はてなブログは、2021年5月24日(月)に「企業によるブログを活用した技術情報のアウトプット」をテーマにしたオンラインイベント「はてなブログ DevBlog Online Meetup」を開催しました。
「はてなブログ DevBlog Online Meetup」とは
はてなブログは、企業の技術ブログ向けプラン「はてなブログ for DevBlog」の提供をはじめ、OSSコミュニティ支援、週刊はてなブログでの「エンジニアのブログ探訪」連載などを通じて、技術情報のアウトプットを支援しています。その一環として、本イベントでは、技術ブログを運営する企業様・これから始めたいとお考えの企業様に向けたイベント「はてなブログ DevBlog Online Meetup」を開催。
技術ブログを運営する3社(エムスリー様・富士通様・LINE様)をゲストにお招きし、参加者から事前にお寄せいただいたご質問やコメントなどをもとに設定したテーマに沿ったディスカッション形式で行いました。
週刊はてなブログでは、イベントの様子をピックアップしてご紹介します!
ご登壇者(企業名50音順)
エムスリー株式会社 執行役員VPoE/PdM 山崎聡氏
大学院博士中退後、ベンチャー企業、フリーランスを経て、2006年、臨床研究を手がけるメビックスに入社。2009年、メビックスのエムスリーグループ入り以降、エムスリーグループ内で主にプロダクトマネジメントを担当する。2012年にグループ会社であるシィ・エム・エス取締役に就任。2015年にデジカルを共同創業、2017年にVPoEとなり、2018年からエムスリーの執行役員。現在はプロダクトマネージャーとして自ら新規プロダクトに関わりつつ、執行役員VPoEとして、エムスリーグループを横断してプロダクト志向の開発プロセスおよび組織化を推進。2020年4月からはエンジニアリンググループに加えて、ネイティブアプリ企画部門のマルチデバイスプラットフォームグループと全プロダクトのデザインを推進するデザイングループも統括。2020年10月より初代CDO(Chief Design Officer、最高デザイン責任者)に就任。
エムスリーテックブログ
富士通株式会社 研究本部 先端融合技術研究所 主任研究員 横田耕一氏
2003年に株式会社富士通研究所に入社。主にモバイル端末の省電力・無線実装に携わり、世界初の3G搭載ノートPC(LOOX、LIFEBOOK)を実現。PC製品のグローバル展開に貢献。2012年からCPS(Cyber Physical System)におけるモバイルOSアプリ・ライブラリの研究開発に携わる傍ら、OSSメンテナ・コントリビュータとしても活動。2019年から主任研究員として当該研究部門におけるクラウドサービス基盤の研究開発を指揮。2021年4月の会社統合により所属が富士通株式会社に。技術ブログ立上げ人。
fltech - 富士通研究所の技術ブログ
LINE株式会社 Developer Successチーム 桃木耕太氏
2013年に広報・PR担当としてLINEに入社。2016年より技術領域にPR担当として関わり、2018年より現組織に異動し、技術領域の情報発信を主務に。LINEの技術ブログ「LINE Engineering Blog」では企画・運営・編集校正などを担当。他に「LINE DEVELOPER DAY」などの技術イベントの企画・運営や、技術領域以外も含む全社の採用マーケティングなどを担当しています。
Blog - LINE ENGINEERING
モデレーター:株式会社はてな 取締役 サービス・システム開発本部長 大西康裕
2001年に創業メンバーとして有限会社はてな(当時)に入社。主にエンジニアリングを担当し、2006年からチーフエンジニアとして全サービスの開発や技術部の指導・育成に携わる。2011年から「はてなブログ」の立ち上げや事業化を指揮。2014年8月より執行役員と本部長職を兼務し、2020年10月に取締役就任。
Hatena Developer Blog
イベントレポート
