“初めて”のドキドキを書き残す
こんにちは、はてな編集部の大木です。
新しいことを始める時、新しいものに触れる時、新しい場所に足を踏み入れる時。そんな「初体験」のタイミングでしか味わえない、不安と期待の入り混じった何とも言えない気持ちを、皆さんは覚えていますか?
私はその刺激を日夜求めて、新しくできそうなことを軽率に探し、軽率に始めています。まだまだドキドキしていたい。
さて、私たちはこれまでにたくさんの扉を開き、時に後悔したり、時に興奮したり、時に感動したりしながら、人生を豊かにしてきたはずです。でも、大人になるにつれ、忙しくなったり、体力がなくなったりで、新しい扉を開くことがついおっくうになってしまう。
勇気を出して扉を開いた先に、どんな景色が見えるのか。それは体験した人のみぞ知る世界です。
……というわけで、今回はさまざまな「初体験」を記録したエントリーを集めてみました。各人の渾身のレポートを読み、皆さんもぜひ追体験してみてください。
- 「29歳彼氏いない歴イコール年齢」がカラオケボックスで初対面の男とファーストキスを経験した後、なぜかプロボクサーになった話
- 「英語力0」の人間が何かの間違いでアメリカに住んだ結果、「英語圏で暮らすだけでは英語を喋れるようにはならない」と気付いた話
- 初めてのアニクラで知らないオタクと「何か」を共有し、女児向けアニメのOPが爆音で流れる中、DJに「ありがとう」と言っていた話
- 自転車すら持っていない新郎と「結婚式の余興動画」を撮るために東京から大阪まで自転車旅をしたら、結婚の大変さが身に染みた話
- 鼻毛の処理方法に悩んでいた建設業者がブラジリアンワックスと出会って、「つっるつる」の「爽やかなイケメーン」に変貌した話
- ドヤ街で「私の誕生日祝ってください」。ハードな人生を歩んできた寿町の住人と交流したら、一生記憶に残るバースデーになった話
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「29歳彼氏いない歴イコール年齢」がカラオケボックスで初対面の男とファーストキスを経験した後、なぜかプロボクサーになった話
プロテストに合格したからといって、これまでの生活が劇的に変化したわけではない。良くも悪くも現状維持だ。
ボクシングを始める前の私は、人生に飽きていた。大体のことはもうやり尽くした気がしていて、完全に手詰まりだった。人生どうでも飯田橋。どうでもよくなってからが人生だ。
自分が人生の主人公になることなんて一生ないと思ってた - ねているとき いがい ねむい
最初にご紹介するのは、GAMEBOYZさんがつづった人生の1ページ。
カラオケボックスで初対面の男性に「ラムコークを口移し」されてファーストキスを経験。そこからボクシングジムに入会し、プロボクサーを目指すという圧倒的な情報量、怒涛の展開に引きつけられます。
プロテストに向けたトレーニングも思わず笑えてしまうほど「ガチ」です。1年半、ほぼ毎日ジムへ足を運び、ストイックに修練を積む姿はアスリートそのものと言っても過言ではありません。
読み手がツッコむ暇もないほど、あらゆる出来事、あらゆる感情が隙間なく繰り出され、物語がどんどん展開していく様は圧巻。
「この歳になってまた打ち込める対象ができたことが嬉しかったし、出来なかったことが出来るようになっていく過程も楽しかった」という感想や、意外過ぎるオチも読みどころの一つでしょう。
予測できないから面白い。まさに「初体験=人生」を体現するエントリーです。
「英語力0」の人間が何かの間違いでアメリカに住んだ結果、「英語圏で暮らすだけでは英語を喋れるようにはならない」と気付いた話
英語圏に行って暮らすだけでは英語を喋れるようにはならないんだなあ
英語力0が英語圏で暮らしてみて思ったあれこれ - LOGLOG
ピンクを「punk」とつづるほどの英語力だったにもかかわらず、ひょんなことからアメリカ・サンフランシスコに滞在し始めたこんのけいなさん。
上で紹介したエントリーからは、現地人との間で生じるコミュニケーションの食い違いや、こんのさんの奮闘ぶりが伝わってきます。
会話する中で、「聞き返されることにあまりに慣れてしまって、逆に一発で行った(編注:原文ママ)ことが通じると、びっくりして会話の間が空く」という、まるでコントのようなシチュエーションもあったのだとか。読んでいる分には楽しいのですが、その場面を想像すると、こんのさんに労いの言葉をかけたくなります……。
そうした困難さを通じて、英語がしゃべれない経験と「ディスエイブル経験」の共通点を見出していく、という興味深い展開も魅力。
「初体験」ならではの緊張感や試行錯誤が伝わるエントリーです。
初めてのアニクラで知らないオタクと「何か」を共有し、女児向けアニメのOPが爆音で流れる中、DJに「ありがとう」と言っていた話
まず、知らんうちに飛び跳ねている。腕が意思と関係なく振り回される。隣の知らないオタクと何かを共有している気がする。DJに「ありがとう」って言いたくなる。口が何かを叫びたくてたまらない。人をバケモノと思える人は、自分もバケモノになる。気がつけば僕は獣物の群れに入った小さな獣と化していた。十曲に一曲程度のローペースだが、何かが僕を動かし始めた。
はじめてアニクラに行った話 - 月を旅路の友として
続いて紹介するのは、「高校時代からの親友がDJデビューをする」という理由でアニクラ(※ アニソンばかり流れるクラブイベント)に初めて足を踏み入れた、はまなすさんのエントリー。
