週刊はてなブログでは、「【浸かろうSF沼!】」と題した特集で、2020年に発売された「SF小説」をはてなブロガーたちの感想とともに紹介しています。
後編となる今回はSFの魅力にどっぷり浸かりたい方に向け、連作小説集と長編をご紹介します!
スピリチュアルと科学が逆転!? 異形のユートピアを描き出す『るん(笑)』
▼『るん(笑)』ってどんな本?
人々がスピリチュアルを信仰し、井戸端会議で陰謀論が飛び交う迷信の国、ニッポンでの日常を描いた異色の連作小説集。著者の酉島伝法は刊行した単行本が2作連続(『皆勤の徒』、『宿借りの星』)で日本SF大賞を受賞するなど、熱狂的な人気を誇るSF作家です。今作は、中編3作で構成されており、文量や文体としては読みやすいものの、描かれる現実社会とは少しずれたリアルな「日常生活」が精神に与える衝撃はかなりのもの。元気な時に読むのがおすすめです。

- 作者:酉島伝法
- 発売日: 2020/11/26
- メディア: Kindle版
酉島伝法の新刊とあらば買わないわけがない
こんな世界嫌だー! と思いながら最初は読んでいたわけですが、冷静になるにつれて気づかないわけにはいかない事実がある。そうはいっても我々の世界は多かれ少なかれこういう認識で回ってるとこあるよね、ということです。
kino(id:kino_keno)さんは今作の「言霊の強さ」にまいりつつも完走したそう。内容から本の装丁までじっくり観察し、感想を残しています。「すごい圧を感じる……」。
この世界は、コミュニティは確かに存在する。現実だ
怖いもの見たさでも良い。この本を読んでくれ、そしてできれば感想を教えてくれ。
今作を読み「眩暈がするほどキツかった」と語るぜんだれい (id:Zendarei)さん。過去のご自身の経験に重ね合わせ、表題作「るん(笑)」の世界観の凄まじさを書きつづっています。
バグダードの街で繰り広げられる鮮烈なスクラップ & ビルド。イラクSF『バグダードのフランケンシュタイン』
▼『バグダードのフランケンシュタイン』ってどんな本?
邦訳されることが少ない現代イラク小説。その中でも2020年、最も注目を浴びた作品の一つがこの『バグダードのフランケンシュタイン』です。舞台は連日、自爆テロが発生する2005年のバグダード。さまざまな遺体のかけらを集めて作られた「フランケンシュタイン」が都市を暗躍します。ストーリーの面白さはもちろん、描かれる不安定な情勢下の都市における日常生活自体の衝撃も大きく、深く考えさせられる一作です。

- 作者:アフマド・サアダーウィー
- 発売日: 2020/12/16
- メディア: Kindle版
死に直結する暴力の、異常なまでの「日常性」
奇想ともSFとも安易に言い切れない凄みが、本書にはある。21世紀イラクとバグダードを凝縮しきった小説だった。
数々の海外文学をブログで紹介してきた ふくろう (id:owl_man)さんは、今作を紹介しつつ、さまざまな現代イラク小説を参照して、「非日常だった暴力が『日常』」になったイラクの人々の生活に思いをはせています。
イラク社会の置かれた過酷な現状の本質を直観的に把握できる、実用的寓話
だが本作には、本作をイラク社会がドツボにはまっている世知辛い理不尽をエンターテイメントに翻訳した憂鬱な寓話で終わらせず、フランケンシュタイン現象とも呼ぶべき世情の際限なき怪物化の悪循環を断ち切る、あるいは円環の閉鎖から脱出する道を提示していると思われる描写もあり、作者がイラクの未来についてまるっきり悲観しているだけではないような、前途有望な明るい印象も垣間見える。
id:hyakusyou100job さんは今作における「入れ子構造」について指摘し、その上で、痛切な現実の寓話としての『バグダードのフランケンシュタイン』とそこから垣間見える明るい未来への展望について考察します。
世界的大ヒットをとばすSF長編三部作の第二部『三体Ⅱ 黒暗森林』が日本上陸
▼『三体Ⅱ 黒暗森林』ってどんな本?
世界で2000万部以上を売り上げ、日本でもシリーズ累計30万部を突破している弩級(どきゅう)の中国SF『三体』。シリーズの第二部となる『三体Ⅱ 黒暗森林』が2020年6月に刊行されました。第一部の勢いはそのままに、宇宙規模の壮大な知能バトルが繰り広げられた今作。読み始めると止まらなくなるので寝る前に読むのは控えた方がいいかもしれません。

