そこで、週刊はてなブログでは「好きなもの・こと」についてつづるはてなブロガーに、その思いを語っていただく連載【わたしの偏愛】を始めます。
初回は、ブログ「OFFTAMA」のたまさん (id:offtama) に「旅をすることの楽しさ」について寄稿いただきました。新型コロナウイルスの影響があるまでは、全国各地を旅し、ただ観光地を巡るだけではなく、登山やキャンプも楽しんでいたというたまさん。旅にはまったきっかけや、印象に残っている旅、そして最もハマったという「ロードバイク旅」について語ってもらいました。
※記事は2020年12月に執筆していただきました
はじめまして。たまといいます。「OFFTAMA」というブログを運営しています。
二度目の緊急事態宣言が発令された今は自粛していますが、それまでは仕事(オン)に対する休日(オフ)を満喫する目的で、週末になれば気分転換に遠くへ出かける生活をしていました。
私が本格的に旅を始めたのは社会人になってしばらくした後、時間も資金も余裕が出てきてからです。実は学生時代は今とは真逆の生活を送っていて、1日の大半を研究室でパソコンと向き合う閉塞的な生活が続いていました。
そんな中、余裕があるときにふらっと気分転換に遠出したのが、私にとっての旅のはじまりでした。そのときに感じた旅先での空気の美味しさが忘れられず、もっともっといろいろな場所に行って、たくさんの体験をしてみたいという思いが徐々に強くなっていったのを覚えています。
それから社会人になって、そんな思いを実現させるためにあらゆるジャンルに手を出してみました。好きな作品の舞台訪問や登山、果てには温泉だったりキャンプだったり。それ以降、行き先はもとより、その場所を訪れたいと思う動機も千差万別になっていって、今に至ります。
私がブログを始めたきっかけは至極単純で、旅の記録を写真と文章の両方で保存しておきたかったからです。
当初はカメラで撮った写真を編集してHDDに保存し、たまに後から見返すということをやっていたのですが、すぐにこれでは不十分だと気付くことになりました。
写真だけでは当時の「出来事」は把握できるものの、自分がそのときに何を感じたかまでは思い出しにくかったのです。なので、自分の記憶を文章にして残しておくことによって、当時の振り返りをより正確に行う目的でつらつらと書き始めたのがブログ運営のはじまりでした。
いわば備忘録なわけですが、忘れやすい自分にとってはこのスタイルがよく合っているようです。
自分の中で印象深い記事は、岐阜県内の各地をロードバイクで旅した記録です。
自分が去年引っ越してきたばかりのこの岐阜県という土地をもっとよく知りたいと思い、観光雑誌にはまず載らないような県内の場所を片っ端から走ってみようというのが目的でした。
結果的には、実際にその場所を訪れてみて初めてその魅力に気付くような素敵スポットを数多く見つけることができたし、岐阜県をさらに好きになることができました。あとから見返していても当時の興奮が蘇ってくるような、とても良い体験ができたと思っています。
ロードバイクで移動する旅にのめり込んだ
何が「旅」かは人それぞれだとは思うけど、自分にとっての旅は風景や宿泊を楽しむ行程全体を指します。その中でも一番のめり込んだのは、ロードバイクで移動する旅です。
それまでにやってきた旅はどちらかというと、目的地で何をするかを重視したものでした。訪れる所といえば有名な観光地のみをつなぐように回ることが多く、道中は単なる移動に過ぎませんでした。
そもそも、観光雑誌や観光サイトに目を通してみても、旅においては訪れるべき「スポット」のみに焦点を当てているところがほとんどですよね。移動は退屈な時間。自分もそう考えていました。
それが一変したのが、1年ほど前にロードバイクで旅をしてからです。
最初は運動不足解消のために始めたロードバイクという趣味を旅に転用してみよう、と軽い気持ちで始めてみたものの、これがとてつもなく面白い。ロードバイクの速度域で目的地までの道を走っていると、今までだったら見過ごしていたような風景がふと目に留まるようになりました。ちょっとした小路だったり、田園地帯に広がる町並みだったり。
ロードバイクという乗り物の小回りの良さも相まって、道中の景色を楽しむのも悪くないと思えてきたのです。
そしてロードバイクでの旅を重ねていくうちに、いつしか目的地に着くことよりも「いかに寄り道するか」の方を気にするようになりました。
そんなわけで、現在では走るルートを前もって決めておくようなことはしていません。現地を散策していく中で初めて目にしたり、遭遇したりする出来事に一喜一憂するのがとにかく楽しいからです。
もともと私は旅の行程中にSNSをすることは少なく、旅先での時間の過ごし方を大事にしています。何も考えずにただ風景を眺めたりだとか、夜に町を散策しながら考え事をしたりだとか。
ロードバイクでの移動は、そんな時間の過ごし方にさらなる彩りを加えてくれました。
思い出に残っているのは『ふらいんぐうぃっち』の舞台訪問
これまでの旅の中でも印象深いのは、石塚千尋先生のマンガ『ふらいんぐうぃっち』の舞台訪問旅です。
非常にのんびりとした雰囲気を感じさせるお気に入りの作品で、読んでいて実に心地良いのも魅力の一つなのですが、私にとって一番お気に入りなのが作中に登場する風景。舞台となっている青森県弘前市や県内各地の風景が作中に数多く登場していて、ぜひここを訪れてみたい、と思ったときにはもう行動に移していました。
当時は香川県に住んでおり、ただでさえまだ行ったことがない青森県ははるか遠くの地に思えたものの、新幹線や電車を乗り継いで弘前駅に降り立ったときの感動と言ったら……!
そして青森県を実際に走っていく中で、作中の風景がそのまま目の前に広がっていることに感動するばかりでした。あたかも漫画の世界に入り込んだような錯覚を覚えることもあって、青森県の存在が自分の中で急に大きくなりましたね。それ以来、青森県は毎年訪れるようにしています。
私が思う旅の良さとは
旅において、自分が重視するのは「いかに自由気ままに過ごすか」の一点だけ。
ロードバイクによる旅は自分が求める「行程の自由さ」を簡単に実現させてくれるし、旅の最初から最後まで楽しめるというのは、かけがえのない利点だと感じています。今後もロードバイクによる旅は続けていきたいし、その度に新しい景色に出会えると思うと胸が高鳴って仕方ありません。
今の時代、美しい写真や動画はネット上にいくらでも転がっています。しかし、実際に現地に行ってこそ味わえる「体験」が自分のやりたいことであり、旅先で過ごす非日常な時間の流れがとても心地よく感じてなりません。
現地の方とのやりとりや朝日の眩しさ、野焼きの煙たさ、現地の気温など、デジタル化されていないものを味わうことにこそ旅の面白さがあると思います。そういうものに出会うことで、自分の世界や想像力を徐々に広げていくことが何よりも楽しいのです。
同じ場所で同じような生活をずっと続けていると、自分の世界が非常に狭くなってしまう気がしませんか?
私はさまざまな旅を通じ、新しい風景や場所に出会うことによって「自分の中の日本」をどんどん濃く、広くすることができたし、旅先での何気ない一面や歴史などについて思いを馳せているうちに、静かに物事を考える時間も増えました。
これからも旅を続けて、自分の世界を広げていきたいです。