テーマ1「ブログの目的とKPIについて」
◆ 採用や技術ブランディングといった「会社を知ってもらうため」に
はてな 大西:まずは各企業様で運営されているブログについて教えてください。
エムスリー 山崎さん:目的は圧倒的に採用広報です。ブログを開設した2017年9月の時点のエムスリーは、テック界隈で全然知られていないという状況でした。そのままでは今後の採用は難しいので、まずは、エムスリーがどんな会社で何をしているかをみなさんに知っていただくことを目的に採用チームのメンバーが立ち上げてくれました。みんなの頑張りのおかげで、4年前に比べてテックカンパニーとしてのエムスリーについて知っていただけるようになったんじゃないかなと思います。
富士通 横田さん:メインは技術ブランディングですが採用も目的としています。当社は、プロダクトのプレスリリースなどで関連する技術に関する情報発信も行ってはいますが、商品やサービス紹介における技術発信という側面が大きいと感じています。プロダクトや事業などとは切り離された、純粋に技術のみにフォーカスした形での個人ひとりひとりの情報発信の場がなかったので、社内の有志で声を上げてブログを開設しました。まだ始めたばかりなので、まずはどういうことをやっているかを見えるようにしようと取り組んでいる段階です。
LINE 桃木さん:開設が2011年ですので、私自身は開設に関わっていないのですが、みなさんと同じ課題感で、会社のことを知っていただくためにやっています。BtoCサービスであるコミュニケーションアプリの「LINE」は、みなさんにお使いいただいて知っていただいていると思いますが、LINEという会社自体はBtoBを含むいろいろなサービスや事業を展開していて、会社規模もとても大きなものになってきています。サービスは知っていても、会社のなかの開発体制や取り組んでいる課題、細かなアップデートがよく分からないということはよく言われるので、取り組みや会社のことをもっと具体的に知ってもらうことが目的です。
◆ KPIは、3社とも「厳密には持たない」
はてな 大西:事前の質問では「KPIをどうしていますか?」というものが多かったですが、いかがでしょうか。
エムスリー 山崎さん:「月何本更新しましょう」のような具体的なKPIの設定はしていません。私がブログを眺めて「最近更新が少ないな」と思ったらマネージャーに声をかけて盛り上げていく感じです。
仕組みの話になりますが、まず、技術ブログを書く目的が採用広報であることは、エンジニア全員が集まる場などでも共有していて、採用活動におけるブログの重要性はみんなに理解してもらっています。
エムスリーでは「全員採用」をテーマにエンジニア組織全体で採用活動に取り組んでいますが、採用にどう貢献するかは人それぞれ異なっていて、面接に出るという直接的な関わりのほかにも、カンファレンスへの登壇やブログなどでのアウトプットも採用貢献の一つという位置づけをしています。
先ほども申し上げたとおり、採用により強くコミットすることを目標としている一部のエンジニアを除くと、技術ブログに関する明確なKPIはないんですが、「仲間が増えること」がゴールなので、仲間を増やそう! というモチベーションでやってもらってます。
面接などでもブログで発信した内容で盛り上がることが多いですし、採用への貢献はさまざまな場面で感じています。また、そうしたことがブログを書くモチベーションにもなっていると思うので、良いサイクルになっている気がします。
LINE 桃木さん:年間何本、といった更新本数の目安は持っていますが、1記事あたりのPVを追ったりはしていません。ブログでは、すごいことを書いてたくさんの人に読んでもらうということよりも、興味を持って訪れてくれた方にしっかり読んでもらえる中身のある記事を書いていくことを大事にしています。100PVでも10人の採用につながるかもしれませんし、逆に数万PV読まれたけど何も起こらないということもあります。ブログに限らず情報発信はしているので、KPIを設定しても現実的には細かく追いきれない。そのため、最初から追ってないという考え方です。
