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書評家、冬木糸一さんが語る「泥臭く」ブログを書き続けたい人のためのブログ指南

はてなブログのユーザーに、自身とブログについて寄稿していただく【「ブログを書く」ってどんなこと?】シリーズ。今回の執筆者は2008年からブログに「書籍紹介」を投稿する書評家の冬木糸一(id:huyukiitoichi@huyukiitoichi)さんです。
ブログ開設から10年以上経った今なお、2〜3日に一度はブログを更新し続けている冬木さん。紹介する書籍はSFを中心にベストセラーから注目の新刊までさまざまですが、どの書籍も数千字にわたり、関連書籍とひも付けながらじっくりと紹介しています。そんな冬木さんが語る「継続して質が高い記事を高頻度で投稿するコツ」とは?

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10年以上「書籍紹介」ブログを、量と質を維持して書くコツは何かあるのでしょうか、というお題をもらい、書くことになった。量と質を維持しているかは異論もあるだろうけれど、僕は少なくとも「基本読書」というブログを書き続けている。開設は2007年のこと(はてなに移る一年前に、一度楽天ブログで同名のブログを書いている)なので、10年以上書籍紹介ブログを続けているのは事実である。

3〜4年間、ブログのPVは1日12ぐらい。それでも続けられたのは、ただ、楽しかったから

続けられた理由はあるのだろうか? 実体験にてらしていえば、一番大きかったのは、それがただ楽しかったからだ。僕はゲームが好きで毎日何かしらのゲームを起動して遊んでいるが、大抵のゲームよりもブログを書いている時の方が楽しい。文章を書いていることが楽しいのか、タイピング自体に快感作用があるのかわからないが、とにかく文章を叩き出している時は幸福で、楽しくて、時には書きながらゲラゲラ笑いだしてしまうくぐらいである。思えば小学生の頃から読書感想文を書くのが大好きで、人の宿題を奪ってまで書いていた。とにかく、頭の中に文章が溢れている。

なので、僕からすれば文章を叩き出し終わったところで、その分の稼働の元は十分とれている。そのあと書いた文章が広く読まれたり、褒められたりすると、それはもちろん嬉しいけれど、副産物にすぎない。もし、僕が人から褒めてもらうこと、あるいは広告収入を目当てにブログを書いていたら、ブログなどとっくにやめていただろう。最初の3〜4年ぐらい、僕のブログのPVは1日12ぐらいで、しかもその数字は自分が訪問することでも増えていたから、客観的に見て自分のブログの読者は6人ぐらいだな、と考えていた。もしいろんな人に読んでもらいたい、金がいっぱい欲しい、という気持ちでブログをやっていたら、その先はなかったはずである。

承認や収入というのは、何かを続ける時のエンジンとしては強烈なパワーを持っているが、逆にその供給が途絶えるか、そもそも存在しないとすぐに動けなくなってしまう。最初からおもしろい内容を出力できる、「持っている人」ならそれでもいいのかもしれない。でも、承認も収入も、それらは結局他人から与えられるもので、自分には制御不可能であり、特に活動初期におけるエネルギー源として不安定だ。

だから、自分の経験から一般化可能なコツを抜き出すとするのならば、他者に依存した動機ではなく、できるかぎり他者に依存しない動機でやったほうが続きやすい、となるだろうか。僕の場合でいえば、「文章を書いているのが楽しい」という動機だ。これだって、いつかは楽しいと思えない時がきたら終わりなのだけれども。

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仕事場の様子。PCの横にはブログで紹介予定の本が積まれている

率直な気持ちで書かれた「すげえ」には価値がある

「楽しく書く」うえで重要なのは、考え込まず、素直に自分の気持ちを文章にすることだ。文章には「素晴らしいこと」を書くものだ、という思い込みがある。僕も、いまだに油断するとすぐに、自分の実感から離れた、何か賢そうなことをいってそうな文章を書こうとしてしまう。が、そのたびに「馬鹿野郎、そんな高尚な文章が書ける人間じゃねえだろうが」と自分に悪態をつきながら全部消して、より自分らしい形に書き直している。読んでいる側も、書き手が硬さを感じていたり、実感から離れたカッコつけた文章を書こうとしたりしている場合は、すぐにわかるものだ。

楽しく書くコツの一つは、結果として出てきた文章がバカみたいなものだったとしても、そのまま出してしまうことである。たとえば、何が何だかぜんぜんわからんがとにかくすげえ、と思ったのであれば、何が何だかわからんがすげえ! と書けばいい。実際、僕は森博嗣の『赤目姫の潮解』(講談社文庫)の文庫解説をその書き出しで始めた。そんなことをやっているので、僕はよく自分の文章を読みながら「こいつおもしろいとかすげえしかいわねえじゃん笑」と思うのだけれども、率直な気持ちで書かれた「すげえ」には価値がある。おもしろさなんて本来言語化が難しいものなのだから、それを無理やり理由づけるよりも、率直な気持ちを書けばいい。

