企業の技術ブログがIT技術の共有において存在感を増している件について

週刊はてなブログを運営する「週刊はてなブログ編集部」と、クライアントのオウンドメディア記事を制作する「はてな編集部」が合同でブログを紹介する連載企画「編集部が気になるブログ」。今回は長年企業向けのコンテンツ制作に関わってきた、はてな編集部の毛利が企業の技術ブログを紹介します。

こんにちは。はてな編集部の毛利id:mohri / @mohriです。はてな編集部というとまるで「はてな」を編集するかのようですが、はてなに存在する編集部というくらいに考えてください。企業向けコンテンツマーケティング事業における記事制作が主な業務です。

はてなで仕事をする前から私は編集者やフリーライターとしてIT系の書籍やWebの記事を手掛けており、現在もいわゆるテック系の媒体を主に担当しています。そんな中で、最近とくに感じるのは、ITエンジニアリングの情報共有において企業による技術ブログの存在感が増してきたのではないかということです。

存在感を増してきたIT企業の技術ブログ

はてなブログでは、IT系の個人ブログがたくさん開設されています。毎年末のアドベントカレンダーでは、参加ブログがほぼ「はてな」というIT技術系のカレンダーもあるようです。前身の「はてなダイアリー」はシンプルで書きやすいことが人気でしたし、ブログになってもMarkdownをサポートするなど、IT技術系のエントリーの書きやすさは引き継がれているのかなと思います。

こういった個人開設の技術ブログだけでなく、IT企業の技術セクションやエンジニア有志が運営する「技術ブログ」が、近年どんどん増えています。企業の技術ブログに関しては、2014年にこの週刊はてなブログで紹介記事を掲載したことがあります。

はてなブログで開設されている12+αの企業の技術ブログをご紹介します

このときは10数の技術ブログを紹介するにとどまりましたが、それから8年近く経った現在では、少なくともその数十倍の企業がはてなでブログを運営しているようです。例えば以下は、この3月前半の人気エントリーから主だった記事タイトルを拾ったものです。

読みやすさからブログ名を除いていますが、よく知られたITCの大企業から特定の領域に強みを発揮するベンチャーまで規模も業態も多種多様な企業が並んでおり、さまざまな領域の記事が書かれ、また読まれていることが分かります。

個人では発信しきれない話題を企業ブログで

企業が技術ブログを開設するモチベーションはどこにあるのでしょう? まずはエンジニア採用のため、という側面はあるでしょう。事業にフィットしたITエンジニアを採用することは難しくなっていると言われますが、何はともあれエンジニア組織が存在することをアピールしないことには何も始まりません。

エンジニアが組織としてどんな課題に取り組んでいるのか? どこで挫折したのか? 問題点をどこに見出したのか? それをどのように解決したのか? あるいは解決する道筋を立てることができたのか? それとも失敗したことによる学びがあったのか?

企業の技術ブログは、そこに生きて真剣に技術に向き合っているエンジニアがいるという証しそのものなのかもしれません。

そもそもITの領域では、以前から勉強会やセミナーといった形で技術情報の共有が盛んでした。Web業界においては、利用されるOSS(オープンソースソフトウェア)やプログラミング言語ごとの大規模セミナーが2000年代にいくつも立ち上がり、コミュニティを中心としたエンジニア個人の交流が企業の枠を超えて広がり、参加者による個人ブログがそこで重要な役割を果たしました。

2010年代になると、勉強会とブログのパワーを知ったエンジニアも技術をリードする立場となり、チームとしての取り組みも増えたでしょう。多くのサービスで技術的な負債も蓄積して、大規模なリファクタリングやアーキテクチャの変更が必要になったり、新しい開発手法に取り組んだり、会社組織として扱う技術情報が増えたこともありそうです。