「薄暗いフロアに漂う煙草の香り、その中に流れる爆音の女児向けアニメのOP」という独特の雰囲気に最初は戸惑っていたものの、徐々にフロアのオタクと一体化していく、その過程が静かな狂気をはらむ表現とともにつづられています。
一番の盛り上がりどころは、中学生時代の思い出の曲である『寝・逃・げでリセット!』(※ アニメ『らき☆すた』の登場キャラ・柊つかさのキャラクターソング)がフロアに流れるシーン。
それまで傍観者として引き気味に場の様子を眺めていたはまなすさんが、「反射で最前へ飛び出し」「跳躍」する、という意外な展開にグイグイ引き込まれます。
クラブイベントらしい一体感や爽快感とともに、「初体験」ならではの心境変化が伝わってくるエントリーです。
自転車すら持っていない新郎と「結婚式の余興動画」を撮るために東京から大阪まで自転車旅をしたら、結婚の大変さが身に染みた話
この日は豊橋の先っちょ「伊良湖岬」まで行かなければいけない。。。うん、このままだと間に合わないwwwどうにか行軍のペースを上げなければいけないということで、自転車組3人のうち一人だけを車に積み込んで体力を回復、それをかわりばんこに行うことで常に全力で自転車を漕ぎ続けることにした。はじめの休憩者はサイコロで決め、20kmくらいごとに交代をしていく。サイコロで走者に決まった僕は新郎を引きながら平坦を飛ばす。
今度結婚する新郎に自転車を買わせて大阪まで走ったら達成感がすごかった - 銀塩日和
結婚式を挙げる前職の同期(新郎)に「余興」を頼まれたいのっちさんが、余興動画を撮るため、新郎とともに東京から大阪へ自転車で向かう、その一部始終がつづられたエントリー。
ロードバイクはおろか自転車すら持っていなかった新郎の奮闘ぶりもさることながら、道中のトラブル対応やミニゲームも読ませるポイントの一つでしょう。
サイコロを使った“行軍”のアイデアなんて、もはや『水曜どうでしょう』の世界です。こういうの一度やってみたかったんだよな〜……。読み進めるにつれてうらやましさばかりが募る。
無事大阪に到着してビールを胃袋に流し込んだ瞬間、きっと「最高」を感じたに違いありません。たとえ何歳になっても、こんな体験をしてみたいものですね。
「初体験」の達成感を味わえるエントリーです。
鼻毛の処理方法に悩んでいた建設業者がブラジリアンワックスと出会って、「つっるつる」の「爽やかなイケメーン」に変貌した話
このような顔面で、1分という時間を過ごしてほしい。
そして1分後、両手でこの棒を持ち、「お母さあぁぁぁぁんっ!」という掛け声とともに一気に引き抜く。
【鼻毛脱毛】地獄のチュッパチャップス - 孤高の凡人
もちろん、「初体験」は大きなイベントに限らず、日常の中にも潜んでいます。次にご紹介するのは、鼻毛脱毛に挑戦した孤高の凡人さんのエントリー。
孤高の凡人さんは建設業に携わる方で、ちりやほこりにさらされる仕事柄、鼻毛が伸びやすいという悩みがありました。ハサミや電動鼻毛カッターなどさまざなツールを試して試して…。たどり着いたのはブラジリアンワックスでした。
悩みの種だった毛を綺麗さっぱり抜き、孤高の凡人さんが「爽やかなイケメーン」へと変貌するまでの過程をとくとご覧あれ。
そして、タイトルの「地獄のチュッパチャップス」とは何なのか。察しの良い方はすでにお分かりかもしれませんが、エントリーを読んでぜひ確かめてみてください。その意味を知ると、ゾワっとします。
日常に潜む「初体験」の醍醐味を感じられるエントリーです。
ドヤ街で「私の誕生日祝ってください」。ハードな人生を歩んできた寿町の住人と交流したら、一生記憶に残るバースデーになった話
何も起きなかったのはたまたま運がよかっただけかもしれない。
ドヤ街の寿町へ「誕生日お祝いして!」 - つまみぐい人生100
けれど、怖気づいていた自分が申し訳なくなるくらい、寿町の温かい人々のおかげでとびきりの誕生日を過ごすことができた。
寒空の中、離れるのが名残惜しくなるほど心が温かい。
感謝の思いがこみ上げてきた。
誕生日に足を運んだのは、横浜のドヤ街・寿町。そこで初対面の「住人」たちと交流しながら、誕生日を祝ってもらうーー。そんな誰もが驚くような体験の一部始終をつづったのは、ツマミ具依さんです。
道行くおじちゃんに手当たり次第、「今日誕生日なんですよー!!」と声を掛けていく。ある時は新興宗教の勧誘を受けたり、ある時はビールを集られたり、またある時は警察沙汰に遭遇したり。そうした“ハプニング”を乗り越えながら、持ち込んだ色紙に祝福のコメントを書いてもらいます。
ツマミさんと住人の心温まるやり取りだけでなく、コメントの内容や筆跡から垣間見える住人の生き様も読みどころです。
その後、ツマミさんは「祝ってもらった恩返しに」と越冬ボランティアに参加。ツマミさんがホームレスの置かれた現実やボランティアの整理できない複雑な思いに触れ、寿町を“自分ごと化”していく過程も読み応え抜群です。
楽しみながら学べる、「初体験」をノンフィクション記事のように描いたエントリーです。
「初体験」にまつわるエントリーを読むと、他人の人生のターニングポイントにに立ち会えたようで、なんだかうれしくなってきますね。
「初体験」は日常の至る所に転がっています。どんな些細なことでも構いません。あなたも自分の「初体験」の思い出を書き残してみませんか?
大木敦史
インターネットの海を漂っています。