ヘヴィメタルはブログの中で鳴り響く
歌います。
ドゥルルドゥルルルドゥルルドゥルルルーー
ドゥンッキッドゥンドゥドゥンドゥキッドゥン
ドゥンッキッドゥンドゥドゥンドゥキッドゥン
ドゥンッキッドゥンドゥドゥンドゥキッドゥン
ドゥンッキッドゥンドゥドゥンドゥルルドゥルルルーー
いや、なにってイギリスのメタルバンド、SikThの名曲『Summer Rain』に決まってるじゃないですか。
続けますね。
ドゥンドゥンドゥタドゥンドゥンドゥタドゥタドゥン
ドゥンドゥンドゥタドゥンドゥルルドゥルルルーー
ドゥンドゥンドゥタドゥンドゥンドゥタドゥタドゥン
ドゥンドゥンドゥタドゥンドゥルルドゥルルルーーーー
うぇーーー!あっびっちゅあーーっぷっ!
こんにちは。はてな編集部の初瀬川です。
300文字近く熱唱して、なにをお伝えしたいかというと、私はヘヴィメタルが大好きだ、ということです。
轟音のごときギター、ベース、ドラムと、その上に重なるヴォーカルの咆哮。否応なしにテンションをブチ上げられますし、音の向こうに透けて見える、「誰よりも速く楽器演奏したるぜ!」「誰よりも難しく複雑な曲演奏したるぜ!」という、演奏者たちのパッションに思いを寄せると……、なんか愛おしさすら感じるわけです。
しかし一方で、ヘヴィメタルは(少なくとも現在において)メインストリームの音楽ジャンルとは呼べません。音楽ストリーミングサービスのアプリを開いても、「メタル」はずいぶんとすみっこに追いやられているようですが、ブログの世界を散策してみると、そこかしこにメタルを愛してやまない同志の存在が感じられます。
たとえば、SUMI-chang (id:sumichang6bass)さんも、冒頭、私が歌い上げたSikThへの愛をアルバムレビューという形でつづっています。
ベースの聴きどころ
1曲目"Bland Streat Bloom"のサビ、LowAサウンドの超ヘビーなボトム。
SikTh 渦巻く変拍子と旋律と叫び アルバム3作レビュー - 重六低音 おもろくべーす
4曲目"Summer Rain"のスラップ。ギターもスラップし始めて、驚異のチョッパーユニゾンが展開。
12曲目"As The Earth Spins Round"の中盤、美しい旋律のタッピング。
分かる。分かるぜ同志よ。
どうやらSUMI-changさん、ベースプレイヤーのようで、その他のディスクレビューを拝見しても楽曲やアーティストのディテールの部分に注目されていることが多い印象。
私見ですが、「ヘヴィメタルを楽しむ」とは、「演奏家の超絶技巧を堪能する」という要素を内包しています。この観点においてSUMI-changさんの「演奏技術を“細かく”堪能する」レビューのスタイルは実に正攻法。他のエントリーを読んでいて、「あ、あのアルバムにはそんな演奏テクが投じられていたのか」と開眼ならぬ開耳を私に与えてくれるのです。
本稿は、こんな具合に私のヘヴィメタル観を拡大してくれるエントリーを集めてみました。ぜひ、ヘドバンしながらご覧ください。
ブログを読み、未知のヘヴィメタルに出会う
メタルの見識を深めるうえで基本となるのは、やはりディスクレビューやバンド紹介に目を通すことでしょう。誰かの知見や経験が刻まれたブログを読んでいると、ときに「えっ!?そんなバンドいたの?」という驚きが得られることもあります。
たとえばGase (id:yk_prazdroj)さんは、非常にマニアックな東アフリカはケニアのヘヴィメタルシーンの様子を紹介してくれています。ケニアのヘヴィメタルなんて1フレーズも知らない私にとって、ここで紹介されるバンドや楽曲は、まさに未知の世界で大変興味深いのですが、そそられるのは次の一節。
英語とスワヒリ語のミックスというだけだと、英語と日本語をミックスしている日本のロックだってたくさんあるので、ありがちな話なわけですが、この曲では例えば、「Nitachange」なんて言い方をしたりしてます。「Ni - ta - change=I will change」というわけです。英語の「change」をスワヒリ語の活用の中に組み込んでしまってるのですね。
Rock in Kenya!!~ヘヴィメタル&ハードロック編 - GaSELoG
ケニア人の口語表現だとこういうのはちょくちょく耳にします。「Nitakumiss=Ni - ta - ku - miss=I will miss you」みたいな。おもしろいですよね。
メタルの歌詞の一節から、スワヒリ語の口語表現を知る。音楽以外の部分でも「へーそうなんだ!」と自分の世界が拡大していくのは、実に楽しい経験です。Gaseさんのブログには音楽以外にもケニアの生々しい情報がつづられています。興味のある方はぜひご一読を。
ディスクレビュー / バンド紹介という観点ではid:meshupecialshi1さんの以下のエントリーは圧巻です。