PV以外にも、良いブログ記事と判断するためのいろんな指標があると思いますので、まずは良い記事がしっかり出ていくことに意味があると思っています。
また、KPIを設定すると、それを追うことが目的になってしまうところもあるので、ふわっとしたままでもブログの価値を理解してもらって活動を続けられるための動きをすることを意識しています。
はてな 大西:厳密に追っていくと苦しくなるっていうのはありますよね。
富士通 横田さん:ブログを長く続けてらっしゃる会社さんでもそういう感じなんだということを知ることができて勉強になります。当社も立ち上げのときに議論しましたが、ふわっとした目標は定めておいて、当面は明確なKPIを設定するのはやめておこうという結論になりました。
やらされてる感じが出て目的を見失うほうがよくないですし、まずはふわっと始めることを優先しました。ただ、振り返りはしっかりしたいなと思っています。上層部からはKPIをもっとしっかりしたほうがいいのではという声をもらったりはしますし、そのための計測自体はしています。定期的に振り返りながら、より良いものにするためにどうすればいいか、今後も検討していきたいと思っています。
いずれにしても、副次的な効果や社内外からの反響もあるので、関わっている人たちはブログの効果を実感しています。そうした反響を聞くと、書いてくれた人はとてもいい顔になるし、関わることを楽しんでくれているように感じます。そういうのに触れるたびに、「ああ、やっぱりブログを始めてよかったな」と感じています。
テーマ2「立ち上げ・運用のコツ」
◆「目的の整理」「関連部署への共有」「上層部との合意形成」3つのステップで立ち上げへ。富士通が技術ブログを開設するまで
はてな 大西:このパートではご登壇企業のみなさまの具体的なお取り組みについて伺いたいと思います。まずは「立ち上げ」ですが、事前の質問では「まず初めに何をすればいいのか」といったものもありました。1年前にブログ開設された富士通さんは立ち上げはどのように進められたのでしょうか。
富士通 横田さん:気にしたことは3つあります。一つは、目的をはっきりすることです。自分とグループのメンバーが発起人となって有志で始めることになったので、他のグループにも興味がある人は居ないか声をかけて、メンバーと議論をし、「何のためにやるのか」というのを整理しました。
二つめは、整理した目的を関連する部署に共有することです。技術ブランディングのためにやるので、社内で関連しそうな部署を調べて、ブランド戦略や技術戦略の担当者に話をしに行ったり、セキュリティ部門にも事前に共有したりしました。社内のどこを押さえておかないといけないかを把握して、相談や共有をして合意を取りました。ブランディングやセキュリティに関連する注意点を把握することで、関連部署の方も、技術ブログを運営するメンバーも安心できます。そうした事前の調整は大事だと考えました。
最後は、上層部との合意形成をやりきることです。目的を整理して、関連部署をしっかり押さえて共有してから、上層部とのネゴシエーションをしに行きました。振り返るとこの順番で進めたのは良かったかなと思っています。
はてな 大西:富士通さんのような大きな企業さんであればなおさら、立ち上げの時の進め方も重要ですよね。ちなみに、富士通さんとエムスリーさんはブログのプラットフォームに「はてなブログ」を選んでいただいていますが、立ち上げの際のプラットフォーム選定ではどのようなポイントを気にされたんでしょうか。
富士通 横田さん:単純にはてなブログがいいなと思ったので。他の会社さんがどういう技術ブログをされているかも参考にしましたが、はてなブログを使っている会社さんが多かったですし、ソフトウェア開発者の方がよく書いたり読んだりしているプラットフォームという印象もあったので、ターゲットとしても合うと思いました。Markdownで書けることや価格が安かったといったこともポイントとしてはあります。
はてな 大西:ありがとうございます!
