「本物」の人生は会社にある? 山にある? 芥川賞受賞作品『バリ山行』感想ブログまとめ

毎日さまざまな話題のエントリーが生まれるはてなブログの中から「旬な話題」をピックアップする企画「はてなブログで話題」。今回は小説『バリ山行』をテーマにエントリー紹介します。

松永K三蔵さんによる小説『バリ山行』。第171回芥川賞を受賞したことが大きな話題となり、はてなブログでも感想エントリーが多数投稿されました。

作品名の「バリ」とは「バリエーションルート」の略で、バリ山行とは整備された登山道(一般道)ではない道を選んで山を登る(歩く)行為のことのようです。どんな山に登るかではなく、どうやって登るかがテーマとなっています。

本作では、山と並んで舞台となった中小企業の描写がリアルだったことも評判でした。サラリーマンとして会社に勤める人の気持ちがよく描かれているからこそ、登山の経験がない読者をも引き込む作品になったのかもしれません。

この記事では、そんな『バリ山行』について書かれた、はてなブログへの投稿をご紹介します。

会社人生と山がオーバーラップする

しかし実は本書、二人のバリ山行自体をメインにしながら、社内のサラリーマン事情など周辺描写の方がページ配分されているんですね。
「人生と山登りは似ている」と良く言われ少々使い古された概念ではあるものの、会社人生と山をオーバーラップさせる主人公の悲哀は共感できます。

「バリ山行」読めば自分も登ったような気になれるかも - Minoのブログ

家族が「ハイキングブックと思って」購入したことで本書と出会ったという Mino(id:xsmino)さん。登山がテーマの本作で、実は会社員としての描写にもページが割かれていることを指摘しています。

このことから、人生と登山を重ねるような「少々使い古された概念」にも共感が持てたそう。想像していた「訳のわからない顛末」には至らなかったようですが、山と会社というテーマに惹きつけられるものがあったようです。

minonoblog.hatenablog.com


「本物」は会社と山、どっちにある?

ニヤニヤ笑いながらギリギリのルートを行く妻鹿さんもヤバいし、実際に死にそうな事態になってる波多もヤバい。むき出しの山で「本物」を感じたい妻鹿さん、山はあくまでも遊びであり「本物」は街や生活にあるという波多。見方によってはどちらも正解だし、どちらだけでもないんだろうなと思う。

「本物」は山にあるのか街にあるのか。松永K三蔵『バリ山行』がおもしろかった - 旅と日常のあいだ

山と会社、「本物」はどちらにあるかという問いについて「どちらも正解だし、どちらだけでもないんだろうなと思う」とつづるのは toko(id:lovestamp)さん。作中では「本物」という言葉が印象的に登場しましたね。

「ヤブこぎ」の描写について「一緒にしんどさを体感した気分」だったという本作だからこそ、このような問いも自分ごとのように考えられたのかもしれません。

www.tabitoko.com


妻鹿さんに共感もできるけど、危険は排除していくのが醍醐味だと思う

メガさんには共感できる部分が多かった。勝手に倉庫の資材を持ち出して、顧客が喜ぶ工事をやってしまうところなど、ホントに自分の事を言われている気がした。ただ、「バリ」中に危険個所を通過するところで、「本当の危機感」を味わうあたりは違った。

芥川賞作品を読む - タルキートナでバドワイザーを

登場人物のうち、妻鹿(めが)さんに共感できる部分が多かったという id:sandyou さん。

ただし「山好き」だという自身は「危機感や、危険を求めることはしない」といいます。難しいルートを選ぶことはあっても「困難なルートを、自分が持ち合わせるテクニックを駆使して、危険を排除していくのが醍醐味だと思う」そう。

エントリーでは現実で「バリ」を愛好する人たちと妻鹿さんの「バリ」観の違いについても触れられています。登山アプリの使い方など、登山経験があることでわかる作品のディテールもあるようです。

sandyou.hatenablog.com


かつての「みそぎ登山」を思い出した

山は怖いものだ。上記のゼミで行った登山で、それを痛感する出来事があった。確か比叡山だったと思うが、私たちはその道中で迷ってしまったのだ。山の中を彷徨い、アプリを何度も引っ繰り返してみたが、正規のルートに出くわさない。登山歴の長い教授が、そのときこんな提案をした。

【書評】バリ山行【松永K三蔵】 - 羊を逃がすということ

山登りの描写について「あまりの息苦しさに、そこから抜け出そうと一息に読み切ってしまった」と語る いこみき(id:paperback63)さん。『バリ山行』を「文句なしの名作」だと評しています。

また、この小説を読んだことで、かつて大学のゼミで企画された「みそぎ登山」のことを思い出したのだとか。すぐ藪が茂ってしまう低山こそ迷いやすいのかもしれませんが、意図しない「バリ」には不安になるものですね。

paperback63.hatenablog.com




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By まこまこまこっちゃん
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まこまこまこっちゃん

1994年大阪生まれ、京都在住。ライター・編集、バンド活動をしたり、川沿いでお茶を淹れたりしています。好きな犬は柴犬、好きな国はモンゴルです!