progressiveundergroundmetal.hatenablog.com
あまりにも幅広く、膨大なリスニングの履歴が刻まれた超長大な目次エントリーは、スクロールしてもしても終わりません。スクロールバーの小ささにビビるほどの情報量ですが、「プレ・テクニカル・スラッシュメタル」や「ハードフュージョン・djent以降」など、実に多くのジャンルから優れたバンドを紹介してくれています。さらに、いくつかのバンドやジャンルに関してはもう一つのブログ『Closed Eye Visuals』に詳解をつづっています。加えて、ご自身のTwitterも交え縦横無尽に「音楽の紹介」を展開する様子は、まさにプログレッシブ……失礼、プログレッシヴです。
ヘヴィメタルに付随するさまざまなトピックを考える
さて、なにか好きなものがあると、その周辺の話題にも興味が出てきます。サッカーが好きな方だったら、選手のプレーだけでなく、チームの勢力図や財政事情、戦術の時代的変遷なんかにも興味を持たれるでしょう。
ヘヴィメタルファンも同じく、メタルに付随するさまざまなトピックに関心を寄せています。たとえば「ハードロックとヘヴィメタルの境界はどこだ」問題です。ハードロック、ヘヴィメタル、ともに「うるささ」が音の基本になっており、なおかつ「ハードロックを基盤に発展した音楽がヘヴィメタル」という解釈もあり、両者の境界は非常に曖昧です。
おそらく、ハードロックとヘヴィメタル両方に興味のない方からしてみれば「マジどうでもいい」ことかもしれませんが、ファンからすると一大事なのです。そして、この解決し難いトピックに力技で結論を出したのが、ふかづめ (id:hukadume7272)さんです。
ハードロックは髪を伸ばす。
ハードロックとヘヴィメタルの違いについて講釈を垂れる。 - シネマ一刀両断
ヘヴィメタルは筋肉をつける。
こんな調子で、数々の「ハードロックとヘヴィメタルの違い」を提示します。あまりの暴力的な区分に思わず笑ってしまいますが、同時に「ちょっと分かるかも」という感覚が湧いてきます。
いや、マジレスすると「ハードロックを代表するバンド、ガンズ&ローゼスのギタリスト、スラッシュは(かつて)筋骨隆々だったじゃねーか。ヘヴィメタル界屈指のギタリスト、ザック・ワイルドはめっちゃ長髪じゃねーか」など、反論はいくらでも出てきます。しかし、メタルファンが夜な夜な居酒屋で繰り返しているような議論を与えてくれるエントリーに感謝しかありません。
もうひとつ、最近ヘヴィメタルファンをざわつかせたトピックがあります。それは「ギターソロはスキップされる」論争です。ご記憶の方も多いかも知れませんが、「ストリーミングサービスでは楽曲の中のギターソロパートがスキップされる傾向があるそうだ」という、あるツイートが発端になり盛り上がった議論です。
前述のとおり、演奏家の技巧を楽しむ傾向があるヘヴィメタルにおいて、ギターソロとは大きな意味を持つ楽曲の構成要素であり、「ギターソロはスキップされる」とは、大袈裟かも知れませんがメタルファンにとってアイデンティティの喪失とも感じられるトピックだったのです。
こうした「ギターソロはスキップされる」論争に冷静な考察を行ったのが、「60年代後半の日本の歌謡曲やロック、また90年代初頭のUK/USのインディーロックやメタル、21世紀の辺境音楽が好物。」というid:guatarroさんです。
1991年のオルタナティブ革命でギターという楽器の特権性は失われ、2000年台のポスト・パンク・リバイバル以降はリズム楽器としての性格を強めていった。その結果、ギタリストの興味関心もギターソロから離れていったということ。
ギターという楽器が特権性を失っていく過程から考える「ギターソロ論争」 - 森の掟
この考察を目にし、改めて考えてみると、「そういや自分もあまりギターソロに興味ないな」ということに気付かされたのです。自分が好きなのは、ギターソロではなく、ギター、ベース、ドラム、ヴォーカルが渾然一体となって奏でるヘヴィでテクニカルなグルーヴなのだ、と自分のヘヴィメタル観が明瞭になったように感じます。
と、はてなブログの世界を眺めていると、自分の知らないバンドや知識が豊かになっていき、「ヘヴィメタルの聴き方・見方」がどんどんとアップデートされていくように感じます。本稿を読んでくださったメタルファンの同志諸氏がこれらエントリに触発され、新たなブログメタルを奏でてくれることを、心から期待しています!
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追記
2022年8月4日(木)18時に公開した内容に一部誤りがありました。同日21時58分に当該箇所を修正しました。お詫びして訂正いたします。
初瀬川
はてなスタッフ since 2017。企画したり編集したり書いたり撮ったり。