エムスリー 山崎さん:立ち上げは @maeharin(元エムスリー / 現エムスリーフェローの前原秀徳氏)が、はてなブログを使っていて、エムスリーの技術ブログでも採用したいという提案がきっかけです。理由は、我々が当初リーチしたい層と、はてなブログのユーザーが合致していたからです。先ほどもお話ししたように、立ち上げ時はエムスリーのテック領域での知名度が低いところからやっていかないといけなかったので、ある程度「面」のあるところの方が良いと考えました。自分たちでシステムを構築してイチからやるよりも、エンジニアコンテンツを楽しんでくれる層がいるところにディストリビューションしていく方が良いからです。
ブログに、はてなブックマークが「1user」つくだけでとてもうれしいですし、「人気エントリー」に入ったらスクショを取ってSlackでみんなでワイワイ盛り上がります。アウトプットすることで得た反響はモチベーションにもなるので、エンジニア文化と相性の良いはてなのサービスは良い循環を生むと思います。
◆「ブログに書けるような新しいことをやる」。継続するための仕組みづくり
はてな 大西:質問の中には「ブログを継続していくための仕掛け」といったものも多かったのですが、事前に伺ったお話だと、エムスリーさんは本当に多くの取り組みをされているようですね。そのあたりについてお話しいただけますでしょうか。
エムスリー 山崎さん:仕掛けはいろいろやっています。ブログが書かれやすくする工夫で言えば、逆説的ですが、やったことをブログに書こうとするのではなく、ブログに書けるような新しいことをやっていこう! というメッセージを出しています。エンジニアは、使い慣れている技術の方が予測できますし、見積もりも正確になるといったメリットがあるので、そっちに寄りがちですが、新しい技術・新しい言語・新しい仕組みやサービス導入など、何でもいいのでブログのネタになるような新しいことを仕事に組み込んでいこうと意識してもらっています。そうすることで、チャレンジもできますし、ブログ記事も書きやすくなるというメリットがあります。それをみんなで頑張って続けていると、文化になっていきますので、自然と新しいチャレンジが生まれたり支援されやすくなったりしていい循環になりますね。マネージャー陣もブログにできそうなことを見つけたら「それブログになりそうだね」と記事化を焚きつけるようにしてます(笑)
LINE 桃木さん:全く逆だなと思ってお話を伺ってました。アウトプット支援をする我々のチームから、いろいろなネタ出しや相談をすると「アウトプットするほどのことじゃないので...…」としり込みされちゃうケースも多いです。
どれだけ拡散されるかとか、はてなブックマークがたくさんつくかとか、たくさんの人に見られる話題になる記事を書かないといけないという印象を持っている人もいますし、「これは他の会社さんもやってることだし」とか「たいしたことじゃないので」みたいな意見をもらうこともありがちです。エムスリーさんのように組織全体として取り組めていないことや、アウトプットすること自体に価値があると感じて前向きに実践してもらうこととかも含めて、文化として醸成できていない点で苦労したり課題を感じたりすることがあります。
エムスリー 山崎さん:エンジニアとしては「アウトプットするほどのことじゃないので.……」と思ってしまう気持ちもすごくよく分かります。OSSのソースコードみたいなもので、初めから公開すると決めて書いていればいいけれど、普段書いているコードを公開するとなると「いやいや……」とハードルが上がってしまうのと同じことかなと思います。
最初からアウトプットする前提にしてしまえば、取り組む前の気持ちが変わるので、仕組みにしちゃうようにしています。
富士通 横田さん:仕組みもそうですし、マネージャーの方が「この仕事はブログ記事にまとめられるんじゃない?」と促すようなことをしてもらうのもすごく大事だなとお話を聞いていて思いました。我々としては、無理に焚きつけるのはよくないかな? という気持ちもあったので。参考にしたいと思います。
記事化のハードルについては、当社の場合は「なんでも出していこう」というスタイルではあるので、まずは良さそうなテーマが見つかれば書いていっている状態ですが、テーマの選び方やバランスは難しいですね。
はてな 大西:テーマ選定や記事化のハードルと同様に、「書いてくれるメンバーが偏ってしまう」といった参加者からの声もありました。そのあたりはいかがでしょう?