- 作者:劉 慈欣
- 発売日: 2020/06/18
- メディア: Kindle版

- 作者:劉 慈欣
- 発売日: 2020/06/18
- メディア: Kindle版
うーむ、面白い
なるほど、今作も面白かった。前作に比べると中国色が薄れて、王道SF感が強まった印象。
2018年からさまざまな本の書評をブログに書き残しているというchuck(id:chuck0523)さん。『三体Ⅱ 黒暗森林』の評価は満点の星5だったそうで、今作の良さについて、読みながら書いたという感想をブログにしています。
まさに王道のハードSF。そして風呂敷広げまくりの大サービス
タイトル「黒暗森林」はいまのコロナの今の状況を予言してるようでもある。
笑蔵::エムゾー (id:mzo)さんは登場人物の中国語表記に心が折れそうになりながらも、今作をじっくりと読み切ったそう。そして、『三体Ⅱ 黒暗森林』が提示した「最終兵器」について思いをめぐらせています。
後続の作品を追うようになるくらいに、好きな作品になった
それでも世界は一貫性を持って確実に一年進んでいて、小説の続編は翻訳されるし映画監督は新作を撮るし、私はそれを読み観る。
知人のすすめで『三体』と『インターステラー』にハマったという はせ
(id:hssss25)さん。年末に『三体Ⅱ 黒暗森林』を読んだことでその人について思い出し、コロナ禍の中、変化した自身の人間関係や環境について書き残しています。
【番外編】ブログでもっとSFを楽しもう
はてなブログではさまざまな方法のSFの楽しみ方が提案された記事がたくさんあります。そこで、「浸かろうSF沼!」の番外編としてピックアップした記事・ブログをご紹介します。
SFの哲学と、SFスタディーズと、SF実践のファーストコンタクト
SFという実践を研究するとき、わたしはいろいろなことを考えています。ひとつはSF読者として。読んだSFのおもしろさに打ちのめされている瞬間。ひとつに研究者として。SFのおもしろさを研究の文脈で解剖してみたいと思うとき。さいごにSF批評家として、SFの価値を分析し、どうにか他人に伝えたいと思うとき。
分析美学者のナンバユウキ(id:lichtung)さんは2020年に「哲学研究者若手フォーラム」で発表したという「SFの驚異の技法––––サイエンス・フィクション小説における認識的価値いかにしてもたらされうるのか」の資料と概要をブログに公開しています。私たちがSFから何をどう読みとるのか、より深く楽しめるきっかけになりそうです。
SF系イベントをまとめたメールマガジンをブログに掲載!「SF系イベントを楽しむ会」
「SF系イベントを楽しむ会(eSFe)」はさまざまなSFイベントをブログやメールマガジンで発信しているそう。このブログではeSFe世話人の七里寿子(id:shichiri)さんが発信するメールマガジンが投稿されています。直近で開催されるSFイベントがすぐに確認できて非常に便利です。
好きな作品について、ブログで熱く語ってみませんか?
意表を突かれるような作品に出会うとついつい熱く語りたくなってしまうもの。
その情熱をブログにぶつけてみませんか?
はてなブログでは2020年10月より記事に「タグ」をつけられるようになりました! ブログを書く際にはぜひ、タグも活用してみてくださいね!
前編はこちら!