「なんかここを読んでいる時ぶわわわわ〜〜〜! みたいな感じですごかった!!」とかなんでもいいのだ。できるだけ悩まずにただ思いつくままに文章を書くことで、時に自分自身で笑ってしまうような表現が出てきたり、比喩が出てきたりする。そして、それがおもしろいし、変に歪んでないからこそ、人にとっても価値のある感想になる。

変化するからこそ、文章を書くのが楽しくなる

楽しみながら書き続けることのコツがもう一つある。それは、自分の変化を望み続けることだ。たとえば、同じような本、内容の薄い本ばかり読んでいたら、知識は増えないし、同じ出力しか出てこない。似た自己啓発書ばかり読んでいれば、読書冊数は稼げるだろう。しかし、そこに読み終える前と読み終えた後の変化はない。

僕はノンフィクションもたくさん読むが、特にサイエンスノンフィクションが好きだ。そうすると、最初は宇宙についてのノンフィクションでも、入門書的な内容で十分楽しめていたのが、何冊も読んだ後ではあまり楽しめないし、自分の中の変化も望めなくなってくる。変化をするためには、同じ宇宙についてのノンフィクションを読むにしてもより幅広く、より難解な方へ行かざるを得ない。結果的に、僕が読む本は分厚くてとっつきづらいものばかりになっていってしまう。それはその方が自分にとっておもしろいからであり、新しい情報と自分自身の変化を求めてそうなっているのだ。

目先の、短期的な「書き続けること」「たくさん書くこと」を目標にしたら、こうしたアプローチにはならないと思う。自分が知っていることばかり書いてある本は、知っている箇所は読み飛ばせるから、すぐに読み終わる。そうやって、薄い本、読み飛ばせる本ばかりを選んで読めば、たくさん読んで、書けるようにみえる。

でも、そうやって読んで書いても、自分の中には何の変化も起こらず、同じ入力に対して同じ出力が出るだけだ。それでは、長期的には自分が自分に飽きてしまうだろう。自分に飽きてしまったら、書き続けることは難しい。文章を書く楽しさの本質の一つが、自己の新しい側面を発見することにあるからだと思う。

書き続けるコツの一つは書き続けねば耐えられないほどに読み続けること

もう一つ、読むことと書籍紹介に絞って書くと、僕が書き続けられた理由はいわずもがなだが、読み続けたからだ。僕がブログを書き始めたのは大学生の夏休みで、暇で暇でしょうがなく、一日何冊も浴びるように本を読み続けていた時のことだった。

この時は、先に書いたような、狭い読書はしていなかった。新書の棚を端から端まで選り好みせずに読んでいく、といった無茶苦茶な読み方をしていた。それは暇で、本を買いまくる金もなく、図書館にはいくらでも本があったからだが、そんな状態からいざ書き始めてみたら、とめどなく文章が出てくる。書けば書くほどもっと読みたくなって、読書数も増えていった。当時、ブログを書き始める前は1日2冊も3冊も本を読んでいて、頭の中に物語と情報がパンパンに詰まっていた。情報を溜め込みすぎて頭がおかしくなりそうな状態だったのだろう、と書き始めてからはじめてわかった。

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本棚にはブログで紹介した本が並ぶ

とてつもなくおもしろい本に出会った時、僕はその本についての考えがあーでもないこーでもないと頭の中で思考が回り続けて夜眠れなくなってしまうのだが、ブログに本の紹介を書き始めたことで、思考を外に出すことができるようになり、おもしろい本に出会っても夜ちゃんと眠れるようになった。ゴミ箱にゴミを投げ入れ続ければ当然のように溢れてくるようなもので、アホみたいに本を読めば(本以外の、映画でもなんでも情報をインプットすれば)自然と人は文章を書き出すのではないかと僕は思っている。

いまだに僕は夜、布団に入ってからいろいろな考えが頭に思い浮かんできて眠れなくなることが多くて、そのたびに飛び起きてバーーーーッと文章を書いてしまう。書き続けることにコツがあるとするならば、それは書き続けねば耐えられないほどに読み続けることだ、となるだろう。

おわりに

じゃあどうしたら読み続けられるのか、質を継続的にあげていく方法や、続けるにあたっては精神的な態度やスタイルも重要で……といろいろと派生する話はあるけれども、いったん本論としてはおしまいとしたい。

これはあくまでも僕の話で、人によってやり方は違うはずだ。金銭をモチベーションにして見事に稼ぎ続けている人もいるだろうし、最初から人を惹きつける文章や内容を出力できてポンポンと前にすすめる人もいると思う。

しかし僕はそういうタイプではなかったので、泥臭くやるしかなかった。というより、泥臭くやるのが楽しかった。10年以上書いているが、僕はいまだにブログを書き始めた第1日目のようにブログを書くのが楽しい。泥臭くやりたい人には、参考になる部分もあるだろう。

著者:冬木糸一id:huyukiitoichi

冬木糸一

1989年生まれ。雑誌やwebで書評を書くことが多い書評家。ブログは基本読書(https://huyukiitoichi.hatenadiary.jp/)。Twitterはhttps://twitter.com/huyukiitoichi
ブログ:基本読書
Twitter:@huyukiitoichi

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