LINE 桃木さん:会社や技術組織の規模の問題もあり、個々のメンバーというよりも部署や組織単位でムラが出るという課題もあります。先ほどのアウトプットのハードルと同じですが、ちょっとしたTipsも積極的に出していこうと考える部署もあれば、もっと練ったものが出せるときだけと考える部署もあるので。同じように現場はもっと気軽にアウトプットしたいと思っていても、マネジメントはそうじゃなかったりというケースもあります。
エムスリー 山崎さん:仕掛けは用意しても、完全にシステム化するのは難しいかなと思います。最終的には「やらされ感」は避けた方がいいと思います。やらされ感が出ると書く人が減ります。自分で書いていても思いますが、ブログを書くのってすごく大変なんですよね。時間がかかるのでエンジニアにとっては負担がかかる。そのなかでできるだけ気持ちよく書いてもらうためには、テーマも任せて書きたいことを書いてもらうようにすることで、先ほどの質問にもあった「メンバーの偏り」とかも解消しやすくなるかなとは思います。
技術ブログの目的は採用であることを共通認識として理解してもらって、あとはエンジニアに任せて好きなように盛り上がってもらいたい。やらされ感がないことはブログ継続にとても重要だと思います。
◆ 読まれるための工夫と品質管理。LINEはユーザーと相性の良いコンテンツ出稿を実施
はてな 大西:テーマは自由に設定してもらう、といったお話にも少し関連しそうですが、読まれるための仕組みや記事の品質管理についてはどういった方針をお持ちなのでしょうか。
LINE 桃木さん:流通に関しては、はてなブックマークのテクノロジー枠のネイティブ広告を買ってます。はてなさんからもぜひ紹介してほしいと言われてるのでお話ししますが、これを話すことで空き枠がなくなると大変困るので、みなさんは買わないでください(笑)
先ほどもお話しした通り、たくさん読まれるみたいなことを重視しているわけではないんですが、見てもらうと有益なものもあると思っているので、手段を限定せずいろいろ試しています。そのなかの一つで、昨年の秋ごろから、はてなブックマークのテクノロジー枠の広告枠に技術ブログの記事やイベント告知など、ユーザーさんと相性の良いと思えるコンテンツを出稿しています。ブログに関しては、読まれることが書き手のモチベーションにはなると思いますし、エムスリーさんと同じように、当社のエンジニアもブックマークがついたら喜んでくれています。記事を出すことを目的にしていますが、出しっぱなしにならないように、見てもらうためにできることがあればというのは意識しています。
あとは品質管理についてのご質問ですが、ガイドラインを厳しくすると書くハードルがどんどん高くなっていく一方で、社外に出して良い機密情報はないかや技術的な確認なども含めたチェックはしっかりしないといけないので、バランスが難しいなと悩んでいるところです。富士通さんとエムスリーさんはどのようにされているかぜひ教えてください。
富士通 横田さん:我々も悩んでいるところではありますが、現状は執筆を担当した技術者が所属する部署のOKが出たら公開して良いとしています。品質は部署に委ねていて、運営からお願いしているのは、必ず一人称でご自身の言葉で書いてもらうことです。読み手にも伝わりやすくなりますし、書き手も自分が書いたということを強く実感できるのではないかなと思っています。
読まれる工夫としては、月曜日と木曜日の方が読まれやすい傾向にあるということをメンバーからも聞いているので、それを実践してみたりしています。
エムスリー 山崎さん:読まれるための工夫としては、社員の協力ですね。Twitterで記事をRTして拡散したりすることは、コンテンツを書いてくれた人に感謝を示すふるまいの一環にもなります。また、記事を読んでもらうために協力することも採用貢献にもなるよね、という話をしています。みんな自発的にやってくれているので、とてもありがたいです。
横田さんもおっしゃるように投稿するタイミングみたいなのも気にしています。オフィスに出社していた時代は、昼休み前を狙うために午前11時に投稿するとか、他のものと重なりすぎないようにするとか、そういうのは一応考えたりしています。
