生きている海老!目の前で炙られる鯖!!東京・神田の「俺の魚を食ってみろ」で美味しい魚料理を食べる - ギャラリークラフト

―― あ、pixivのこの1コマが、まるまる「ゆかい食堂」のこの回なんですか。なるほど、冬コミで上京されたから「東京編」だったんですね。

くらふとそうですね。冬コミの後の夜の話です。この回は東京編だったからなのか、ウケが良かったんですよ。300ブックマークくらい集まってます。

自分のブログだったら、投稿して上手く勢いに乗ると2万くらいのPVになりますが、pixivのは自分をTwitterかpixivでフォローしている人しか更新がわからないので、3,000ビューくらいでした。その代わり、内輪の内容を入れてもそれで許される雰囲気というのがあります。

Twitterでも相互フォローにしかわからないようなことを空中でどんどんつぶやくタイプなんで、このまんがもそのひとつなんです。こういう断片的な情報から、あれはあれだったんだなというのがわかるようになってますね。

―― ブログより、Twitterやpixivのほうが内輪のコミュニケーションツールになるんですね。

くらふと自分としていちばん内輪な使い方をしているのが、いまだったらたぶんTwitterですね。ついぴく(Twitterの画像サービス)に、ほんとに瞬間的なもの、ネタ画像とかコラ画像ですね。ほんとにどうでもいいものを組み合わせたネタとかをその場で一瞬で笑えればいいみたいなのをパッと出してます。

Twitterの次にpixiv、ニコニコ動画、そしてブログ。はてなブログになると、新しい読者が入ってきます。仕事での場が、一番の「よそ行き」といった感じでしょうか。

―― そういったツールの使い分けは、直感的に変えているんでしょうか?

くらふといままでの経験でリテラシーが身についたというのはあるでしょうね。フローとストックというんかな。厳密ではないですし、手探りな状態ですけども、そんなかんじで使い分けています。

―― ブログツールとしてはTumblrも使われているんですね。

くらふとTumblrは、イラスト集ですね。yukaijanou.comというドメインに、アイマスとかまおゆうとか、ミルキィホームズのエンドカードに採用されたイラストがあります。

ゆかいじゃのう.com

まおゆうのまんがもTumblrで連載してました。ついぴくに1枚ずつ上げて、4枚を1話ということにしてTumblrにまとめてます。画像保存庫としては、はてなフォトライフをずっと使ってて、まおゆうもイラスト自体はフォトライフに保存して、imgタグで貼り付けてるんですよ。

ネットで情報は広まってもブレイクするのはひと苦労

―― 「みんなのごはん」での連載についてお聞きしたいんですが、ぐるなびの方からコンタクトを取られてきたんでしょうか?

くらふとそうです。たしか「ブログを見て」って言ってましたね。いまはネットが便利なおかげで、紙でイラストを持っていかなくても、ブログにあるものを見てもらって仕事につながることがありますね。ありがたいです。

―― 東京に出てこなくても、仕事がやりやすくなってるのかもしれないですね。

くらふとしやすいとおもいます。絵を描く仕事だったら場所を選ばずどこでもできますし、あとはどうやってブレイクするかですよね。

―― くらふとさんが最初にブレイクされたのはニコニコ動画でしたよね。

くらふとそうですね。僕はまあ運が良かったというのと、ニコニコ動画の場合、自分で言うのもなんですが、けっこう良いものを作れたというのはありますけど、まったく無名のひとがいまからブレイクするのは、当時より難しくなっているかもしれませんね。

それから、僕はいままでいろいろ活動を続けてきたから、自分のことを知ってくれている人がいた、というのがすごい大きいとおもうんですね。これまでのつながりで、なにか動画やイラストを上げるとTwitterで見てくれるひとがいて、そこでつぶやいてくれてっていう連鎖がありますから。

―― ネット活用の理想的な形ですね。

くらふとたまたま上手いこと形にはなりましたけど、最初からそこまで考えていたわけではなくて、でもこういう形は必要な、考えなあかんことですね。

―― 最後に、今後の「ゆかい食堂」はどうなりますか?

くらふとぐるなびもこのまま続けていきますけど、(自分のブログに発表する)大阪の食べ歩きも続けていきたいですね。

―― どちらも楽しみです。本日はどうもありがとうございました。

くらふとさんの同人誌をセットでプレゼントのお知らせ

※キャンペーンは終了しました。たくさんのご応募、ありがとうございました。

くらふとさんがブログ記事をピックアップして制作された同人誌『ゆかい食堂セレクション』(下記写真)に、前編で詳しくお話をお聞きしたまんが『ゆかいな勇者と魔王』(上・下)をセットにして1名様に差し上げます。応募方法はこの記事をブックマークするだけ。よろしければTwitter連携をオンにして、記事のご感想などをコメントしてください。

くらふとさんの『ゆかい食堂セレクション』
応募期間 2014年3月27日(木)~2014年4月2日(水)
賞品・当選者数 ゆかい食堂セレクションまんが『ゆかいな勇者と魔王』(上・下) セット を1名様
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抽選と発表 応募期間終了後に厳正な抽選を行い、当選ユーザー様の登録メールアドレス宛に送付先情報等を確認するメールをお送りします(取得した情報は本賞品送付用途以外には使用いたしません)。なお、送付先は国内に限らせていただきます。
発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。

*1:杉浦茂が師事した田河水泡は戦前の人気まんが「のらくろ」で知られるが、その死後、遺品は青年期までを過ごした江東区に寄贈され、出生地である本所区本所林町(現在の墨田区立川)に隣接する江東区森下の森下文化センターに、「田河水泡・のらくろ館」が1999年11月に開館した。館に隣接する高橋商店街でも「のらくろード」を称し、地域ぐるみで「のらくろの街」をアピールしている。