加えて企業の技術ブログは、その企業ならではの存在感を示すためにも役立ちます。例えばこの1月には、次の記事が人気エントリーに入っていました。

blog.flatt.tech

サイバーセキュリティ関連サービスを提供する株式会社Flatt Securityの公式ブログで、ログイン機能の仕様パターンとセキュリティ観点が詳細かつ網羅的にまとめられています。

blog.kenall.jp

一方のこちらは、システム構築などを手掛けるOpen Collector, Inc.が運営する高品質な郵便番号・住所検索API「ケンオール」の公式ブログで、住所と郵便番号に特化した専門知識を遺憾なく発揮したノウハウ記事になっています。

どちらの記事も、特定の限定された領域に立脚した記事でありながら、ユーザー向けサービスを提供する際に必要なログインやフォームという一般的なユーザーインターフェースの話題として提供されているため、必要だと感じたエンジニアも多かったのでしょう。

自社に蓄積された専門的な技術を一般的な切り口で提供することで、記事の深さと広さがともに実現されて広く読まれたのだと思います。

普通の技術ブログをはてなブログ「devプラン」で

企業の技術ブログにふさわしい記事については、各社の担当者が頭を悩まし、試行錯誤しているところではないでしょうか。できれば大成功した取り組みや、業務で得られた最先端の知見を次々と紹介する特別なブログにしたいと考えるのが人情です。

しかし現実にはなかなか難しい。泥臭い解決手法しか取れなかったり、挑戦するも失敗してやり直したりといったこともあるでしょう。とはいえ、そういったキラキラしない格好悪い記事であっても、納得感をもって読まれています。現状を受け止めて次につなげようとするエンジニアがいること自体が、共感につながっているのでしょう。

この記事の前段で、はてなで技術ブログが8年間で数十倍になっていると書きましたが、そういうたくさんの技術ブログを見る中で、大上段にかまえない普通の技術ブログにも大きな存在価値があるのだなと感じるのです。また、個人ブログを開設していないエンジニアの情報発信の受け皿としての役割も果たしているようです。

はてなブログで運営されている企業公式の技術ブログ - 大チェッカー

このアンテナは個人的に観測できた企業ブログを集めたもので、ここに300以上のブログがあるので十数の数十倍と書いたのですが、まだ見つけられていないブログもあるかと思います。このアンテナに掲載されていない技術ブログを運営している企業の方は、コメントなどで教えていただけると助かります。

また逆に、ひょっとすると更新がないブログですでに消えていたり、知らぬ間に別のプラットフォームに移転しているところもあるかもしれません。そういう方もこっそりと教えていただければ対応いたします。

ちなみに、はてなでも技術ブログを開設しており、はてな編集部も記事制作に協力しています。

developer.hatenastaff.com

なお、現在では技術ブログであるかどうかを問わず、企業によるはてなブログ利用に際しては法人向けの利用プランをご利用いただく必要があります。詳細はヘルプページのガイドラインをご参照ください。

はてなブログ法人利用ガイドライン - はてなブログ ヘルプ

ここに掲載された「はてなブログ for DevBlog」は、その名の通り企業が技術ブログを開設するときに利用できるプランです。法人利用ガイドライン以前からの経緯により、現在も個人向け「はてなブログPro」で技術ブログを運用されている企業もあるかと思いますが、この機会に「for DevBlog」プランへの移行をお願いします。

はてなブログ for DevBlog プランへの移行をお願いします – はてなヘルプ

「はてなブログ for DevBlog」は、はてなブログProと同じ金額で、企業向け「はてなブログ Business」同等のサービス内容です。はてなブログ for DevBlogで、大上段にかまえない普通の技術ブログを。どうぞご利用ください。

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by モーリ
Profile

毛利勝久

はてなスタッフ。IT系の書籍編集者やフリーライターを経て2012年から現職。かつて制作した書籍に『MySQL徹底入門』『へんな会社のつくり方』など。現在はテック系企業のオウンドメディアや記事広告の制作を主に手掛ける。個人ブログは「in between days」。