品質に関してですが、ブログ記事に関する経営への説明責任は私が持っているので、最終的なチェックは必ず自分でしています。エムスリーにはギークなエンジニアがたくさんいるので、テーマとか技術的な面白さみたいな意味での品質に関しては、みんないいものを上げてきてくれるので全く困ってないです。社外秘とか未発表の情報が紛れていないかとか、そういう視点でアドバイスをしているという感じです。
Slackにブログのレビューのためのチャンネルがあって、そこに完成度8割くらいのドラフトが上がってきたら、メンバーが勝手にわいわいレビューして、もっとこうした方が分かりやすいんじゃないかといった意見を交わして磨いていく感じがあります。その磨くプロセスも楽しみの一つですよね。
テーマ3「企業による技術ブログの価値とは?」
はてな 大西:大きなテーマになっちゃいますが、技術ブログの価値ってなんだと思いますか? というのをお聞きしたいなと思っています。ブログの目的のところやこれまでのお話と多く重複してくるとは思うのですが、ブログをやっていた良かったこと、効果、目的への貢献とか、直接的なことから副次的なものもあると思いますが、そういう具体的なことから、考え方みたいなものも含めて、質問もいただいていたので、みなさんのご意見を伺えればと思います。
エムスリー 山崎さん:面白いテーマですよね。エムスリーからすれば、技術ブログによるアウトプットには大きな価値があります。BtoCサービスだとまた別かもしれませんが、エムスリーの場合、一部コンシューマ系のサービスもやっていますが、メインのサービスは医療従事者に向けたものです。医療従事者の方以外はプロダクトに触っていただく機会もないので、ブログなどで発信しない限り、みなさんに技術力について伝えたり感じてもらったりする場がないんです。こういう発信をしていかないと、何をやっている会社か、どんな技術を持っているのか全く分からない状況になると思います。
ブログに限らずYouTubeや登壇などもありますが、アウトプットの場こそが、エンジニアの仕事の中身や技術レベルを表現できるものと考えています。
LINE 桃木さん:当社の場合も非常にいろんな事業展開をしていますので、ユーザーとして利用いただく機会がないものがあったり、LINEという会社の最新の状況を把握いただくような機会がなかったりという課題があります。会社の規模が大きくなっていても、一部分しか知っていただけてないところはあるので、きちんと自分たちから発信していかないといけません。
ブログの役割はいろいろありますが、関心を持っていただいたときに、それに対応するコンテンツが何もないという穴を埋めていきたいというのがあります。せっかく来てくれたのに深く知っていただく機会を失わないように、基礎工事的な部分ではありますが、大事なことをコツコツとやろうとしている状態です。それが採用だったりブランディングだったりにいろいろな形で貢献していくので、アウトプットすること自体に価値があると思っています。
富士通 横田さん:当社も社員数が多いので、社内でも何をやっているかよく知らなかったりすることもありますし、社外からも会社のなかのことが見えづらいという声をいただくことがあります。
具体的にどんなことをしているかを知っていただく場としての役割を果たしていますし、自分たち自身も、技術者の発信を応援したり促進したりすることが会社としてのあるべき姿だと思っていますので、それがいい形になってきているかなと感じています。
LINE 桃木さん:技術ブログには、エンジニアがアウトプットしたいと考えたことを紹介できる場所という役割もありますよね。自分の仕事を知ってもらえるというのはうれしいことだと思いますし。先ほどの話に出たクオリティの話で「切り口としての面白さに不安はない」とおっしゃっていたエムスリーさんのようには自信を持てないところがあるので難しいのですが...…。
以前広報として記事のチェックをしていたときは、日本語の表現が正しいかとか、そういう細かいところを気にしすぎていた時期もあったんですが、今はそういうことではなくて、エンジニアが書きたいことを書きたい表現で書いてもらって、それが他のエンジニアに伝わればいいと思ってます。この辺りのチェックにどのくらい工数をかけるかというバランスについては答えはなくて、品質と工数については日々悩みながらやってみているところです。
ちなみに、ブログ以外のチャネルを使ったアウトプットについては、どう思われますか?
エムスリー 山崎さん:YouTubeやイベント登壇などいろんなアウトプットの場やチャネルはあるんですが、ブログだからこその価値といえばSEOですよね。「エムスリー」と検索して何が出てくるかはとても重要で、かつてはその検索結果にエンジニアにとって有益な情報は全然なかったと思うんですが、4年間積み重ねてきたことで、いろんな技術情報を目にしていただけるようになりました。これはみんなで作った資産だなと思ってます。ブログはストックされて資産化するので、宝物です。
はてな 大西:みなさん目的は採用広報というのがあったかと思うのですが、やはり採用フローの中でもブログのアウトプットの効果みたいなものを実感されるケースは多いのでしょうか。
エムスリー 山崎さん:面接で盛り上がったりっていうのはよくありますよね。例えば転職エージェントからエムスリーを勧められたときとかも、どんなことをしている会社なのか調べるじゃないですか。そこに技術的に面白いことが書いてあれば興味が湧いて選考に進んだりするきっかけになったりするので、そういう効果はあると思います。選考が進むにつれて、より具体的に「こういう仕事やチャレンジもできますよ」みたいな補足資料的に送ったりもしてます。
そういえば採用イベントでもブログ記事を印刷して配ったら技術書みたいですごく評判が良かったりしましたね。ブログってそういう意味では使い勝手がいいんです。
そういう資産としての価値が社内で共有されれば、みんなも頑張って書いて資産を増やそう! という気になってくれるんじゃないかなと思います。
LINE 桃木さん:記事を出してすぐに効果がでるようなものじゃないんですが、面接で盛り上がったりとかっていうのはありますよね。そういう反響が集まって、ちゃんと書いた本人を含む社内に共有できる仕組みがあると書くモチベーションにもなると思いますが、そういう取り組みについては不十分なのでこれからできることがありそうだなと思いました。
富士通 横田さん:会社に興味を持ってくれた時に検索したら、ちゃんと知りたい情報が出てくるとか、面接や選考の中で話のきっかけになったりするっていうのは大きいですよね。SEOという点のメリットでブログは重要だと思っていましたが、今日エムスリーさんの話を聞いて、YouTubeとか他のチャネルでのアウトプットについても検討してみたいなと思いました。
はてな 大西:ブログという媒体でアウトプットしていただくことで、それが蓄積されて価値・資産になるというのは、当社がブログサービスをやっていくなかでとても大切にしていることだったりするので、うなずきながらお話を伺わせていただきました。あっという間の1時間で、話し足りないという感じもしますが、ご登壇企業の方々のお話を通じて、ご参加いただいたみなさまにも、技術情報のアウトプットの意味や価値について感じていただけたんじゃないかなと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。
イベント後のアンケートでいただいた質問
当日は事前にいただいたご質問もたくさんあったことから、Q&Aタイムを設けなかった代わりに、ご質問をイベントのアンケートに記載いただきました。その中で多くいただいた質問に関していくつか回答をご紹介します。
Q. 個人のブログではなく企業ブログに書く意義についてどうお考えでしょうか
まず3社とも共通してるのは個人ブログでの発信も推奨しているという点です。その上でエムスリーさんは「企業ブログに書いたものを採用貢献への評価対象とする」という方針にされているとのことでした。
Q. 業務時間の中に執筆作業は含まれますか
こちらも3社とも「含まれる」というご回答です。エンジニアの工数のなかの一定の割合を、勉強やアウトプットに使用してよいというルールにされており、その中での執筆と位置付けるケースが多いようです。
ご登壇いただいた企業の採用や技術に関する情報をご紹介します。
エムスリー株式会社
富士通株式会社
LINE株式会社
はてなブログの技術情報発信支援について
本イベントでご紹介した「はてなブログ for DevBlog」について詳しくは以下よりご覧ください。現在、DevBlog運用の知見や悩みを共有できる「ご利用者限定の専用Slackコミュニティ」を準備しています。ご契約の方から順次ご案内いたします!
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